行き着いた先。
休憩を終えてからの第2ラウンドは、予想以上に厳しい…というか話しかける人すら居ないという非常事態だった。
(少子化?いや、関係無いか。平日の昼間にこんな事してる方が頭おかしいんやな。)
何もする事無く、ただ立っているだけという状況は気がおかしくなりそうだったので、ロータリーのベンチにずっと座っている年配の方に話しかけてみる事にした。
「こんにちは!このへんで、ここより人が集まっている所ってありますか?」
「はい?」
「あ、この辺で人が集まってる所って何処ですか?」
「あぁ、はいはい。儂らの若い頃はね、この辺は何もなかったけどねぇ。最近は便利になったから…」
(あ、やってもうた。あかんやつや…)
話しかけた側の立場からすると、聞くしかない状況で、よくわからない昔話を聞かされる事になってしまった。
「ところで関西の方の人かい?この辺じゃ、その喋り方だと怪しまれるねぇ。この前もね、うちに知らない人から電話が掛かってきてね…」
(…お、終わりが見えねぇ。)
このままでは、何も得る事なく1日が終わってしまうのでは?という危機感から、電池節約の為に電源を切っているスマホを取り出した。
「あ、おばあちゃんゴメンっ!電話掛かってきたし行くわ!」
「はいはい…あっこれを持っていきなさい。気をつけてね」
おばあちゃんはそう言うと、カバンの中からバナナを取り出し、俺に渡してきた。
「ん?えっ?あ、ありがとう…」
(…何故バナナ?)
素朴な疑問がつい口から出てしまいそうになったが、喋りだしたら止まらない現象が再発するだけなので、黙って受け取りこの場を立ち去った。
(これ大丈夫?お腹痛ならへんかなぁ?ってかこのままやと絶対、《めっちゃバナナが好きな人!》みたいに見えるよなぁ…食べてしまうか。)
おばあちゃんとの話の中で唯一やくにたちそうな情報は《繁華街らしき場所がある》だったので、貰ったバナナを食べながら移動していた。
そして、到着した場所はというと。
(しょ、昭和!ここだけ昭和やん!)
人通りは駅前よりさらに少なく感じた。だが、それよりも目の前にある年季の入った建物だ。
営業中の札はかかっているがドアは錆び、ここ何年もドアを開けられていない様なお店が立ち並ぶ光景は、とてもじゃないが平成の時代だとは思えなかった。
(おばあちゃん…これ俺の求めてた場所じゃないわ。)
何も上手くいかないという事とが続いたのと、少し寝不足だったというのも追い打ちとなり、何も考える事が出来ず、そのままその場所へ座り込んでしまった。
(あぁなんか疲れた…。)
自身の不甲斐なさに絶望し、これからどうしたら良いのかも分からない現実から、不安な気持ちが果てしなく広がり、今にも倒れてしまいそうな精神状態だった。
(ほんまあかん。しばらく動きたくない…布団でゆっくり寝たいなぁ)
そんな事を思いながら通り過ぎていく車や人を眺め続けていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます