全てとの出会い
1
何もしたくないどこにも行きたくない。
そんな気分で迎えた朝だった。
「学校...行きたくないなぁ」
高校に入れたのは良いけどまったく行く気が起きなかった。
今日は高校の入学式。
普通の人達ならばわくわくしながら高校に登校しているかもしれない。
しかし、僕は違っていた。
また学校に行かないといけないと思うと吐き気がする。何かそこに楽しみさえあればいいのだけれど。
「そういえば、あの人も合格してたっけ...」
あの人と言うのは、受験の時に見た鈴と呼ばれていたあの可愛い女子の事である。
合格発表の日、あの三人組を見て2人が「鈴も合格出来てよかったね!」という会話を耳にした気がする。
「あの人がいるなら....学校行ってみてもいいかな。」
僕は至って単純な考えと体をしているようだ。可愛い子に会いたいというだけの理由で学校に行く気になっているし、もう準備も終わらせてしまった。
さっきまでだらだらと過ごしていた僕とは大違いだ。
さあ、そろそろ学校に向かうとしよう。
そして、僕は『カクカキ』でこう呟くのだった。
「学校いってきます。
少しだけだけど高校楽しみだな」
呟いた後に僕はスマホをポケットに入れて玄関から出た。
少し歩いたぐらいの時にスマホの通知が鳴った。
誰かが僕の呟きに返信でもしたのかな?
僕はスマホを取り出し、通知欄を見た。そこには『カクカキ』の返信通知があった。
「そういえば、今日入学式って言ってたね!
ルキ君頑張ってにゃ!行ってらっしゃいにゃん」
そこに表示されたのは僕の呟き関しての返信と猫丸の文字だった。
猫丸さん優しいな。
猫丸さんは最近『カクカキ』上で友達になった女性である。僕のなんでもない呟きにも反応してくれる優しい人だ。
猫丸さんの返信にある「ルキ」と言うのは僕の『カクカキ』上での名前だ。特に意味は無い。ただ名前を付ける時考えるのがめんどくさくて、何かカッコイイ名前は無いかなって検索した結果がルキだった。
別に名前の事は全く気にしていないからこれからもこの名前を変えることはないだろう。
僕は猫丸さんに返信を返しスマホをポケットに入れ、学校に向かっていった。
「ありがとう」
学校に着き、教室に入るとそこにはほとんどの席が埋まっている状態だった。
僕は黒板の席順の確認をして自分の席に座った。
周りを見てみた。ほとんどの席に人がいたがまだ隣の1席だけ空いていた。そして、あの人がいなかった。
隣の席...もしかして...
そんな期待を抱きながら時間を無駄に消費していた。
「こんな暇なら小説1冊ぐらい持ってこればよかったかな」
そんな誰も聞いていないような独り言を言いながら残り少ない時間を消費しようとしている。
「へぇ、お前小説とか読むんだ。どんなの読むの?」
誰も聞いていないと思っていた。でも、それを聞いている人がいた。僕の目の前に。
前の席に座っていて、後ろの僕の席の方を向いて僕の事を見てくる男子。その顔はどこかで見覚えがあった。
記憶力の悪い僕が受験の時に一度見たからといって覚えてるはずが無いのに、少しだけ薄らと記憶の片隅に残っていた。
誰だろう。まあ、いいか。
「小説って言ってもラノベしか読まないよ...」
「へぇ、そうなんだ。オレも好きだよ。ラノベ」
僕はその言葉を聞いて感動した。
今まで、ラノベが好きって人を学校で見たことがなかったからだ。書店や『カクカキ』では何人かラノベ好きの人に出会った。猫丸さんもそのうちの1人だ。
「そうなんだ...学校で初めて見た...。ラノベ好きって人...」
どこか自分の言葉が変に感じた。眠いし、学校にいるっていうだけで心が沈んでいるからだろうか。
「へぇ、オレの中学は何人か居たけどなぁ。ラノベ好きのやつ。そのうちの2人と同じとこに来たけどさ。」
「じゃあ、後2人いるってこと?」
「うん。ほら、1人はあいつ。」
そう言って相手が指さした方向を見る。隣の列の一番前の席。そこにはどこか見覚えのある女子の後ろ姿があった。
ああ、あれは確か受験の時斜め前に座ってた人。
だとしたら、目の前の男子はあの可愛い女子と一緒にいた男子。
なるほど、だから見覚えがあるのか。だとすると、あの女子もラノベ好き?
「おはよう、フラン」
声のする方を見るとそこには待ち望んでいた人がいた。僕の学校に来る希望を与えてくれるかもしれない人。
って、フランって誰?
「おい、入学式そうそうその名前で呼ぶなよ」
「ごめん、つい癖で」
「あのなぁ...」
なんか、僕の目の前で言い争ってる。
僕置いてけぼりだな...。
「あの、フランって...」
「ああ、すまん。それはオレのネットで使ってる名前。オレの名前は篠崎心葉。コノハでもフランでもどっちで呼んでくれても構わないよ。」
なるほど。教えてもらったからには名前覚えなきゃなぁ。
「なに?フランもう友達でも出来た?さすがコミュ力高いヤツは違うわ」
「オレコミュ力高くないから」
なんだろ、やっぱ可愛いな。近くで見てたら余計可愛く見える。
「お前も挨拶しとけよ、一応クラスメイトなんだしさ」
「ええ、めんどいけど...しょうがないか。
ボクの名前は天野鈴。あんたの名前は?」
天野...鈴...やっぱ可愛い。
「僕の名前は不破薫。これからよろしくね」
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