すべてはあの娘のために

睡眠妨害

プロローグ

出来れば楽して生きたい。

それが僕の信念であり僕、不破薫の生き方そのものだった。

何をやるにしてもめんどくさいの一言から始まる。

そして、今僕の目の前にある物それが僕を一番苦しめているめんどくさい物だ。

受験勉強。

高校受験を明日に控え、僕は少し危機感を持ちながらも全然焦りを感じていなかった。出来れば勉強なんてしたくないし、これ以上学校というめんどくさい所に通いたくもなかった。

しかし、もし落ちたら親からめんどくさい事を言われるのだろう。それぐらいだったら学校というめんどくさい所に通った方がいい気もする。だから、少しは受験勉強でもしてみようと勉強道具を目の前に置いたのはいいが全くとしてやる気が出ない。まったくどうしたものか。

僕は親から来年から高校生になるんだからと言われ、まだ通うことも決まってないのに買い渡されたスマホを取り出し1つのアプリを開く。

『カクカキ』

110文字と決められた制限で自由につぶやきを投稿でき、検索をしたら色んな人のつぶやきを見ることができその人のホームに移動しフォローボタンを押しフォローしたらその人のつぶやきを簡単に見れるSNSアプリだ。お互いにフォローしあえばカクカキ上で友達として認識される。パソコンからもスマホからもログインする事が出来るのでスマホを持っている人のほとんどが登録していると言っても間違いではない。

カクカキで僕がつぶやく事と言えば同じような事ばっかだった。

「めんどくさい」

これが僕の口癖になりつつもある。ネットでもリアルでも何かあるたびにめんどくさいと言う。ある意味僕はこの言葉にとりつかれているのかもしれない。

さて、そろそろ12時か。もう寝る時間だな。明日は高校受験。一応は早く起きて試験中に眠らないように目を覚ませないといけない。

僕はまったく触ってもいない、目も通してない勉強道具を片付けて眠る準備を始めた。


明日世界が滅亡して人生が終わってしまえばいいのに。


次の日


僕は眠い目をこすりながら、受験会場である僕が受験する高校に向かって歩いていた。

「なんで僕はこんなに眠いのに歩いているんだろう。めんどくさい」

そんな誰も聞いていないのに独り言を呟きながら1人で歩いていた。

ちなみに僕と同じ中学のやつらは誰1人僕と同じ学校を受験するやつはいない。だから、今僕と同じ方向に向かって歩いている人達の中に僕と同じ制服は誰1人いない。僕だけだ。

そんな感じで全然知らないような制服だらけの流れの中を流されていくように歩いているといつの間にか高校についていた。

僕は受験会場として指定された教室の場所を確認しながらその教室の中に入る。

教室の中には半分くらいの人数が揃っていた。

まあ、そうだよな。あと1時間で集合時間だし。1時間あるし、少しぐらい参考書に目を通しておくか。今日は数学と国語、そして苦手な英語だった。

めんどくさいなぁ。周りの人達は友達同士で勉強してたり、お喋りしているというのに。僕は1人でやる気のない勉強だ。これで合格出来たら感動ものだ。

やる気は無くとも少しは時間潰しになり、気づけばあと5分だった。周りを見渡せばもうほとんど来ているようだった。空いてる席なんて...

空いてる席なんて無いと思っていた。しかし、隣の列の席3つが空いていた。こんな時間まで来ない人達もいるのか。

「はぁはぁ...間に合った。もう鈴のせいだよ!こんな時間まで寝てるから」

「ボクのせいだっていうの?まったく、ボクはこんな所来たくなかったんだ」

「そんなことばっか言って!オレ達を困らせて」

「別にそんなつもりじゃ...」

何故か入口の所で3人が揉めている。まだ来ていなかった3人のようだ。

女子2人と男子1人。鈴と呼ばれ2人から怒られている女子...。少し可愛い...。

その3人が空いている席に向かって歩く。鈴という女子はちょうど僕の隣の席だった。

こんな可愛い子と過ごせるなら...。少しは試験頑張ってもいいかもしれないと思った。

「ああ...めんどくさい。やりたくねぇ」

隣から聞こえてくる声。完全にやる気が無い。この女子と3年間過ごしたいという夢がもう壊れてしまいそうだった。

大丈夫かな...。僕も隣の女子も。


そんなこんなで受験は終了。

結果的には僕は合格した。

そして、鈴という女子も。

余談だし、たぶんここまで言われたら読んでるみんなわかると思うけどさ。これは僕と鈴の甘酸っぱい恋物語になるはずだったんだよ。

なるはず...だったんだよ。

なのに、どうしてなのかな。どこで間違えてしまったんだろう。たぶん、出だしからすべて間違えていたんだろう。僕の性格自体が間違っていたんだろうね。

まあ、とりあえずこのめんどくさくて理解しがたい不破薫の話はこれから始まるのだ。これからね。

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