第十話「一亡十色」

 第二章 亡霊編


 第十話「一亡十色」


 暗闇の中で、静かに揺れ動く影があった。

 まるで時が止まったかのように風ですら入り込む余地のない、全てが静止している工場の中を確かな足取りだけが支配する。

 こつ、こつ、と自分の存在を知らせるように、彼は足音を立てていく。

 静かな世界では小さな音すらも反響して、耳障りに聞こえてしまうから、誰かが居れば足音に気づける。もし誰も居なくとも現れたときに気づかれればいいとすら、足音の主は思っていた。


「……はぁ……はぁ……」


 ひたすら亡者のように動きながら、憎しみの象徴である亡霊の単語を体内で巡る血と同じように身体へ駆け巡らせて、彼は工場を徘徊する。

 彼の頭の中では、ひたすらに亡霊が息巻いていた。

 想像の中で、亡霊はどこからともなく現れ、人の幸せをお手玉でもするように軽々しく奪い去る。まるで、それが自分の欲望だとでも言うかのように。

 絶対に許すことのできない、感情にこびりついた記憶を頼りに、彼はひたすら亡霊の幻影を追い続ける。

 一定の範囲を巡り終えた彼は、魔法を唱えた。


「疾風の風……ウィンドアックス」


 集中し、手を合わせた次の瞬間には、合わせた手を水平に離していく。

 両手の間にはエメラルドのように透明な斧が現れるが、和志はそれを手にとることもなく、無造作に落とした。

 地面で乾いた音をたてるウィンドアックスを放って、また力なく足音を響かせながら歩き始める。まるで作業とでも言いたげな足取りだ。

 普通、詠唱した魔法は時間が立つと自然と分解を始める。それは、魔力を練ってできた魔法結合と呼ばれるものが、勝手に解かれていくからだ。

 分解された魔法は、空中に溶けて、空気中に消えていく。

 しかし、和志の詠唱したウィンドアックスは一定の時間が立っても魔力結合が解除されず、半日程度ならば物体としての維持ができた。もしもの時のための武装として、和志は一定の場所に武器を置いて去る。もちろん、詠唱した位置は頭が勝手に記憶している。

 亡霊との戦闘になれば、得物を詠唱している時間など存在しない。和志はそれを直感的に察していた。

 相手は風のように素早く、火のように力強い。

 もしかしたら亡霊を探し回っているこの瞬間にも、胴を切り裂かれるかもしれない。身震いすら起こらない極限が支配する緊張感の中、和志はひたすらに歩き続ける。

 和志は、亡霊がここに来るということを確信していた。

 きっと自分の中にあるモノに引き寄せられて、亡霊は現れるはずだ。だから、貪欲に憎しみを求め続けて徘徊する。

 自分から、妹だけを残して全てを奪い去っていった亡霊。

 深遠に蠢き、今でも見知らぬ人々を殺している悪魔に復讐をするために。

 それだけが今の和志を動かす原動力で、心を蹂躙しつくした感情そのものだった。

 

 ……


 既に夕日が山の谷間に落ちて、月が眼下を眩いばかりに照らす時間となっていた。

 一片の雲もない夜空は、星空と月の華麗さをこれでもかというくらいに見せつけている。

 風も穏やかに流れていて心地よく、争い事が起こるなど到底思えない静かな夜だった。


「嵐の前の静けさって奴かな、こりゃ」


 瞳が吸い込まれそうになる綺麗な夜空に、バイクを降りた野木原 一誠は、声をぽつりと残す。

 後部席で、一誠につかまっていた紗綾は不安げな表情で、静まる工場を見上げる。

 蒼と紗綾は一誠と合流した後、右京区の工業地帯のさらに外れ、今は使われていない工場が密集している地区に訪れていた。

 美久はというと、一誠に蒼と紗綾を預けたあとに、学校の中へ姿を消したため着いてきていない。ソリューションの指揮官なのだから、やるべきことも多いのだろう。

 あいにくバイクは三人も乗れるわけでもなかったので、風魔法のアクセルでバイクとほぼ併走し、工業地帯まで来た蒼は一誠を見る。

 月夜に照らされた一誠の横顔は、どこか中性的な顔立で日本人然とした黒髪ではなく、金髪なのがどこか不自然にさえ思えてしまう。


「……野木原 一誠。亡霊と戦うにあたって情報を知りたいのだが、教えてもらえるか?」


 急かすような蒼の言葉に一誠は空から視線を地上に戻し、憎しみを瞳の奥に宿らせて、張り詰めた顔をする。

 頑なに変わろうとしない信念がそこから読み取れて、逃れることのできない凄みを感じてしまうが、一誠はその姿をすぐに覆い隠してしまう。


「こんな綺麗な夜空なんだ、もう少し静かにしててもいいだろうさ。鷲くんは情緒ってのがねぇね」

「……どうでもいいが、俺の名前は創崎 蒼だ」


 一誠は、蒼の言葉に驚いて目を見開き、ククッと息を殺しながら笑う。

 その光景に、蒼は珍しく眉をひそめた。


「……なんだ?」

「感情のない、まっさらな機械みたいな面してるなって思ってたが、案外そうじゃなかったんだな、とな。いや、すまん。次からは鷲くんじゃなくて、蒼と呼ぶ。それでいいか?」


 蒼は目線を下げて、自分の心を計るかのように地面を見つつ、不安そうに訊く。

 まるで自分のことが分からないと、そう言いたげな顔をしていた。


「俺はそんなに……感情のある顔をしていたか?」

「とんでもねぇ不機嫌な面してたぜ。今すぐにでも斬りつけられるかと身構えちまったよ。なぁ子猫ちゃん」


 同意を求めて一誠は紗綾に視線を振るが、紗綾は心ここにあらずといった風に工場を見つめており、反応が二拍ほど遅れてから反応が返ってきた。


「えっ? あ、ああ、そうですね……」


 ダメだこりゃ、と一誠は首を振って話を戻すために、こほんと咳をする。


「んで、亡霊の話しだったか……って、お前もなんて面してんだ」


 不機嫌な顔をしていたとの言葉に、蒼は戸惑っていた。

 無頼が言うには、蒼は理想の兵士で何でも命令をこなす兵士という言葉を体言したような存在だったらしい。

 人を殺すことに特化した兵士は、人ならざるものだ。誰しもが感情を押し殺して人を殺す。どこかで罪悪感を感じながら自分が生きることに必死になる。だが何も思わず、ただ作業のように人殺しをしている存在がもし居るとすれば、どこまでも人の感情を排除した人形に他ならないだろう。

 それが理想の兵士足りうるものだと蒼は認識しているし、それをこの間まで体現していたと思っていた。

 自分が、感情を表していたなどと、聞いてしまって戸惑うのも無理はない。

 蒼の中にあるのは、今まで散々言われ続けた兵士として積み上げられた面の皮だけだった。

 そのことが、余計に自分自身をわからなくする。感情を廃しきらなければ、蒼はランスロット卿として戦ってこれていなかったからだ。

 感情がない自分が本当なのか、感情のある自分が本当なのか、わからないことだらけ。

 しかし、今の蒼には他に注力すべきことがある。

 一端、考え事は心の片隅に置いておくべきだろう。

 亡霊というのはかなりのやり手らしく、迷いを持ったままでは殺されることもあるかもしれない、と感情を無理やりに納得させて忘れさせる。

 自分自身の問題に結論をつけるのは、和志を見つけてからだ。


「……いや、今は俺のことはいい。まずは亡霊のことからだろう」

「ふーん、自分のことは後回し、ね。ま、それでお前さんがいいならいいさ。亡霊を発見して、すぐに動けなかったら困るし、歩きながら亡霊について話してやる。子猫ちゃんもいくぞー?」

「お兄ちゃん、今空腹で倒れたりしてないかな……。一人で居る寂しさに堪えてたりしてないかな――」

「子猫ちゃーん?」

「――すみません。今、行きます」

「三拍くらい空いてたぞ!? お兄ちゃんが心配ってことか」

「……はい。無茶してないか……心配で」


 兄の身を案じて、紗綾は胸に両手を置く。月明かりが道を照らす夜に、その儚げな姿は、まるで非現実的な世界に迷い込んでしまったかのように映る。

 誰が見ても紗綾が本当に和志を心配していることは、一目瞭然だ。紗綾の中にあるのは和志を案じる愚直なまでの心で。一誠は体に影を産み落とす月を静かに見上げて、苦悩でもするように間を置いて呟いた。

 

「……可愛い妹に、こんなに心配される兄ちゃんがいるとはな。亡霊の前に俺が説教してやらにゃあな……死に急ぐんじゃねぇぞ……」


 蒼は彼らの感情がはっきりと出ている姿を見て、心にぽっかりと穴が空いているのを感じていた。

 きっと、彼らは兵士として命令があったから動いたのではなく、個人の感情で動いている。

 どこまでも自分の欲望のために動くから自分というものを、欲望をしっかりと持っている。思えば、紗綾は自分から和志の捜索を申し出ていた。

 それは自分の中にこうしたい、という確かな欲望があるからだ。なら、命令されたまま付いてきている自分はどうなのだろう、と思う。

 紅 久遠を自分の意思で探すため、自分を変えるため、ソリューションの人間たちが羨ましくて――円卓の騎士団からソリューションに移り変わったのは確かだったが、蒼は自分が変わることにまだ順応できていなかった。


 ……

 …


 紗綾は月明かりに照らされる工場に目を凝らして、必死に和志が残した残滓を探そうとしていた。今も兄は一人で癒えようのない憎しみと戦っている。そう思うと、居ても立っても居られないようだった。

 工場が見える位置に来ては、紗綾は駆け出して工場に駆け寄り、些細な音が響いてこないか確認する。その様子を見て、蒼は口を開いた。


「……あんなに必死に捜索する意味はあるのか。体力が持つか怪しいだろう」


 誰に言ったわけでもない、独り言のようなものだったが、隣に居た一誠は歩きながら律儀に答える。蒼もそれを見て、遅れ気味に歩き始めた。


「好きにやらせときな。どうせ全部の工場を見ることなんて、時間的に不可能なことだ。あくまで俺たちは騒ぎが起きたあとの後手に回るしかねぇ。和志って奴もどこにいるかわからねぇしな。それでも、動かなきゃじっとしてられねぇんだろうさ。亡霊はここへ現れる。俺と蒼がやっておくべきことは、それまで力を蓄えることだけだ。で、亡霊のことだったな」

「情報把握は戦闘を行う上で、一番有効なものだ」

「まったく、その通りだ。んじゃ、まず亡霊に関してどれくらい知ってる?」


 蒼は一誠の問いかけに対して、考える素振りすら見せず率直に答えた。


「亡霊の話を紅 美久に聞くまで亡霊のことを知らなかった」

「んじゃあ、亡霊のことをしっかり説明する必要があるな。亡霊ってのは死なない存在だ。何度も現れる様から亡霊って名がつけられたんだ」

「死の概念がない……? そんなことはあり得ないだろう。死はどんな人間にも平等に訪れる逃れられない終わりだ」


 もし人に死という概念がなければ、蒼は今のようになることはなかっただろう。

 大切な人がいなくなってしまったから、自分の殻に閉じこもってしまう。

 殻に閉じこもった自分は、他人の命令を聞く人形にしかなれなかった。自分がそんな境遇の上に立つ人間だと自覚しているから、死の概念がないなど認められなかった。


「あいつは何度殺しても蘇ってきやがる。焼死した体を粉々に砕こうとも、またどこかで現れる。それが亡霊って言われてる所以だ。俺がファントムハンターって呼ばれてる所以も、それが原因だ。何度も、何度もあいつを殺している間にいつしかそう呼ばれるようになったってとこだ。ま、疑われるのはしかたのねーことだが、そこはあいつを殺して見ればわかることだ」

「分かった。亡霊が不死ということに関しては、一応納得しておこう」

「そうしといてくれ。次は亡霊の対策方法だが、まともな対策は存在しねぇ」

「……なに?」


 蒼にしては、珍しく驚きを隠せてない声があった。

 なにしろファントムハンターなどと呼ばれて亡霊を何度も殺していると言った人間が、亡霊への対策は存在しないとのたまったのだ。驚くのも無理はない。


「亡霊は殺して会うたびに強くなって帰ってくんだ。どんな対策を立てても、次にはまるで意味ないんだ。たまったもんじゃないぜ」


 一誠は吐き捨てるように言う。ファントムハンターという名前を持っているからには、一誠も亡霊に対して固執する何かがあるということなのだろう。それが透けて見えていた。


「戦いの中で対策法を見つけるということか」

「端的に言うとそういうこった。毎度戦うたびに使う魔法が変わるからな」

「……厄介な相手だな」


 一誠は喋り終えると一息ついて、周囲を見渡した。

 その姿を見て、蒼は一つ疑問に思う。


「一誠。なぜ、ここに亡霊が現れると過程できた?」

「亡霊の習性って奴さ。きっと和志って奴もそれを利用しようとしてるんだろうさ」

「習性? 亡霊にはそんなものがあるのか」

「長年、亡霊を追いかけ続けた成果ってところだ。無差別に人殺しをするのが亡霊だが、もうひとつ絶対にあいつがする行動がある。自分を憎む人間を察知して現れるって行動だ」

「……なんだそれは?」


 蒼は怪訝に眉をひそめた。

 憎まれる相手に会いにいくなど、殺されにいくようなもののはずだが亡霊はそんなことをするらしい。


「そのままの意味さ。自分を憎む人間の前にあいつは現れる。オカルト染みた物言いだが、憎しみってものを探知できるみたいなんだよ」

「ここに亡霊を憎むものが居るから、ここに亡霊が来ると言い切れるわけか」

「そん通りだ。美久が和志は人を巻き込んだりしないだろうからって工場区画に目星つけなきゃ、亡霊が来るなんて分からなかったろうけどな」


 視界の端で一誠と蒼は、辺りを徘徊する中でいくつもの工場に駆け寄る紗綾を見る。

 必至に探している姿からは、ここに和志がいないなんて可能性は、これっぽっちも考えていなさそうだ。

 

「本当に居るんだろうな」

「あの子の感ってもんを信じようじゃないの」

「……他に検討がつけられないからな。聞けば聞くほど、亡霊はオカルト染みた存在だ。到底信じられそうにない」

「そうでもねぇさ。俺たちだってオカルトの中で生きてんだぜ? 遥か昔の人が俺たちの戦う姿を見たら腰を抜かすだろうさ。魔法なんてもの使ってんだからな」


 魔法。

 それはセレニアコス病と名付けられた通り、第二次世界大戦中の人間にとって精神病のようなもので、当時の人は未知の力を持つセレニアコス病を発症した人間を恐れて、施設に隔離したという。それが今の時代を生きる自分たちには力に、基礎になっている。

 蒼はそれを確認するように右手をあげて、拳を作る。

 拳の中が瞳に映ることはないが、確かな感覚として溢れ出んとする魔力が脈々と流れていて、今を形作っていた。

 この力がなければ、自分はここまで生き残ることもなかっただろうし、もっと違う生き方を、自分を――世界はしていたはずだ。


「この世界こそが、オカルトそのものなのかもしれないな……」

「ま、そうだな……魔法なんてものがなけりゃ、亡霊もふつうの人間だったのかもしれないな……亡霊については、もういいか」

「ああ。亡霊が特異性を持っているというのは、理解した」

「それでオーケーだ。さて、そろそろ本格的に探すとするか」

「……いや、少し待ってほしい」


 一誠が紗綾を追いかけるために小走りするところを、蒼は止める。

 同時に、月が雲に覆われて月光が遮られて夜が深くなる。


「もう説明できる範囲は殆ど説明したと思うが、なんだ?」

「野木原 一誠。お前は、元円卓の騎士団でありランスロット卿であった俺を信用できるのか?」


 これから戦うであろう亡霊と呼ばれる存在は、人間を遥かに超越した存在かのように一誠の口から語られた。ならば、元々この国で権力を振るっていた側の人間として、共に背中を預けて戦えるか聞かなければならなかった。

 しかし蒼の考えを一蹴でもするかのように、一誠は思考することもなく気軽に答える。


「聞かれるまでもねぇな。戦えるさ」

「俺は元々円卓の騎士団の人間だぞ。それでも戦えるのか。信用できるのか?」

「正直に言えば会ったばかりで、背中任せられるほど信用できるかって言われるとそうじゃないんだがな――」


 一誠は一旦、口を閉じて言葉を選ぶように頭掻きながら言った。


「亡霊と戦おうってのに、敵だなんだって言ってられないのさ。それに美久からの紹介だから共に戦えるとは思ってるぞ」

「……ソリューションの指揮官は、よほど信頼を勝ち取っているらしいな」


 蒼は、ソリューションのことを無知と言っていいほどに知らない。

 円卓の騎士団に居た頃は、命令を実直に聞く兵士として過ごしていたから、相手のことなど考えなかった――考えようとしなかった。

 ソリューションに対する情報として知っているのは、円卓の騎士団が日本を制圧してから、間を置くことなくソリューションは活動し始めたこと。

 日本においてあらゆるところに存在する円卓の騎士団に抵抗する最大勢力であること。

 これくらいのものだ。

 だから蒼は、ソリューションの指揮官としての紅 美久のことも当然知らなかった。


「あの年でソリューションを束ねているのは伊達じゃねぇってことさ。まぁ、話してみた限りでも、蒼は実直で言葉に嘘偽りはないと思ったのも事実さ」

「……そうか」

「悩め悩め。お前さんのことはよく知らねぇが、円卓の騎士団を抜けてきたんだろ? なら今はいくら悩んでも、誰もとやかく言わねぇさ。欲禁令なんてもんも、個人の思想にだけは手出しできないしな。でも任務だけはこなすぞ」

 

 そう言い、一誠は先へ先へ進もうとする紗綾を追いかけて、軽やかに走り出す。

 闇にまぎれた亡霊を見つけるために、顔をそこらかしこへ向ける。

 それを手助けするかのように、月を覆っていた雲が何処かに行って夜に光が生まれた。


「……そうだな。俺の選んだ道は、迷える道だ」


 自分はもう、円卓の騎士団に居た頃と違って迷える。迷っても、いいのだ。そう考えて、蒼も駆け始めると。

 一陣の風が過ぎ去り――亡霊が来たことを知らせる音色が静寂の夜へ怒号のように響き渡った。


 ……


 黒いマントを全身に張り付けているように見える人間が、ぽつんと立っていた。

 和志は物陰からその姿を見つけて、口元を悪魔のように歪める。和志には、あれが亡霊だという確信があった。

 亡霊はいかなるときでも黒いマントを全身に張り付けていて、正面から見ても顔と全身を覆うマントから出る足首しか見れないとの情報があったからだ。その条件に合致するのが、視界に入っている人間そのものだった。

 工場の中にある広く開いた長方形の空間に、亡霊は誰かを待つように直立不動で立っていた。

 和志の居場所はちょうど死角になっていて、相手に見つかる気配はない。

 ようやく、親の仇を討てる。和志の心が沸騰していく。

 瞳に映りこむのは亡霊の姿のみで、他のことは情報として入らない。

 唇も不気味に曲がっており、暗がりから第三者が見れば、和志は復讐鬼という言葉を体現しているに違いなかった。

 和志を支配するのは憎しみという感情だけで、他には何もない。

 詠唱したばかりのウィンドアックスを手に持ち、血が上った頭で突撃する隙を和志は窺う。

 状況を見ずに動くなんてことはしない。

 相手はこれまで幾人もの人間を殺してきた者であり、頭に血が上っていても冷静さを失うことは許されなかったから。

 暗闇の中では、どちらが前か後ろかもわからないローブで全身を隠している亡霊は、静寂の中に佇み続ける。

 和志は息を殺して、相手が動きだすのをひたすらに待った。

 獲物を狩る肉食獣のように、相手が取る行動一つ一つを念入りに観察していく。

 誰も物音一つ立てない静寂なのに、心臓の高鳴りだけが和志の中を駆け巡る。

 ただひたすら、緊張から沸いてくる唾を飲み込むのすら億劫だった。


「……」


 時間が経ち、立ち止まっていた亡霊はふと所在無さげに移動を開始した。

 どうやら、ここには目的の何かはないと判断したらしい。

 完璧に背後を取ったことを確認してから和志は、心を落ち着かせるために深呼吸する。

 ここで自分の持つ憎しみを亡霊に注ぎ込む。初撃ですべてを終わらせる気持ちを込める。

 和志は心を落ち着かせて、物陰から勢いよく躍り出た。

 無防備な背後を晒している亡霊に、和志はウィンドアックスを振りかぶって次の瞬間には、亡霊へ向けて振り下ろす。

 そこに一切の躊躇いはなく、迷いのない憎しみだけが形を成して先行していた。

 今まであった冷静は火蓋を切ったようになくなり、激情に身を任すしかなかった。


「……」


 振り下ろした後に鳴り響いたのは、そっけない風を切る乾いたものだけだった。

 亡霊はまるで背中に目でもあるかのように、和志の攻撃を左に移動して避けていたのだ。

 その後、亡霊はマントを不自然にも靡かせることなく後方へ大きく飛び上がり、和志から距離を取った。亡霊の一連の行動は恐ろしく滑らかで、地面に着地しても足音ひとつ立てない異様なまでの身体能力は驚嘆に値するものに違いない。

 亡霊はゆったりとした緩慢な動作で、深く被ったフードから顔を覗かせた。

 和志は人殺しを愉しんでいそうな嬉々とした顔をしている亡霊の顔を、記憶の中で炭化するまで焼き付けるように睨む。

 憎しみの熱を帯びた和志の瞳を亡霊はどこ吹く風で気にすることなく、言葉を投げかけた。


「おまえは憎いのか?」


 淡々とした抑揚のない機械的な声が、和志の体に深く染み込む。

 憎いのか。

 目の前にいる亡霊は、そう言った。感情の篭っていない声で、言った。

 心のうちにある衝動が膨れ上がり、怒りながらも冷静に状況を見て、均衡を保っていた怒りと冷静の天秤が、怒りに傾き始める。 

 和志は亡霊を威圧するように、ウィンドアックスを横凪ぎし、答える。


「憎い……俺は全部、全部お前に奪われて、憎いに決まってんだろぉが!」


 空虚で哀しい叫び声をあげながら、和志は亡霊に向かって突進した。


 ……

 …


 蒼たちは虚しく心に響く怒号を聞いて、月に照らされる工場へ駆け込んでいた。

 先陣を切って走る蒼に、一誠が続く。紗綾は日ごろから訓練はしているものの、戦闘要員ではないため蒼たちに追いつくことができず、遥か後方を走っている。

 蒼は後方に振り向きながらそれを確認して、一誠に問いかけた。

 

「声は、この工場から聞こえたな」


 照明のない暗闇の工場の中で、断続的に響く狂気を孕んだ叫び声を頼りに、用途も定かではない錆びついた機器類を幾度となく、通り過ぎる。

 どうやら完全に機能が停止されている施設らしく、人が居る心配もなさそうだった。


「俺たちの耳が悪くない限り、ここに俺たちが探してる奴らがいるのは間違いない。先行して突入するから和志って奴のことは任せたぞ」

「……分かった」


 蒼と一誠は忙しく作戦会議というには短い言葉を交わして、正面を向いてさらに走る速度を上げた。一秒でも早く亡霊の元にたどり着けるように。

 けたたましい戦闘音が次第に近づいてくる。

 進み続けると開けた空間が前方に現れて、そこでは和志が居た。そして黒いマントを身に張り付かせるようにして足首だけが見えている人間も。

 双方は近距離で切り結んでいるらしく、和志はウィンドアックスを使い、亡霊は赤色をした大鎌を使用していた。


「なんだあれは……。あれが亡霊か?」

「おう」


 返答は短いものだった。一誠は既に戦闘をするために思考を切り替えたのだろう。

 しかし、蒼はそうなれなかった。

 亡霊を見た瞬間から、異質な違和感を亡霊に覚えてしまったから。

 何かが、おかしい。

 言葉では言い表せない感覚が蒼を取り巻く。

 亡霊は恰好からして常人からかけ離れているが、もっと根本的に――例えるなら存在していることがおかしな者のように思えた。


「先行するぞ」


 一誠の一言で、我に返る。

 その間に一誠は魔法を口にしながら、既に駆けだしていた。


「骸(むくろ)の灯(ともしび)、グランドコンバット」


 魔力が集中して、コンバットナイフを模造した黄土色の物体が一誠の右手に現れる。言葉から察するならば、土属性の基礎魔法を使ったものだろう。

 瞬く間に一誠は、和志と亡霊が得物をぶつけ合う距離へ侵入する。風の魔法を使っているわけでもないのに風を裂くような速度であり、亡霊と何度も渡り合って勝ってきた身体能力の高さが窺えた。

 アックスと大鎌がぶつかり合う刹那、一誠は割って入るような形で和志を体当たりする。虚をつかれた和志は抵抗することなくウィンドアックスを手放しながら弾き飛ばされ、驚きに顔を歪ませた。


「ぐっ……!」

「すまんな、下がってろ」


 一誠は言いながらも、容赦なく亡霊が赤い大鎌で首でも刈り取るように振りぬこうとするが、大鎌の刃の先端を器用にグランドコンバットで受け止める。

 力の加減、バランスを少しでも見誤ればすぐ大鎌に負けてしまう態勢だ。


「野木原 一誠か」


 淡々とした声が一誠に向けられる。それに一誠も答えた。


「よう、久しぶりだな。またお前を狩りにきたぜ」

「……」

「な、なんなんだお前!」


 沈黙する亡霊の代わりに返事をしたのは、いきり立つ和志だった。復讐相手と戦っているときに割って入ってこられたら、こんな反応にもなる。


「それは蒼にでも聞いてくれっよっと!」


 亡霊の大鎌を受け止めていたグランドコンバットが自壊して、瞬時に空気へ溶け込む。魔力結合が崩壊したグランドコンバットに驚きつつも、上半身を通過する大鎌を身を屈めて回避。

 そのまま地面に手を着きながら、右足を亡霊の左足首に高速で蹴り込む。

 しかし亡霊は予期していたのか、後方に大きく放物線を退いて手と足をだらんと重力に従わせる。


「やれやれ、感のよさは変わらずか。しかし、なんだ? 今んは」


 一誠はおちゃらけるようにして、自分の後頭部を右手で叩く。

 魔力の結合が解除されることはさして珍しいことではない。いくら手に握っている間は魔力の結合を維持できるからと言って、魔力結合により強い魔力結合が対すれば最後に残るのは、より強く魔力結合された物体だ。

 力と力のぶつけ合いに負けただけで、どこもおかしなところはない。

 しかし、大鎌を受け止めてみたところ以前の亡霊とほぼ変わらない力の印象を受けた。

 なら、グランドコンバットの魔力結合が想定より早く崩壊したのは亡霊が強くなっているのか、それとも――。


「すまない、ようやく追いついた」


 蒼が現場に追いついて、亡霊を見据えながら一誠と肩を並べる。

 どうにか亡霊に覚えた違和感を、心の片隅に置いてこれたようだ。


「おう、警戒しとけ。今度の亡霊はマジでやばいかもしれねぇ」


 亡霊を警戒しながら蒼を迎え入れる一誠に、歪な形相をした和志が近づいて荒々しく口を開く。


「俺の邪魔しやがって! なんなんだよ!」

「まぁまぁお前さん落ち着けって」


 一誠は聞き分けのない子供でも相手にするように両手を小さく前後に揺らして落ち着かせようとする。

 蒼も一誠に続いて口を開いた。


「そうだ。落ち着いたほうがいい。お前の妹もいる」

「なにっ?」


 和志が振り向いた先に、一心不乱に暗闇に居る和志から目を反らすことなく紗綾は走っていた。その姿に和志は怒りを露にした。


「なんで連れてきやがった!」

「そりゃあの子がお前さんを探してたからだよ」

「こんな危険なところにそんな理由でか!」

「それでも、あの子は来たかったんだろ。妹さんの意思を汲んでやんな」

「理由にならねぇよ!」


 押し問答をしていたとき、しばしの間だけ静寂を保っていた者は言葉を発した。


「なぜ、お前は……そこにいる……?」


 信じられない。そんな口調が、騒音をまき散らしていた蒼たちの中を通り抜ける。それと同時に、亡霊から感じられる気配が殺気が、爆発するように膨らんだ。


「くるぞっ!」


 焦り気味に叫んだのは、一誠だった。亡霊を知っている彼だからこそ、いち早く察知できたのだろう。

 聞くや否や、蒼は本能的な危険も感じて反応するが、和志だけは激情しているせいか、反応が数秒遅れていた。


「っ!」

「ちっ!」

     

 三人は咄嗟に別方向へ前を向いたまま地面を蹴って散るが、亡霊が正面から捉えているのは、反応の遅れた和志ではなく、ひとりだけだった。

 後方へ退こうとする蒼に、亡霊は五十メートル程度の差などないと言わんばかりに詰め寄り、常人では反応できない速度で足を振って、正確に脇腹に足をめり込ませた。


「がっ!」

「蒼っ!」


 なんとか片足で防御しようとしたものの間に合わず、一誠が名前を叫ぶ中で蒼はいともたやすく蹴り飛ばされて、けたたましい騒音をあげながら柱に激突する。

 そこに瞬間移動でもしたのかと見まがうほどの速度で亡霊は接近し、鮮血で染まっているような大鎌を躊躇いもなく横振りした。誰もが蒼は首を抉られると思ってしまうほどに、亡霊の動きは迅速でかつ丁寧だった。

 しかし、蒼は鋭利な大鎌の先端を右袖から発生させたウォーターソードの刃でバランスを取ってなんとか受け止めていた。吹き飛ばされてからの僅かな時間で魔法を唱えて、次に来るであろう一手に一誠がやっていたことを真似て対処していたようだ。


「……なぜ、お前はいる?」


 亡霊は大鎌を受け止められたことにさして驚いておらず、殺気を膨らます前と同じ言葉を口にする。


「先ほども言っていたな……。お前は何を言って――」


 言葉を返しながら攻勢に出ようとフードに隠れていない距離で亡霊の顔を見てしまった蒼は、驚きに目を見開いて口が止まった。

 そこにあったのは、ひたすらの闇で。多少の光があろうとも、すべてを飲み込んでしまいそうな暗闇が亡霊の顔に広がっていた。

 暗喩でもなんでもなく、蒼には亡霊の顔が見えなかった。髪も眉毛も耳も目も鼻も口も顔の輪郭ですら、把握できない。

 ただの暗闇が漫然と広がっているだけ。

 工場が光の差し込まない薄暗さを身に纏っているとはいえ、顔が分からないのは人として異常だ。

 異質。

 違和感。

 言葉にすらできない。

 そうとしか形容することができない、なにか。

 蒼は亡霊の深淵に囚われたように、茫然としていた。


「――!」


 だから、気づかなかった。


「あ――!」


 声が掛けられていることに。


「おいっ! 何ぼーっとしてる! 剣(つるぎ)を見ろ!」


 吸い込まれていた意識が亡霊の顔から戻り、蒼は反射的に右袖から発生させているウォーターソードを見た。

 大鎌の鋭利な先端をバランスだけで受け止めている刃が、ウォーターソードを侵食するように貫こうとしている。

 意識が離れていたのは、ほんの数秒だ。

 円卓の騎士団では、戦場を担う最高峰の兵士としてランスロット卿の立場にいた蒼が練った魔力の塊を突破するのに、たったの数秒。並の兵士ならば、突破すら叶わない城壁を意とも容易く突破しようとしている。

 力だけでは証明できない異常に違いなかった。

 対応が困難でも蒼は魔力結合が解かれる瞬間に動いて反撃しようとしたが、亡霊が大鎌を軽やかに下げるのと同時に鼓膜を振動させる声が響いた。


「うおあああぁぁぁぁ――!」


 和志は奇声に近い叫び声をあげながら亡霊に接近し、ウィンドアックスを振り下ろす。一誠に弾き飛ばされた際に飛んだものを回収していた。

 どうやら亡霊は和志の接近に気づいて、大鎌を下げたらしい。


「……」


 亡霊はその攻撃を引っ込めた大鎌で弾くこともなく、悠々と身体の移動だけで回避していく。

 それでも和志は執拗に己の武器を、心を振り下ろし、振り回し続ける。


「くっそ! くそ! お前は俺が倒さなきゃならねぇんだ! 俺から全部奪ったお前を! 誰にも邪魔はさせねぇ!」


 怒りに任せた無秩序な言葉に亡霊は反応せず、ひたすらに空しい。

 そこに、ようやく紗綾が現場に追いつく。

 和志との距離はおよそ二十五メートルほどだ。

 顔は汗にまみれ、息もおぼついていない。

 それでも間髪入れずに精一杯、自分の言葉を和志に伝えようとする。一心に。


「お兄ちゃん、もうやめて! 亡霊なんて相手にしなくていいじゃない!」


 妹の声があっても、和志は止まらない。


「やめるわけにはいかねぇ……いかねぇんだよ! 俺たちのすべてを奪っていった存在なんだぞ! そんな存在、生かしておけるかよ!」

「……あれが拠り所か」


 瞬間、亡霊が蒼を蹴り飛ばしたときと同じように気配と殺気を膨らませていた。

 それが誰に向けられたものなのか、蒼と一誠は直観的に把握する。

 普段であれば和志も思い至っただろうに、和志は亡霊と対峙することを優先するあまり反応が遅れて気づかなかった。


「藤幹 紗綾、逃げろ!」

「えっ……?」


 蒼が珍しく焦りを含みながら言うが、紗綾は風よりも早く変化する状況についていけなかった。


「骸の灯、グランドハンド!」


 一誠の詠唱と同時に、和志の攻撃の隙間を見て亡霊が動く。

 亡霊が小さく地面を蹴ると滑空でもするかのように次の瞬間には、紗綾の数歩先に現れていた。

 

「あっ……」


 紗綾が発せたのは、その程度のものだった。

 大鎌を振りやすいように右手で短く持った亡霊の横凪ぎが紗綾に迫る。

 和志は、その光景を必死に目で追うことしかできなかった。

 理不尽に思えた。

 自分から何もかもを奪っていったのに、これ以上奪われるのは。


「これ以上俺の前から誰も奪わせねぇぞ、亡霊」

「きゃっ!」

 

 声と共に紗綾を突き飛ばして現れたのは、一誠だった。紗綾は一誠に体当たりされる形で飛ばされて、尻餅をつく。

 一誠はグランドハンドで左手を硬質で黄土色の物体に守らせて、容赦なく迫る大鎌の刃を躊躇なく掴む――が、大鎌の進行を阻害するグランドハンドはたったの数秒で自壊を始めて、皮膚に鋭い痛みと高熱を直接感じて顔が歪む。

 どうやらあの大鎌は表面に熱を纏っているらしく、炎の基礎魔法を使って詠唱されているものらしかった。


「やっぱりか亡霊、お前が今回手に入れた力は――」


 一誠が二回、蒼が一回と続けて魔力で作った武器が数秒も持たずに自壊を始めている。二人とも魔力に関しては一般の人間からは想像もつかないほど自信があったはずだ。

 それなのに、魔力結合はありえない速度で解除された。三度も同じことがあれば、一誠の知る亡霊とは違って"魔法固有"を持っていると考えるのが自然だった。


「離れなさい!」


 一誠の言葉は、工場の中で突然響き渡った高く凛とした声にかき消された。


「――!」


 それが自分に向けられた言葉だと察した一誠は大鎌を握った手を放し、尻餅をついたままの紗綾を右手で抱え上げて正面を向いたまま後方へ下がる。

 亡霊は一誠の大鎌を抑え込もうとする力をそれを上回る力で圧倒しようとしていたために、大鎌を止めて後方へ下がる一誠を追撃するのに僅かな隙が生まれた。

 そこに、一誠へ命令を下した高く凛とした声が更に響く!


「蒼、和志を回収。気を失わせて亡霊を見ずに全員撤退。灯の光! フラッシュ!」


 指と指を鳴らす乾いた音と同時に亡霊の前に光が突如集まり、次の瞬間には破裂した。

 光属性の放出系応用魔法、フラッシュは、闇に発生した光は闇に慣れた目を焼くようにするには十分すぎるもので、これを単純に回避するには目を瞑らなければならない。

 亡霊ですらも回復には数秒の時間は必要だろう。


「素は風、アクセル」


 背中越しからでもわかるほどの光で亡霊がほんの少し止まっている間に、蒼は魔法を使って亡霊を追う和志に接近し、迷いなく腹に勢いを乗せた拳を食らわせた。


「ぐっあ……おま……え……」


 眠るように気を失って崩れ落ちそうになる和志を右肩に担ぎ上げて、蒼は凛とした言葉に命令された通り、工場から撤退した。


 亡霊の前で発生していた眩い光が収まった頃には人の気配はなくなっており、亡霊だけが暗闇の工場に取り残されていた。


 第十話「一亡十色」終わり

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る