第34話 バタフライハント その5
何度か警邏兵の交代を見送ったところで夜の帳が下りた。
すっかり夜が辺りを包み、城壁沿いの通用路は松明の炎で力強く照っていた。
「こんなところをひとりで歩くこと自体勇気が必要ね」
揺らめく影を延ばしてケイティは松明で辺りを照らす。
「怖いと思うからだ。強く心を持てば怖くはない」
戦う前から挫けそうな心持ちのケイティを励ますでもなく、カティアは背中を押して前へ前へと強引に進ませていく。
まるでカブト虫がよく取れる木に案内しようとするガキ大将のように、自分が襲われたポイントへと速足で歩いていく。
暗闇を物ともせず、赤い鎧はより煌々と彩度を増して炎を映している。
さすが白羊宮である、一人前の羊の頭として夜を裂く。
「ここだ。」
止まったのは予想していたような地点ではなかった。
狭くなった裏路地のような場所を想像していたが、現在地は360度見通せるような広場であった。
ちょうど真ん中に位置するふたり、不意打ちで迫られたとしても隠れる場所はない。
「本当に、ここ?」
再度確認した。
首肯するカティアは無表情だった。
ケイティはもう一度周囲を見渡す。
事の重大さが、彼女に重くのしかかった。
闇が一段と濃く、コンデンスミルクのような粘っこさになった気がしたが、それは気のせいだった。
改めて確認すると、その場にいたのはわずか5分ほど。
結局襲撃はなかった。
日没探し にわか雨 @hikari_9
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