第4話 難易度高いよ
「か、か、か、神崎さんっ!? あの恐怖のメールの神崎さん?」
「恐怖のメールとは何ですか?」
しかも笑顔無いよ。
「いえ、あの、あたしのとてもしょーもないミスを見つけてチェックを入れた大変有難いメールを毎日下さっているあの機械設計グループの神崎さんですか?」
「いえ。あなたの極めて初歩的且つ致命的でその上取り返しのつかない事態を招くミスを見つけてチェックしている神崎です」
てめー、喧嘩売ってんのか。
「いつもありがとうございます。ご迷惑おかけしてすみません」
「いえ、毎日の事ですから慣れてます」
てめー、やっぱ喧嘩売ってんだろ。
「寧ろ毎日のルーティンとして行っている作業なので、最近では山田さんにミスが無いと何か家に忘れ物をしてきたかのような妙な不安さえ覚えるようになりました。これは既に依存症ですね」
すっごいハイレベルな喧嘩の売り方だな。
「で、なんで神崎さんが京丹波なんかに?」
「同じマシンなんですから当然でしょう? あなたの作ったソフトを僕が組み込んで作る訳ですから、山田さんと僕が居ないと始まらないじゃないですか」
「あ、まあ、そうですよね」
という事はだ。恐怖のメールどころの騒ぎじゃないんじゃないの?
「つまり、あたしと神崎さんが京丹波に出張ということで、あたしたちはワンセットで派遣されたって事ですかね」
神崎さんが「今更何を?」という顔であたしを見る。ヘイヘイ、わかりましたよ。その通りですよ。これから毎日一緒に仕事するんだ、この人と。ああああ、なんだか考えただけでちょっと、いや、だいぶ憂鬱なんですけど。
「随分嫌そうですが、僕の事かなり嫌いですか?」
ストレートだな、あんた! たとえそうでも『そうです』とは言えないでしょーが。
「いえ、そんな事ないですよ。神崎さん、とても仕事ができるんで、あたしが足手まといにならなきゃいいなと思いまして」
「大丈夫です。今度はメールじゃなくてずっと一緒に仕事する事になりますので、付きっきりで指導できますから」
おい、個別指導なんかい。高校以来だよ個別指導なんてさ。てかさ、そこ『足手まといなんて事は無いですよ』とかそういうフォロー入れるとこでしょ? なんでナチュラルに認めてんのよ。
「すいませんね、お手数おかけします」
「大丈夫です。毎日の事でしょうからすぐに慣れます」
いちいち癇に障るわー。
「あ、山田さん。休憩が欲しい時は遠慮なく仰ってください。近くのパーキングエリアに停めますから」
「はい、ありがとうございます」
フルスロットル来たかと思えば、いきなり気を遣うか? 難易度高いわー。
てゆーか……まさかこれ、天然? ……天然かも? え? 可能性あるぞ?
天然なのか、神崎さんっ!?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます