第31話 バタフライハント その2


「ったく、長がたくさんいるってのはわかんだろ? 船頭多くして船山登るじゃあ烏合の衆になって陛下のご機嫌損ねるだけだっての。」

イルフは悪態を隠すこともなく2人に対し強い視線を送った。怒りに近い感情だ。

ケイティはその真意がわからないで口を噤んでいる。

だがアルフは気の長い性格ではない。

青筋を立てて黙っていたが、既に切れた。

「うるせえんだよてめえは。オレ様は好きなようにやるぜ。ようは犯人捕まえりゃいいんだ、小賢しいこと言ってんじゃねえ。」

鎧を脱いでも赤に統一した姿のアルフは階下へと降っていった。

止めることもなく、やれやれ、とため息と呆れを吐き出したイルフは残ったケイティに向いた。

「君も行くなら行くがいい。」

行き場のない怒りを彼女に向けた。

逆にこの場は去った方が収まるのではないだろうか、ケイティは少し黙考した後、ひとつの質問だけを彼にすることにした。

変わらず睨みを利かせるイルフに負けぬよう目に力を入れた。

「イルフは今回の件をどう捉えていますか?」

ほう、と軽く漏らすと表情はいくらか緩んだ。

手で滑らかな金髪をかき上げる。

アルフの意見は間違っていない、団結力を活かしてはいないがもっとも単純な作戦。

元凶が去れば解決、明快だ。

しかし彼はそれを良しとしていない。

つまり。

「この事件はまだ何もわかっていないんですよね。」

「その通りだ。始まっていないんだ。」

ケイティの言葉に言下した。

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