第九話後編「機神殺しの天狼」
この街にリクリエイトが攻めてくる。その情報を聞いた俺たちはすぐに行動を開始した。
戦うことのできない女性や子供、怪我人やお年寄りの人たちを地下の遺跡へと避難させる。レヴリオさんの話では、遺跡には昔に人が暮らしてたと思われる部屋がいくつかあるという。できる限りの食料もそこへ運んだ。
「なんで私まで! 私も一緒に……」
「お前の機体の修理は終わってない。大人しく避難してろ」
「でも!」
「……みんなを、守ってくれ」
「……わかった」
罪希のリベリオは大破したままだ。戦えない罪希は、ザードさんの説得でしぶしぶ遺跡へと向かう。心苦しいけど、戦える機体がないんじゃしょうがない。
避難を終えたザードさんたちは、各々の機体に乗り込む。レヴリオさんもコバルトグリーンに乗り、後方で待機する。
グランデルフィンを筆頭に機体が並ぶ。隣にはザードさんのリベリオ。
「……まさか、この街が戦場になるなんてな」
「世界の中でも、ここは特に戦いが勃発している地域よ。どこが戦場になってもおかしくないくらいに、ね」
隣り合わせの生と死……考えたくもないね。
「――来たぞ!」
誰かが叫ぶ。前方を見ると、その特徴的なシルエットが視界に映る。
上空に浮かぶ紫黒の死神。その周囲には第一部隊の隊員機が浮かんでいる。だが、俺たちの目を奪ったのは、それらではなかった。
「なんだよ、あれ……」
ディスペインの後ろを悠然と歩く、巨大ななにか。その大きさはディスペインを遥かに凌ぐ。ディスペインが縦に二体並んでも追いつけないほどの高さ。
機械で作られたその足が地面を踏みしめる度、世界が悲鳴を上げる。まさに、圧倒的なスケール。
「やあ、レジスタンスの諸君」
巨大な狼から、男性の声が聞こえてくる。
「僕はリクリエイト最高幹部の一人、ノワール・ギース! この素晴らしい僕が、君たちを直々に潰しに来た! 僕の可愛いペット……
その言葉に呼応するかのように、甲高い咆哮を上げる天狼。その雄たけびが世界を震わす。あんなのがいるなんて聞いてないですよ!? ディスペインですらやっとの思いで撃退したっていうのに、あんなデカイ化け物まで相手にしろって言うのか!?
みんなもその圧力に一歩後退る。それを制したのはザードさんだった。
「てめぇら! 俺たちの後ろにはなにがある!?」
俺たちの後ろ。そこには、この街に住んでいる人達がいる。罪希がいる。
そうだ。俺たちは、絶対に退くわけにはいかない!
「ほう、良い気迫だ」
クロムの声。なんかお前に褒められても複雑だな……。
「それでこそ、戦いがいあるというも――なにッ!?」
突如クロムを襲う天狼。その巨大な前足を振り下ろす! それをすんでのところで回避するクロム。しかし周囲の機体が巻き込まれ、爆発に飲まれていく。
あの野郎、仲間を殺しやがった!?でも一体なんで!?
「ノワール! どういうつもりだッ!?」
「なに、僕の可愛い天狼ちゃんがね……君たちを食べたいって言うんだ! 組織でも君の隊は煙たがられていたからねぇ、良い機会さ! レジスタンス共々、ここで死んでしまえ!」
「――ノワールッ、貴様ッ!」
なにがどうなってるんだ!? 突然の仲間割れに俺たちは戸惑っていた。
天狼の素早い一撃が、クロムの隊員を捉える。
爆散、爆散、爆散。目の前で繰り広げられる殺戮。
あっという間にその数を減らしていくリクリエイト軍。
「……こんなの」
拳がわなわなと震える。いくら死んでいくのが敵だからって、黙ってみているわけにはいかない!
見れば、今まさに天狼の足に潰されそうな機体。
「やらせるかァァァァァァァァァッ!」
考える間もなく、体が動いていた。俺はグランデルフィンの両腕をグランバスターに換装し、天狼の足へ撃ち込む! グランバスターが当たったことにより狙いが逸れ、天狼の足が見当違いなところへと振り下ろされる。潰されそうだった機体は、すぐに立ち上がり、その場から離れた。
「どういうつもりだ?」
隣に降り立ったクロムが問う。
「眼の前で理不尽に奪われる命を、俺は放っておけない。それに……」
「それに?」
俺は一呼吸置いて、ディスペインを見据える。
「お前とは、正面から戦って、勝ちたい」
「フッ、そういうことか。ならば……」
俺は右翼上部を開き、柄を射出する。それを掴み、エネルギーを送り込む。鍔が開き、刀身が出現する。
ディスペインは右腕を上空へと向ける。手首から射出される一本の棒。ディスペインがそれを握ると、棒はその長さを伸ばしていく。およそディスペインと同じ長さになったその棒を、三日月型の翼から生えている黒刃に接続する。
俺はグランキャリバーを、クロムはガングニール・アイ・グロスをそれぞれ構える。
「――共に、
「ああ。俺たちが戦うために、あいつをぶっ倒す!」
今、二体の機神が並び立つ! 敵は、
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