Revenger:2/『アーミテレイト』


 クロノが傘を閉じて見上げると、灰色の雲の合間から青い空が見え始めていた。


 ルグドリア州の誇る名門校、ルグドリア学園。そのヴィクトリアン・ゴシック調の校舎の来客用入口に、白シャツにジーンズといったラフな格好で現れたクロノは、濃紺の傘を畳んで、傘立てに差した。次いで、フリル付きの黒ワンピースを着ているシーナが、その横に添えるようにして、レース模様の黒い雨傘を立てかける。


「…………」

「……何」


 クロノははっきりとわかるようにため息をつきながら肩をすくめて、


「なんでついてくるんだ」

「なんでって……」


 するとシーナは顔を伏せて黙りこくった。

 その意外な反応に、クロノが眉をひそめながらその顔を覗き込もうとすると、シーナは一瞬たじろいだように半歩下がり、しかし反射的にクロノの胸を小さな両手で突き飛ばした。


「!」


 瞬間、クロノを襲う強烈な衝撃。シーナ・ミルズのアニムス、触れたものを、〈クルシフィクター〉の顕現である。


「――――」


 しかし、クロノは。空気を叩くような衝撃が周囲に伝わり、塵がわずかに舞い上がったが、シーナの両手はクロノの胸に触れたまま、クロノは

 なぜなら、クロノも同時に自身のアニムスを発動していたからだ。その力により、〈クルシフィクター〉による攻撃はし、クロノはその場に留まった。

 これこそが、クロノ・リュウザキが誇る、絶大なるアニムス――――〈アーミテレイト〉の力である。


 シーナはそっと手を下ろしながら、


「……本っ当、嫌い」


 と悪づいた。


 クロノは、また一つため息をついて、


「とにかく、今回はそっちホーブソンとは関係ない、俺の仕事なんだから、邪魔はしないでほしいんだけど」

「邪魔? あたしがいつ邪魔をしたっていうの」

「いつって……」


 それは今だよ――そう言いかけたところで、初老の男性が人のよさそうな笑顔を浮かべて走り寄ってきた。


「ごめんなさい、お待たせしてしまって。ええと――」と、男性は手元のメモを、ピントを合わせるように前後させて、「ああ、クロノ・リュウザキさん。警察の方に照会をさせていただきました。ご無礼をお許し下さい」

「構いませんよ」


 クロノもニコリと笑顔で返す。その完璧なに、シーナはゲエと不快を露わにした。


 クロノは、目の前の事務員らしき男性に「調査に来た」と述べ、州警察の顔なじみの警部の名を告げたのだ。

 そのため、この男性は警部に電話で確認を取ったのだろうが、当然、警部はクロノがルグドリア学園に調査に来ていることを。なぜなら、知らせていないから。それでもクロノが手厚く迎えられているということは、警部が電話を受けた時点で状況を即座に理解して、話を合わせたということに他ならない。警部の困り顔を想像して、クロノは内心ほくそ笑んだ。


 男性はクロノを先導しようとして、その傍らに佇む、派手な出で立ちの――と彼の目には映った――少女をちらりと一瞥して、


「そちらは……?」


 クロノも、その少女――シーナをちらと見て、明朗に答えた。


「ああ、これは関係ありません。ただの助手みたいなものです。ここに待たせておきますよ」

「そうですか……? それでは」


 訝しみつつも、男性はクロノを廊下へ案内して行った。


 シーナはむすっとした面持ちで、立ち去る二人の背中に”あっかんべえ”を投げかけた。



     *



 喫茶『シーモア』のテーブル席で、クロノと、依頼人の女性が向かい合っていた。女性は落ち着かない様子で、膝に握りこぶしを置いて俯いている。

 アマンダはカップを拭いている。カウンターではシーナが頬杖をつきながら、聞き耳を立てているようだった。


 女性の名前はミーシャ・クローバー。ルグドリア州ルグドリア市内の大学で電子工学を専攻する傍ら、高校生に家庭教師のアルバイトをしていると言う。


 ミーシャは、上目遣いでちらとクロノを見ながら、


「ええと、本当に?」


 彼女は、”黒の調停師ブラック・メディエーショナー”として現れた目の前のクロノが、想像よりも遥かに若かったことを疑っているのだ。

 ホネストからブローカーの仲介でやってくる依頼人の多くは、まずはこうしてクロノの年齢に不安感を抱く。なので、クロノの一番の仕事はいつも、依頼人の不安を取り除くことになってしまうのだ。

 もちろん、クロノのアニムス――〈アーミテレイト〉の力を使って、依頼人の不安感をさせることも可能だが、アニムスという現象そのものを毛嫌いしているクロノはそのようなことに自身のアニムスを使わない。まして、〈アーミテレイト〉の本質は、奪い、喪わせること。その能力を利己のために人の感情に対して行使するということは、両親を殺し、自分の全てを奪い、喪わせた、憎き犯人と同等か、それ以上に卑劣極まりないことなのだった。


 なのでクロノは、アニムスは使わず、依頼人の一挙手一投足に気を配る。不安感を取り払い、円滑に事情を喋らせるために。


 ミーシャは、視線を机の上にさまよわせながら、三つ編みの先のユニコーンの髪留めを指先で弄んでいる。その右手薬指には、シックな指輪がされていた。

 クロノの視線に気づいたミーシャが、その手をさっと机の下に隠した。クロノは、何も見なかったというように、にこりとして見せ、


「ええ。俺が、その調停師です」


 と答える。

 するとミーシャは、カウンターの向こうにいる大柄の男性と、こちらに背を向けて座っている、奇抜な恰好の――とミーシャの目には映った――少女の方に視線をやって、


「あちらは……?」


 クロノもそちらをちらりと見る。


「あれはただの店のマスターと、偶然居合わせた客ですよ」

「客って、大丈夫なんですか」


 ミーシャの表情に疑いの色が強まった。再び髪留めを指先で弄び始めるのを見て、クロノは内心、舌打ちをする。落ち着いた物腰で実年齢より少しばかり上に見られる自分自身は何とかなっても、小柄で幼さの残る風貌のシーナはそうはいかない。

 まだ年端もいかない子供に相談して、本当に大丈夫なのだろうか。そんな風に思って当然だ。クロノの第一の仕事のハードルが、普段より少しばかり高くなっているのを感じた。


「心配には及びませんよ、クローバーさん。あれは、あんなナリでも、のエキスパートです」

「エキスパート……」

「ええ。それに、偶然居合わせた、とは言いましたが、あれでも、仕事上のパートナーみたいなものですから。誓って、信頼できる人間です」

「そう、ですか……?」


 ミーシャは再び、シーナの方をちらと見る。シーナは、相変わらず、こちらに背を向けて頬杖をついたままだったが、なぜか両脚をぶらぶらさせ始めた。なんだかご機嫌そうな様子で、耳を澄ませば鼻歌まで聞こえてきそうである。

 やめろ! 子どもっぽい仕草をするな!

 シーナの機嫌が急に良くなった理由にクロノは、行儀の悪いお姫様に拳骨をお見舞いしてやりたい衝動をぐっと堪えて、依頼人に向き直った。


「さあ、次はあなたの番です、クローバーさん。あなたが、ブローカーの仲介で。その事実が、あなたの依頼の異常性アブノーマルさを物語っている。当然、警察に話したところで取り合ってくれるはずもないでしょう。だから、あなたはここに来た。俺のような、のところに」


 クロノの目が鋭く光る。獲物を射抜く、狼のような眼光だ。に対するクロノの執念は計り知れない。


「話してもらえますね。あなたの、何が起こったのかを」


 ミーシャは、未だ半信半疑ながらも、ついにその迫力に気圧されて小さく頷き、記憶の糸を手繰るようにしながら、つらつらと語り始めた。


「あれは……今日のような雨の降る日の事でした」


     *


 その日の夕方、ミーシャは、土砂降りの中を、傘を強く抱きしめるようにしながら、家庭教師をしている生徒の家へと向かっていた。

 生徒の名は、ナタリー・ホワイト。素直で明るくとても優しい少女で、学校では友人も多いようだ。今では、週に二度の家庭訪問の日を、ミーシャの方が楽しみにしていた。


 ナタリーの家に着いた彼女は、彼女の母親と、いつものように挨拶を交わすと、二階にあるナタリーの部屋へ。

 優しく二回ノックして、声をかける。


「ナタリー? ミーシャよ」


 ところが、中から返事がない。いつもなら元気に「どうぞ」と言ってくれるか、自分からドアを開けて招いてくれることもあったのに。全く反応がないのは初めてのことだった。

 もしかして、中にはいないのだろうか。扉に耳を近づけてみる。


 ――バサバサバサバサッ


 紙が風に煽られる音……?


「ナタリー? いるの?」


 ――…………


 音がなくなった。


「は、入るね」


 何か、ただならぬ予感を覚え、ミーシャはドアノブに手をかける。――と、


「――痛っ」


 その指先に鋭い痛みを感じ、咄嗟に手を引っ込めてしまった。静電気……? それにしては、かなりの強さだったけれど。


 とにかく――、とミーシャは袖で手を覆ってノブをひねった。今度は静電気は起きない。そのままドアを押し開ける。


「開けちゃ――ダメ!」

「えっ」


 その時にはもう、ドアを半分ほど開け放っていた。既に半身を室内に入れていたミーシャは、瞬間、それを見た。


 制服姿のまま、こちらに背を向けて立つ、ナタリーの姿を。そのナタリーの周囲に、赤やオレンジや黄色の閃光が、バチバチと踊り狂っている様を。

 ――バサバサバサ。机の上に開かれたノートが、窓は開いていないのに、風に煽られているようになびいていた。


 ナタリーがこちらを振り向いた。一瞬のことで表情はわからない。その手には、携帯電話が握られている。


「ナタ――――」


 呼びかけようとすると、突然の強烈な閃光にミーシャは思わず目を瞑った。まぶたに熱を感じ、目を閉じているのに視界は真っ赤になる。まるで、太陽を見ているようだ。


 数秒ほどでそれは落ち着いて、恐々と瞳を開ける。


「ナ、ナタリー……?」


 真っ暗になった部屋には廊下からの光だけが差し込んでいた。照明のスイッチを押しても明かりはつかない。スイッチは始めからオンだったのだ。蛍光灯が壊れている。


 扉を大きく開き、廊下の光を室内に入れた。

 そこにナタリーはいなかった。

 さっきまでナタリーがいた場所に、焦げたような跡と、ショートした携帯電話だけが残されていた――


     *


「ナタリーのご両親には何と?」


 顔の前で手を組みながら、クロノは訊ねた。

 ミーシャは決まり悪そうにかぶりを振った。


「何も。……部屋に行ったときにはもう、ナタリーはいなかったと伝えました。本当のことを話しても、余計な心配をさせるだけですから。信じてもらえるとも思っていません」

「賢明ですね」


 言いたいことを言い終えて、ミーシャの様子はだいぶ落ち着いたようだった。話している間中ずっと弄っていたユニコーンの髪留めも、今はもう触れていない。


「それで、あの、ナタリーは一体、どこに行ってしまったのでしょう」


 クロノは眉をしかめた。


(どこに行ってしまったのか? 、ではないのか)


 ナタリーの生存を確信する彼女の問いに些かの疑問を覚えつつも、クロノは答える。


「どこに行ったのかは、今の段階ではまだなんとも。ただ、間違いなく言えることが一つだけあります」

「それは?」

「今の話が事実なら、この事件は確実に、俺の専門分野だ、ということです」

「それじゃあ……」


 胸の前で手を合わせるミーシャに、クロノは右手を差し出した。


「この事件。――俺が終わらせると約束しましょう」

「はい! よろしくお願いします」


 ミーシャは、差し出された右手をしっかりと握った。



     *



 ルグドリア学園校舎内。

 その渡り廊下をクロノは一人で歩いていた。用務員の男性にわがままを言って途中で別れ、今は別行動を取っている。


 ナタリーがいなくなってから今日で四日目になる。当然、警察に捜索願も出しているらしいが、恐らく、見つかることはないだろう。


(彼女が、どこに行ったのか。そして、どうなってしまったのか。それらはまだわからないが、彼女の身に何が起きたのか、そのおおよその見当は付く)


 クロノは、逡巡しながら歩く。


(彼女――ナタリーは、ミーシャが訪ねるほんの数分前に、何らかの理由でアニムスを得たのだ。きっかけは恐らく――彼女の携帯電話。電話か、あるいはメールで、何か彼女の根幹を揺るがすような衝撃的な事を言われたことが原因だろう)


 考えながら歩いていると、渡り廊下の向こうから現れた生徒にぶつかりそうになった。


「きゃっ」

「おっと」


 褐色の肌と黒い髪が印象的で、エキゾチックな魅力があるが、大人しそうな少女だった。時刻が当に放課後なことを鑑みるに、部活生だろうか。少女は、大事そうに携帯電話を胸に抱いていた。


(携帯電話……。やはり、彼女ナタリーの交友関係から当たった方がいいか)


 クロノは瞬時に考え、こうべを垂れて立ち去る少女を呼び止めた。


「ねえ、生徒を探しているんだけど。知っているかな」


 少女は顔をあげて、きょとんとした様子でクロノを見た。


「生徒、ですか」

「うん。ナタリー・ホワイトっていうんだけど――」



 瞬間。

 クロノの視界を黒いものが覆った。

 先端のとがった、砲弾のような

 突如として目の前に現れたそのは、高速でクロノの鼻先まで迫っていた。


「――――!」


 驚異的な反射でそれを仰け反りかわしたクロノ。

 見ると、少女をかばうようにして、別の男生徒が立ちふさがるようにして現れていた。


「お前――何者だ」


 クロノに強烈な敵意を向けながら睨むその少年。その右手には、ごく普通の鉛筆が握られている。


(今のは……?)


 クロノを襲った黒いは、もうどこにもなかった。突如として現れ、忽然と消える。間違いなく、攻撃を受けたのだ。


 少年が叫ぶ。


「エヴァ、逃げろ!」


 その背後に隠れていた少女が、弾かれるようにしてその向こうへと走り去った。


 クロノも、それを見送る。先ほどの攻撃を仕掛けてきたのは、間違いなく目の前にいるこの少年。下手に動くわけにはいかない。なぜなら、相手は確実に――


 少年は、左手を頭上に掲げた。その手には十五センチくらいの長定規が握られている。


「質問に――答えろ!」


 少年がその手を振り下ろす。と、手に握られていた長定規が――瞬間的に巨大化した。

 廊下の横幅もあろうかという巨大な半透明の板となって、クロノを押しつぶさんと急速に迫る。


「やはり――――アニムス!」


 クロノはこれを、後方に回避。〈アーミテレイト〉を直接ぶつけてもよかったが、これだけの大きさとなると、こちらの消耗ばかり大きく、距離もあるため相手にリスクを負わせられない。それに、長定規の横幅がということは、それ以上にはもう巨大化できないということだ。後方に下がって十分回避できる攻撃である。

 とはいえ、直撃は免れたものの、強烈な風圧が後を追うようにして襲ってきた。これは〈アーミテレイト〉によって防御する。目前まで迫った長定規は元の大きさに戻り、少年の手の中に納まった。


 相変わらず、火花を散らすように敵意をむき出しにする少年に、クロノは毅然とした態度で――質問を返した。


「君こそ、ナタリー・ホワイトの何なんだ?」

「オレは――仲間だ!」


 言いながら少年は、右手をクロノに向ける。鉛筆の先端がクロノを捉えた。

 ――また巨大化による攻撃が来る。


 クロノも、同時に駆け出していた。黒いコートを取り出したクロノは、それを少年に向けて投げつける。


「!」


 突然の目くらましによってクロノを見失った少年は、咄嗟に鉛筆を巨大化させ、視界を遮ったコートごと、その向こうのクロノを貫こうとする。

 ――が、既にクロノは、少年の右手側側面の死角から回り込み、その懐に入り込もうとしていた。


「――――くそ」


 少年は背後に飛び退きながら左手の長定規をクロノに向けようとするが、


「遅い」


 まだ巨大化していないその長定規にクロノの右手が触れる。

 瞬間、その定規は、忽然と消えてなくなった。


「!?」


 困惑する少年の胸ぐらを掴み、そのまま地面に押し倒す。ついでとばかりに、少年の右手の鉛筆もさせて、少年の額を鷲掴みにする。


「お前から聞く。ナタリー・ホワイトについて、何を知っている?」

「…………っ」


 観念したように歯を食いしばる少年。


 と――少年に掴みかかっていたクロノの左手が、ぐんと引っ張られて頭上に掲げられた。

 クロノの全身を覆う、顕現化した〈アーミテレイト〉が、別の敵意による攻撃を敏感に感じ取っていた。


(これは――思念波による干渉?)


 思う間に、クロノは少年から引きはがされ、天井近くへと持ち上げられた。外部からの干渉によって操られているのだ。

 思念波の送られてくる方――そこには、逃げたはずの少女、エヴァがいた。彼女は、空中のクロノを右手で指さしている。


(指さしているものを操作するアニムス、か)


 クロノは内心、不覚を反省しながらも、すぐに思念波による拘束を解いた。〈アーミテレイト〉によって、エヴァのアニムスによる干渉を絶ったのだ。クロノにこの手の能力は通用しない。


 だが、クロノの誤算は、隠れていたエヴァからの攻撃に気付かなかったということ。エヴァからの不意の攻撃を受けるまで、状況が二対一であったことに気付けなかったことだった。


「!」


 着地しようとしていたクロノは、真下にいる少年が、を受け取っているのを目撃した。

 それは、消しゴム。

 エヴァは、クロノを少年から引き離すと同時に、もう片方の手で消しゴムを操作して、少年の手の中に飛ばしていたのだ。


 全ては、この一瞬のため。

 クロノが、アニムスによる拘束を自力で解除したことは、エヴァにとっても誤算だったのだろうが、それでも、クロノに一瞬の隙を作ることはできた。

 空中にいるクロノには、次の攻撃を回避する術がない。

 少年の手の中で、消しゴムが驚異的なスピードで巨大化した――



「――――ちッ」



 ――――ズン!

 巨大化した消しゴムが、渡り廊下の天井を叩いた。


 しかし、その攻撃はクロノを仕留めることはできなかった。

 クロノは――空中にいるにも関わらず、唐突に、後方に勢いよく吹っ飛ぶことで、消しゴムをかわしていたのだ。

 重力。慣性。その他あらゆる自然的な力学を完全に無視したそのあまりに唐突な横移動は、クロノのアニムスによるもの

 数十分前。クロノを襲った別人のアニムスによるものである。

 ――〈クルシフィクター〉。

 〈アーミテレイト〉によって喪失していたシーナ・ミルズのアニムスの力を、クロノは咄嗟に、再び顕在化させたのである。

 これによって、クロノは空中で咄嗟に回避行動を取ることができた。


(今、しなければ、やられることはなかったにせよ、かなりの精神力を持って行かれていた……)


 こればかりは、シーナに感謝すべきか。


 そう思いながら、後方に強烈に吹っ飛び、渡り廊下の入り口を抜けて校舎内まで転がったクロノが再度立ち上がった時にはもう、巨大な消しゴムも、二人の生徒もいなくなっていた……。

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