第22話 サポーター
数日後、私の映像は思わぬ形で世の中に出ることとなった。ワイドショーで『美人すぎる婦警さん』として高科さんと一緒に紹介されたのだ。
もちろん、そんな取材は断りたかったのだが、部長の佐伯がインタビューを受けるように命令してきたので逆らえなかったのだ。
ちょうど昼時の放送だったので、皆がランチで行けるかつ日和に集まって見ることになった。店主のはからいで、臨時休業にして貸し切りで店を開いてくれたのだった。聡以外、かつ丼を食べながら放送を待った。
「聡さん、録画大丈夫でしょうね」
「ああ、未来のファーストレディの晴れ舞台だ、ばっちり録画予約してきた」
「ユウネエ、やっぱり女優さんになればいいのに」
「あっ、お姉ちゃんだ!全然笑ってない…」
「先輩、ちょっと緊張してたみたいで」
ああ、今すぐこの場から逃げ出したい。すると、佐伯部長が店内に入って来る。
「佐伯部長、どうしてここに?」
部長は、私の質問をスルーして、
「よっ、てっちゃん」
と店主に挨拶する。
「おう、ゴロウちゃん」
「麻美はちゃんと役にたってるかね」
「お父さん、余計なこと言わないで」
てっちゃん?ゴロウちゃん?お父さん?麻美ちゃんが厨房から出てくる。
「そう怒るな、おおー松永はテレビ映りもばっちしじゃな。うーん、やっぱり撮影用にスカートをもっと短くしとくべきじゃったな」
聡と高杉くんも頷いて、エロ部長に賛同する。
「こうしてテレビに出れば、ななしの組織も簡単に手を出してこれんじゃろ」
「えっ?」
佐伯部長が、ななしの組織を知っている?
「すまなかったな。松永を突き落とした大島には目を光らせていたんだが。申し訳ない」
佐伯部長が私に頭を下げると、店主も丼を一つ持って厨房から出てくる。
「あんた、今度の選挙で出馬するんだって」
店主が聡に尋ねる。
「はい。総理大臣になってみせます!」
「これ食べな」
「俺は卵が…」
「いいから」
聡が手を震わせながら、ふたを開けると、中はソースかつ丼だった。
「俺ら、NHKもあんたを応援する」
店主はそう言うと、
「俺らは、にほんひみつこくさいそうさきかんのメンバーだ」
と続けた。
NHK?日本、秘密、国際捜査機関?聡の出馬表明が、何かを動かし始めていた。
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