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 特務隊の総隊長は壇上に上がると、晴れて候補から正式配属へと進んだ剛志つよし達を見渡し、感慨深げに言った。



「諸君、よくぞここまで残ってくれた。諸君も知っての通り、大地震は百年から百五十年周期で起こると言われている。しかし、この地では前回の大地震から百五十年上経った今もなお、大地震は起こっていない。それは何故か? 何故ならば、それは我々特務が人知れず大地震を阻止してきたからに他ならない。我々はこれからも地震防災のプロフェッショナルとして、我々の愛するS県ならびにその近隣県の人々の幸せを守らなければならない。そして、世界に輝くS県の創造を目指していかねばならないのである。ここまで残ってくれた諸君らならば、これからの二年を立派に勤めあげてくれることだろう。いいか、これからの二年、全力でフィリップ君とラシアちゃんを寝かしつけてくれたまえ!」



 仲間達がときの声を上げる中、剛志は溜息を盛大に吐いて頭を抱えた。プレートンに愛称をつけているだなんて、絶対におかしい。フィリップ君とラシアちゃんとは何だ。マスコットキャラか。


 正式配属の式典が終わると、早速消防署代わりとなる潜水艦へと乗り込んだ。潜水艦は全部で三隻あり、二隻がフィリップ君とラシアちゃんの許にそれぞれ配備する。フィリップ君かラシアちゃんのどちらかに二か月間配備した後、一ヶ月間は休暇と地上勤務となり、再び二ヶ月間海底にて前回とは逆のプレートンの許に配備となる。

 海底は気が落ち込みそうなほど暗く、そして辺りにあるのは休止中の海底火山くらいだった。音も光も何もない無とも思える海底での艦外巡回ほど、退屈なものはなかった。

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