第108話 no problem
「おはようございまーす」
「おはよう花ちゃん」
「Good morning 花ちゃん」
なーぜーかー、浅井さんが城代主任と一緒に居るんだよ。なんでだよ。しかもお嬢ちゃんがお見送りしてくれてんだよ。
「うっわー可愛い! 城代主任のお嬢さんですかぁ?」
「ええ。彩花、お姉ちゃんとお兄ちゃんにご挨拶は?」
「こんにちは。どーだいあやかです。よよしくおねがいします!」
あぎゃ~~~可愛い! ただでさえ小っこいのに、頭下げてる~。
「こんにちは彩花ちゃん。あたし花ちゃんだよ~。よろしくね~」
「初めまして、神崎秀一と申します。宜しくお願いします」
あんたなぁ、相手は3歳児だよ、3歳児!
「おかーたん、王子様来たよ」
「そうねぇ、王子様来たねぇ」
「あやか、かんだきたんと結婚すゆ」
「あら、じゃあお母さんは誰と結婚しようか?」
「あたいパパ」
これは浅井パパと言ったのか~? ……って浅井さん男泣きしてるし。
「なななーんと。ええ子やなぁ、彩花ちゃんは。meが浅井パパだよ~」
「あやかはかんだきたんね、あたいパパはおかーたんにあげゆ」
「……正直やねぇ、youは」
「あたいパパ、行ってやったーい」
「はーい、行って来まーす」
完全に翻弄されとるぞ浅井パパ。でも嬉しそうだぞ浅井パパ。
「かんだきたんも行ってやったーい」
「はい、行って参ります。お留守番宜しくお願いします」
「はーい。花たんも行ってやったーい」
「行ってきま~す」
流されとるぞ。みんな。
「これが噂の神崎ワゴンね」
「なんもチューンしてへんnormalのレガシィワゴンやん。どうやってガンちゃん巻いたん?」
「巻いてなんかいませんよ。普通に運転しただけですよ」
「まーたまた! ガンちゃんに抜かさせへんかった人は今まで神崎君しかおらんねんで」
「岩田君が手を抜いたんですよ」
「しっかしあれやな、神崎君、運転上手いな」
「ありがとうございます」
「でしょー? あたしも最初に乗った時、新幹線みたいな加速って思ったんですよね」
「今度はmeのクルマで二人っきりでドライブしましょうかね、冴子ちゃん」
始まった! チラッと神崎さんを盗み見ると、神崎さんも助手席のあたしを見てクスッと笑ってる。さーて、あたしらは浅井さんの漫才を聞く事にしようか。
「だーれが冴子ちゃんよ。浅井君てクルマ何乗ってんの?」
「meのクルマは赤いminiさ~」
赤のmini! いかにも浅井さん! 取って付けたよーに浅井さん! ミラーでチラ見すると、茶色いやや長めの前髪を掻き上げちゃったりしてるんだよ。
「ドライブするには狭そうね」
「冴子ちゃんと二人っきりならjust sizeっしょ。狭い空間の方がいつでもyouの唇が奪えるやん?」
なんか関西弁だとどんな台詞もお笑いになる……。
「それより浅井君、山にバーベキュー行くのになんでマリンルックなのよ?」
確かに! 鋭い、鋭いぞ、城代主任。白地にネイビーのボーダー柄の七分袖Tシャツに何故か赤いスカーフ(しかも超絶似合ってる)白いジーンズにネイビーのジャケットだよ。バーベキューにジャケットだよ! そして素足に白いデッキシューズだよ! お前は『不倫は文化だ』とか言ってる芸能人か!
「baby、お堅い事は言いっこなしやで~。meに似合えばそれでno problem」
「神崎君も珍しいわね。シャツ以外見た事無かったから新鮮だわ」
「今はmeだけを見てくれへんかなぁ」
今日の神崎さんはチャコールのTシャツにダークネイビーの細身のジーンズ。シルバーグレイのウィンドブレーカー。月曜日にあたしが借りたヤツだよ。やっぱ神崎さんの方が似合うし。てか、何着てもカッコいいし。……虎壱スタイルはわからんけど。パジャマにエプロン姿だってイケてる。
そう言えば今日は本気出すって言ってたけど、一体何に本気出すんだろう? それらしき装備もしてないみたいだし。この人って偶に訳判らんことするからな。どっかに何かを隠し持ってんのかな? まあいいか、そのうちわかる事だし……。
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