(3)

 溜め息とともにに遠足の思い出をどこかへと吐き捨てると、剛志つよしはのっそりと体を起こした。

 ショートホームルームのために教室に入ってきた担任が教卓の前につくと、部屋全体がタイミング良くぐらりと揺れた。揺れと同時にクラスメイトの数名が反射的に机の下へと潜り、それを見た担任が何事もなかったかのように名簿で教卓をトントンと叩いた。



「ほら、いつまで机の下にいるの? 今の、震度3でしょ。そのくらいじゃあホームルーム中止しないから。早く戻ってきなさい」



 ほら早く、と急き立てられ渋々と机の下から這い出るクラスメイト達の光景も、今ではすっかりと見慣れてしまった。でも、剛志は今でも思う。それはおかしい、と。

 普通に過ごしていてこんなに敏感に揺れを察知して対応できるものだろうか。それに、普通は体感で〈今起きた地震の震度〉なんて当てられるわけがない。しかしながら、担任やクラスメイト達はそれを易々とやってのけるのだ。



 ――本当に、S県民とやらはおかしいとしか言いようがない。

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