第68話 二度寝

 随分早く目が覚めちゃったんだよ。まだ5時だよ。二度寝しようと思ったけど、その前に洗濯機回してから寝よう。そーすりゃ起きた時すぐに干せるし。

 そう思って階段下りてったんだよ。そしたらさ、いるんだよ伊賀忍者が。昨夜0時半頃ランニングから戻ってきてさ、そのままリビングのテーブルでヨダレ垂らしてグースカ眠ってたあたしを起こしてくれてさ、それからシャワー浴びて寝た筈なんだよ? でも、そこにいるんだよ。寝てねーのかあんた。やっぱサイボーグだよ。神崎ver.4ーNo.31415だよ。


「山田さん?」

「あ、神崎さんおはよ」

「どうなさったんですか、こんなに早く」

「神崎さんこそ」

「僕は偶々目が覚めたので、洗濯機を回してから二度寝しようかと」

「んふ。あたしもだよ」


 あたしがそう言って笑ったら、神崎さんもクスッて笑うんだよ。そんな眩しい笑顔見せつけられたら目ぇ覚めんだろーが! あたしはこれから二度寝すんのに!


「そういう事でしたら、もう僕が今、スタートさせましたから大丈夫ですよ。二度寝なさってください」

「神崎さんも二度寝するんでしょ?」

「そうですね、眠れるかな」

「目、覚めちゃったの?」

「山田さんを見たら目が覚めてしまいました」

「んふ。あたしも神崎さん見たら、目ぇ覚めちゃったよ」

「睡眠時間が少ないと美容に良くないですよ」

「神崎さんこそ、いつも少ないよ? 二度寝して来なよ。眠れないならあたしが側で子守唄歌ってあげる」

「ますます目が覚めてしまいますよ」


 失礼な。


「じゃ、添い寝してあげる」

「完全に覚醒しますよ」


 いろんな意味に取れるぞ。


「じゃ、おやすみのチュ~」

「永眠させる気ですか」

「粛清してやるから辞世の句でも詠め」

「身の危険を感じますので、部屋に戻ります」

「あーん、待ってよー!」


 神崎さん階段上がって行くから、あたしも追っかける。伊賀忍者が足音も立てずに上るのをあたしがドスドスと追うから、神崎さんビビって早足になってるし。

 階段の上まで来て、部屋のドアノブに手をかけた神崎さんが、ふとこっちを振り返った。


「おやすみのキスはして下さらないんですか?」

「へ?」

「少し期待したんですが」

「ほえ?」

「冗談です。ではまた後で」

「……」


 神崎! 丹波の山に埋めたろーか!

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