第11話

雅彦がパーティー会場に戻ると、美樹が待ってましたとばかりに、化粧室に行った。その間に、裕太とデザートを取りに行った。


「裕太、良かったな。絵美さんと会えて。」

「それはパパでしょ。ほら。」


裕太がポケットからチラシを出した。絵美の劇団が都内の小さな劇場で公演をするらしい。


「おっ!これかあ。」

「ママが連れて行ってくれるって。これで秘密にしなくていいね。」

「おいおいおい、前の事は言っちゃダメなんだからな。」

「分かってるよー!」


そうやって雅彦と裕太が2人でデザートを食べている時、美樹はパーティー会場横の別室で絵美と話していた。


「今回は色々助かったわ。ありがとう。」

「いえ、お役に立てて良かったです。あれで良かったんですか。」

「ええ、もちろん。それにしても、あのダメ男がこんなに変わるとはね。」

「でも、美樹さんは平気なんですか?ダンナさんが浮気するの。」

「させたのよ。気分良いとは言わないわよ。必要最低限ってところかしら。」

「ねえ、美樹さん。美樹さんも浮気してるんじゃないですか?」

「あら、当たり前でしょ。そんなこと。」

「うーん、聞いていいですか?」

「いいわよ。何でも。」

「どうして離婚しないんですか?」

「どうして?」

「そう。どうしてですか?自由に恋愛出来るじゃないですか。やっぱりお金とかですか。」

「お金??」


美樹は、いかにもつまらないとばかりに答えた。


「離婚したら、浮気出来ないでしょ。」

「えー!」

「アダムとイブ知ってるわよね。」

「は?あのアダムとイブですか。」

「人は何故、神を愛するのか?」

「何故ですか?」

「罪があるからよ。」

「罪!じゃあ、私の仕事って結構役立ってるんですね。」

「もちろん、あなたは天使なの。」

「天使かあ。じゃあ、そろそろ仕事なので行って来ます。」

「天使の仕事、頑張ってね。はい、これ。」

「ありがとうございます。次はありますか?」

「もちろんよ。放っておくと、勝手に許しちゃうのよ、人間って。」


絵美は美樹から封筒を受け取ってカバンに入れた。そのままホテルを出てタクシーに乗り、新宿の歌舞伎町へ行く様に伝えた。


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愛される理由 ひょん @kinshiro1201

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