そして物語は動き出す。

1時間くらいだろうか。

景色をただ眺めているだけでは、何も改善されないという答えにたどり着き、とりあえず街を歩き出していた。


(ちょっと喉渇いてきたなぁ。)


水分補給はしっかりしなければと思い、近くにあったコンビニに立ち寄った。


(何にしよう?なるべく量が多い方が良いよな。)


現状を考え節約するに越した事はないと、真剣に考えながら目の前に並ぶ飲み物とにらめっこをしていたその時!


「あれ、もしかして考える人?難しそうな顔して何してんの?…まさか、字が読めないとか?」


聞き覚えのある声がしたので、すぐに後ろへ振り返った。


「字くらい読めるわ!ってかよう会うなぁ、仕事終わったん?」


「そだよ、私の家この辺だから買い物して帰ろうと思ったら、考える人が居てビックリしたよ!あっ…もしかして、ストーカーなの?」


「ちょ、ちょっとまって!ストーカーとかほんまありえへんし!それに、考える人って呼ばれると、つい体が反応しそうになるから早急にやめてくれへん?」


「あはは、ゴメンゴメン。でも、やっぱり楽しい人だね!で、何してたの?」


「いや、なるべく量が多くて美味しそうなもんを選んでたん。」


「うふふ。やっぱり、関西弁のイントネーションってなんでも楽しく聞こえちゃうからズルいよね!」


「な、なんのこっちゃ。普通に喋ってるだけやのにズルイとか…ひどい言われようやなぁ」


「いい意味でのズルイだから、褒めてるつもりなんだけど。で、いつまで新潟に居るの?」


(いつまで…?予定とか何も無いからなぁ。)


「んー帰るのあてが無いから、ずっと居てるんちゃうかなぁ?」


「え?…ん?どういう事?」


(自分でもあまりどういう状況なのか分かってないから、なんて言ったらいいのやら…)


「えっと、大阪に帰るにもお金が無いってのと、こっちに知り合いも居てないから行く所も予定も無い的な?」



「えっと…何してんの?」


さっきまでにこやかだった彼女の顔が、段々真剣な顔になり今は少し怒っている様にも見えた。


「いや、ほんま何してるんすかねぇ。俺的には、もうちょっと上手くやれると思ってたんやけど、まさかメシもまともに食べれんくなるとは…考えが甘かったんすね。」


「え?何言ってんの?ってか意味わかんないんだけど。」


(俺も意味わかってないねんけど、ってかめっちゃキレてるやん)


「いや、まぁ。社会勉強…かな?」


彼女は大きくため息をついたのち、眉間にしわを寄せこちらを睨んでこう言い放った。


「はぁ。もういいわ!とりあえずこっちに来て!」


そう言うと彼女は俺の右腕を掴み、その細い体からは想像もつかない様な力で店の外へと引っ張り出された。


「え?あ…あの。何処に連れて行かれるんすか?」


「うるさい!黙って着いてきて!」


(うわ、怖っ!ってかこれどういう状況!?)


なにがなんだか訳がわからない状況で、彼女に引っ張られるがままコンビニを後にするのであった。

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