第6話

食事が終わった後も、帰ろうとする絵美を裕太が離そうとせず、結局裕太が疲れて寝るまでズルズルと居てしまった。 裕太は寝る寸前まで「絵美ちゃん、泊まっていいよ。泊まっていいよ。」と繰り返していた。雅彦は、裕太が寝付いたところでようやく落ち着いた。


「あー、裕太。お風呂入らないで寝ちゃったな。」

「私のせいですね。ごめんなさい。」

「いやいやいやいや。何を言ってるんですか。こちらこそ、ずっと相手して頂いて申し訳ないです。」

「裕太くんはいつもこの時間に寝るんですか?」

「えっと今、9時ですか。いつもはもっと遅いですよ。10時くらいかなあ。今日は散々遊んで貰ったので疲れたんでしょうね。」

「すごい楽しかったです。小さい子とここまで遊んだのは初めてですから。」

「ん? 幼稚園の先生やってたって言ってじゃないですか。あー、やっぱり冗談だったんですね。」


絵美は一瞬、真面目な顔になって答えた。


「冗談じゃないですよ。しょっちゅうやってます。」

「しょっ、しょっちゅうですか。」

「さっき言ってたの。全部本当です。でも、、、」


絵美の表情が明らかに変わった。口角が上がり、目は一段と黒く見えた。雅彦は、絵美に聞こえているんじゃないかと思うほど、動悸が鳴っていた。


「奥さんプレイは、、、」


絵美は視線を下にずらす雅彦の視界に入り込む様に、体を横に曲げ、目を覗きこむ様に呟いた。


「まだやったことない。」


雅彦の喉がゴクっと鳴った。自然に顔にかかった絵美の吐息を、まるで全部飲み込んだかのように。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る