第109話 アウトドア派なんです
で、ついたところはキャンプ場。もう先に到着してた6人が準備始めてくれてたんだけど、どうもガンタとヨッちゃんであーでもないこーでもないと悩んでるっぽいんだな、これが。
「お疲れさまでーす! おやっさんたち早いですね~」
「よっ、花ちゃん。すまんね、うちの二人組はバーベキューもろくにやった事無いらしいねん。製造の癖にだらしないわホンマ。はっはっは」
「僕がやりましょう」
「え? 神崎さんが? お客さんやし、その辺でのんびりしてもろーてええねんけど」
「それじゃ明後日になっても始められませんよ。僕に任せてください。こう見えてもアウトドア派なんですよ」
そーだったんかい! まあ、伊賀忍者だからアウトドアは得意だろーけど。
「岩田君、皆さんにお皿と割り箸を配ってください。あと紙コップも。もう飲み物は準備していただいて結構ですよ。茅野さん、食材出していただけますか? すぐに焼き始められますから」
「はーい」
恵美って茅野さんだったんだ……知らんかった。とか思ってる間に手際よく準備を終わらせちゃった。マジで凄いよ、伊賀忍者。
「神崎君ほんまに何やらしても手際ええなあ。俺んとこに欲しいわ」
「親父さんのところには優秀な横尾君と岩田君がいらっしゃいます。横尾君、乾杯しちゃっても構いませんよ」
「あ、はい、ほんならみんな乾杯しよ。おやっさん、乾杯お願いしまーす」
「はいはい、ほな乾杯」
「かんぱーい」
って相変わらずおやっさんの乾杯は簡単だよ。
つーかさ、この食材がすげーアバウトなんだよ。ヨッちゃんと恵美に任せるとこうなるんだ。あたしに任されても同じだけどさ。トウモロコシとかカボチャそのままなんだよ。齧るのか? 齧るんだな? 歯、立たないしっ!
「茅野さん、包丁持って来てますか?」
「うん、一応。使いますかぁ?」
「貸して貰えますか? それと横尾君、新聞紙を分けて貰えますか」
「ういーす」
恵美が包丁、ヨッちゃんが新聞紙を出して来たら、親父さんと城代主任が嬉しそうな顔をするんだよ。
「神崎君の料理ショーが始まるのかしら?」
「切るだけですから、期待なさらないでください。皆さんは肉類を先に焼いて召し上がってていただけますか。野菜が全く下拵えされていないようなので、ちょっと軽く捌きます」
「じゃ、あたしも手伝うわね」
「では僕が切りますから軽く洗って来ていただけますか?」
「了解」
ってみんなの見てる前で城代主任と神崎さんなんだかラブラブなんだよ。浅井パパが固まってんだよ。
そんな中、神崎さんが畳んだ新聞紙をまな板代わりにして、野菜の下ごしらえを始めたんだよ。
てかさ、包丁さばきが美しいよ。パプリカなんてポンと割って種をガサッと出してさ、ポイポイとザルに放り込んでいくんだよ、手際いいんだよ。カボチャなんて堅いのにとっとことっとこ切ってくんだよ。包丁の先でひょいひょいとワタ出して種も綺麗に取ってさ。トウモロコシもズッキーニもサクサクと輪切りにしてさ。トウモロコシって結構堅いよ? しかもフランクフルトなんか斜めに切り込み入れてさ、これでこそフランクフルトだよ。それをヨッちゃんとガンタがせっせと網に並べてさ。
あたしもこんな風にささっと料理してみたいな。人前で包丁なんて握れないよ。どんだけ料理してないかバレバレだもん。
神崎さんの下拵えはあっという間に終わっちゃって、彼も参加し始めたんだよ。
「こんなこともあろうかと、アルミ箔とオリーブオイルを持って来てあるんですよ」
こんなもんどーすんの? と思ってるあたしの横で、おやっさんが「流石ようわかっとるなぁ」とか言ってる。何がわかってるんだろう?
神崎さんはアルミ箔を広げて手早くタマネギとにんにくを刻むと、イカの足と一緒にササッと包み、オリーブオイルをかけて網の上に置いたんだよ。
そうかと思えば、サラダ用じゃないのか? とも思ったけど、トマトのヘタを取って、これも丸ごとホイルに包んで網の上にポイ。ジャガイモも丸ごと包んでポイ。
「アルミ箔はホイル焼きもできるしフライパン代わりにもなりますから、アウトドアでは必需品ですよ」
何のかんの言って、結局楽しげに料理を始めちゃった神崎さんを止めることができる人はもういないんだよ。だって、既に何か鼻歌が始まっちゃったんだもん。
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