第4話

家に着いてすぐに、洗面所に案内した。


「手にずっと水を流してて下さい。」


雅彦はその間に、救急箱から消毒液や包帯等を取り出して、彼女をリビングのソファに座らせて応急処置をした。


「痛みはどうですか?」

「いや、もう大丈夫です。ありがとうございました。」

「いや、こちらが悪いので申し訳ありません。無理しなければこんな事には。」

「いえ、元はと言えば私が悪いので。お店の中でも助けて頂いたし。」

「あっ、あれはね。」

「息子さんを使って教えてくれたんですね。」

「あっ、いやその。はい、そうです。」

「ありがとうございます。」


そう言って、彼女は初めて微笑みを見せた。これまで雅彦はそれどころではなかったが、落ちついて見ると相当な美人だと思った。


「あっ、あの。お店の件ね。もうしない方がいいよ。」


彼女は一瞬うつむいて顔を上げ、微笑みながら、


「はい。あれはもう何というか。とにかく、もうしません。」


そう言ってうなずいた瞬間、目から涙が溢れ出した。


「あっ、いや、責めてる訳ではないからね。ゴメン、そんな積もりは。」


慌てて雅彦が彼女の両肩に手をかけると、雅彦の胸に顔をうずめて大声で泣き始めた。雅彦はどうしていいか分からないので、とりあえずいつも裕太にしているように、背中をさすってあげていた。


「パパ、着いたよ!」


突然の大声に雅彦が振り返ると、顔を手で覆いつつ、指の間からしっかり見てる裕太が立っていた。

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