第158話 サロン

 一週間ぶりの三人娘だよ。やっぱ女子4人集まるとメッチャ楽しい。女子ばっか集まると、とーぜんファッションの話になる訳で、その後スイーツの話になる訳で、更に恋バナになる訳で。

 あたしたちはワチャワチャと喋りながらショッピングモールをウロウロしたわけよ。


「ねー花ちゃん、これ可愛いやん。ウチこーゆーの着たいんやけど、似合わへんのよー。花ちゃん絶対似合うし」

「えー? 沙紀フツーに似合ってるじゃん。萌乃も行けそうじゃない?」

「モエはピンクハウスしか着ぃひんの」

「なんでこれってややポッチャリさんに人気あるんだろ?」

「でもこないだスマートな人が着てはったよ~。あ、お店の人か」

「あたしくらい巨大化しちゃうとピンクハウス入らなくてハッピーマリリンだよ」

「えー、何それ、知らない」


 確かに萌乃はチビでポッチャリさんだからフリフリでガバッとしたのがよく似合うよ。雰囲気もフワフワしてて、そんな感じだしね。今日はリボンがたくさん付いた水色の花柄ワンピ。クマちゃんのついたトートバッグなんて持ってる。

 絶壁スレンダー長身の恵美は、白いTシャツに杢グレーのマキシ丈ジャージースカート。腰にGジャン巻きつけて、カーキのリュック背負ってる。

 沙紀はキャラクターTシャツにギンガムチェックのシャツ羽織って、ジーンズ履いてる。このキャラクターがハクション大魔王のアクビちゃんてとこが可愛い。ショルダーバッグを斜めにかけてるとこなんかも沙紀っぽい。

 服装だけ見ても、この三人がまるっきり性格バラバラなのがよくわかる。だからこそ仲良しなんだろうけど。


「なぁ、今日な、友達限定三名様ご招待チケット言うのん持ってんねんけどな。みんな時間ある?」


 いきなり恵美がリュックの中から何かのチケットを出してきたんだよ。


「え、なになに~。ケーキ食べ放題?」

「ちゃうわ、1円もかからへんから騙された思て付いて来て」

「わ~、行く行く」

「新興宗教ちゃうやろな」

「アホ、沙紀ちゃうわ」

「モエ、健康食品とか要らんし~」

「ちゃうがな。萌乃と花ちゃんはあっちで、沙紀とあたしはこっちやな~。ムフフ」

「なんやの~?」

「着いてからのお楽しみ」


 って連れていかれたところは、何とエステティックサロン! こんなとこ一生来る事は無いと思ってたよ。


「ここ、入るの?」

「そ。あたしいつもフェイシャルやってもろてんねん。このチケットで、ボディかフェイシャルどっちか選べるし、好きな方選んでや。さ、行くでー」


 っておい、どんどん入って行っちゃうよ。沙紀と萌乃とあたしは顔を見合わせながら、おずおずと後ろからついて行くわけで。

 

「タクマさん、こんにちは~」

「いらっしゃいませ~、茅野様、今日はお友達チケットですかぁ?」

「そうやねん、勧誘せんといてな、サプライズで連れて来ただけやし」

「はい、かしこまりました、中へどうぞ~」


 コウモリと会話できそうなくらい声の高い巨乳の姉ちゃんに案内されてしまって、あたしらは未知の世界へと踏み込んでしまったんだよ。

 うわー、エステサロンってこんななんだ~! 個室のカウンセリングルームがあって、奥の方に施術室があるっぽい。あっちにはロッカールームか? いかん、キョロキョロしてしまう。


「どうぞお掛け下さい。今日は皆さんボディとフェイシャルどちらをご希望ですか?」

「はい、みんな好きな方選んで~。あたしはいつも通りフェイシャルね」

「そうですね、茅野様はもうボディは弄りようがありませんから」


 あんたの巨乳、恵美の絶壁に少し分けてやんなよ……。


「花ちゃん、顔は綺麗だからボディでいいよね?」

「うん。ボディお願いします」

「モエもボディ」

「うちはフェイシャル頼むわ~」


 巨乳ではち切れそうな制服の左胸に「TAKUMA」の名札の付いたお姉ちゃんが「かしこまりました~」と100万ドルの笑顔で応える。

 そして彼女に流されるまま、我々はカポックの葉っぱが揺れるオシャレなサロンでキレイにされることになってしまったのだ。

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