No.2 嫌な奴
ヒールが濡れるのを気にしながら
歩くこと15分。
「はぁー。やっと着いた。」
ようやく駅へとたどり着いた。
「えーと…。難波駅はこっちだね。
やばっ後2分で電車来ちゃう!!」
濡れたヒールで滑りそうになりながらも
走ってホームへと向かった。
「間に合ったーー!!」
到着と同時に電車がたどり着いた。
初めて見る朝の満員電車に
私は驚いた。
(なにこれ。。。乗れないじゃんか。)
電車の扉が開いた瞬間
人の波に飲み込まれそうになったのを
必死に掻き分けてなんとか電車へと乗り込んだ。
(やっぱり自転車にすればよかったな。)
人に押され揺られること10分。
ようやく難波駅に辿り着いた。
しかし逆の扉に居た私は
波に乗り遅れて逆流に飲み込まれていた。
「すいません!!私降ります!すいません!!」
叫びも虚しく扉が閉まりかけた瞬間
誰かに腕を引っ張られた。
(えっ…な、何が起こってるの?)
一瞬のうちに私は電車の外へと出ていた。
ふと振り向くと扉の閉まった電車が
今にも出発しそうであった。
それと同時に私は腕に違和感を感じた。
(誰か私の腕を握ってる?)
ふと我に返り前を向いた。
「あんなので電車から降りれると思った訳?
誰もあんな小さい声聞こえてないよ?」
(誰この人?しかもいきなりなによ!失礼な!)
私は掴まれた腕を振り払った。
「いきなりなんなんですか!
小さい声聞こえてないよとか言いながら
あなたには聞こえてたんでしょ!!
それにあんなに沢山の人が乗った
電車初めてで戸惑っただけだから!!」
「まぁ降りれてよかったね。
それじゃ 俺はここで。」
「待って!!」
次は私が彼の腕を掴んで引っ張った。
「…ありがとう。」
「初めからそぉ素直に言えば可愛いのに。」
掴んだ腕とは逆の腕が私の頭へと向かって
伸びてきたと思ったら
私の髪をクシャっとして
一瞬ニコッとして去っていった。
(なんなのよ!!人のことからかって!!
やっぱり嫌な奴だし!!)
これが私と彼との出会いであった。
ーー次回へ続く
三両目の貴方 IRIS(アイリス) @naacheru
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