第94話 GW
「あー、おはよう花ちゃん。なーなーGWの予定立ってる?」
出社するなり中ボス恵美の攻撃を喰らった勇者花子は50のダメージ。
「え? GW? あーそういえばそんなものがあったねぇ」
「あったねぇやないやろ~。今週金曜からやん。どないすんの? 実家帰らはんの?」
「あ~……どうかな、まだ決めてない」
「あんなぁ、29日の金曜日な、バーベキュー行こかって話しとったんよ」
「バーベキュー? 誰と?」
「FB80チームで!」
「おお~、それはたのしそうやん」
「花ちゃん関西弁になってはるし~」
「で、どこまで決まってんの?」
「ん~、あたしとヨッちゃんが幹事で、城代主任と親父さんと神崎さんと花ちゃんだけ返事貰ってへんのよ。城代主任は絶対に俺が落とす! ゆーて浅井さん張り切ってはったけど、浅井さんが誘うより神崎さんが誘った方が成功率高いと思わへん?」
「あ、それ言えてる」
「せやけど、まだ神崎さんに聞いてへんから。ってゆーか、お嬢さんの都合もあるしね」
「ああ、3歳だっけ?」
「そうそう。でもお婆ちゃん近くに住んではって、イベントの時はいつもお婆ちゃんに預けて来るらしいんよ。連れて来て貰ってもええねんけど、何か事故があったら困るしね」
「じゃあ、神崎さんにはあたしから言ってみるよ」
「ほんなら花ちゃんに任すわ、よろぴく~」
ポニーテイルを揺らしながら戻って行く恵美を見送りつつ神崎さんを探すと、誰かに後ろからポンポンと肩を叩かれたんだよ。
「うわぁ、神崎さん」
「聞いてましたから」
「出たな公儀隠密」
「ところで山田さんはGWどうなさいますか? ご実家はどちらです?」
「茨城の常陸大宮……って知ってる?」
「大吟醸久慈の山。ふるさわの生クリーム大福」
「何でそんなの知ってんのよ」
「帰られますか?」
「いつもお盆と正月しか帰らないから、帰らなくていいかな~って」
「東京には戻られますか? 東京のご自宅はどちらです?」
「京王線の千歳烏山……って知ってる?」
「ケニヤンのミルクティーは僕のイチオシです」
「だからマニアックだって!」
「ですが山田さん、個人情報をぺらぺらと喋りすぎです。気を付けてください」
あんたが聞いたんだろーがっ! どこのスパイだよ!
「戻られますか? こちらで過ごされますか?」
「神崎さんは?」
「山田さんに合わせます。山田さんが東京に帰られるようでしたら僕が世田谷までまた送りますので」
「あたしがここに居るって言ったら?」
「僕も残ります。山田さん一人では心配ですし」
「じゃあここに居る」
「そんな即決でいいんですか?」
「うん、神崎さんと一緒に居る」
「……山田さん」
あ、またあの顔。どうしたの? 何か困ってんの?
「あの……あたし帰った方がいい? ここに居ると困る? 正直に言ってよ」
「正直に言っていいんですか? ここで」
「じゃあどこで言うのよ」
「では正直に言いますが、山田さんには帰っていただきたくありません。ここでGWを僕と一緒に過ごしてください」
まあ、ガソリン代もかかるし、往復すんのも大変だもんね。
「良かった。じゃあ何にも問題ないじゃん。なんで困ったような顔したの?」
「困ってなどいませんよ」
「だって、さっき神崎さんと一緒に居るって言ったら……あ、そっか、神崎さんがどっか出かけたいって事? あたしの事なら気にしないでね。一緒の家に居るってだけで、四六時中一緒に居るって意味じゃないから」
「それでも僕は構わないんですが」
「へ?」
「いえ、何でもありません。それならバーベキューは参加という事で宜しいですか?」
「うん」
「では城代主任は僕がお誘いしておきます。浅井さんにお任せした方がいいでしょうか?」
「いや、二度手間だから神崎さんから誘った方がいいと思う」
「了解しました」
なんかよくわかんないまま、GWをここ京丹波で過ごす事とバーベキューに参加する事が決定してしまった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます