第13話 朝はガッツリ
朝。あたしは昨夜神崎さんに言われた通り、動きやすい服装で待っていた。デブだからあんまりジーンズとか履きたくないんだけど、カーテンセットしたりするわけだし、変なカッコできないもんね。仕方ないんで上もTシャツにチェックのシャツ引っかけて、髪もシュシュで一つにまとめておいた。
約束通り7時にドアをノックする音が聞こえた。何かそんな気はしてたんだけどさ、まるで時計片手に秒読みしていたかのようにきっかり7時00分00秒にノックが聞こえた時には、あたしゃ流石に笑ったよ。秒読みしてたよね、神崎さん。
「おはようございます。昨夜はよく眠れましたか?」
「あ、はい、お陰様でケーキ風呂でケーキに溺れながら食べ尽くす夢を見ました。久しぶりに幸せ過ぎる夢でした」
実際ね、昨夜あと4切れあったロールケーキ、全部あたしが食べたのよ。神崎さんてば1切れ食べて満足しちゃってんだもん。あたしはそんなんで満足できないし、食べていいって言われりゃ果てしなく食べますよ。それで幸せいっぱいで寝たんだよ。夢にまで見たよ、ロールケーキ。
「じゃ、今日はたくさん働けますね。それでは行きましょうか」
「はい。よろしくお願いします」
神崎さんは当たり前のようにあたしのスーツケースを持ってくれて、エレベータに乗り込んだ。やることなすこといちいちスマートだ。その上このルックスだからなんだか癇に障る。
「朝食どうされますか? ここでも外でも結構ですが」
「あたし、朝食食べないんですよ、太るから」
「それはいけませんね。朝食を取らない方が太るんですよ。少ない回数の食事で栄養素を体内に蓄えようとする働きが過剰に反応して、溜め込む体質になるんです。太るのが嫌でしたら朝食はしっかり取る事をお勧めしますよ」
「えっ! ホントですか! じゃあ食べます、ガッツリ!」
「ガッツリですか。じゃあ、ここで朝食を取ってからチェックアウトしましょう。バイキングですからガッツリ食べられますよ」
「いいですねー!」
エレベータが1階に到着して、神崎さんが荷物をフロントに預けてる。何もかもが合理的で無駄が無いよ……。
「さ、行きましょうか」
「はい!」
あたしは朝からガッツリ食べる為の正当な理由を手に入れて、喜び勇んでバイキングに向かった。
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