第27話 皇帝陛下の思惑


「竜が討伐されるなど、一体何が起きたと言うのだ? 克明に伝えよ。」

「はっ。報告します。討伐にあたりケイティ=ミューズは少数で挑みました。その数約30名。攻撃において劣勢は陛下の読み通りでした。脆弱な攻撃力では竜鱗を貫くに届きませんでひた。しかし竜はケイティ=ミューズのみを執拗に狙い、他の兵に対して攻撃を行っておりません。兵力が減ることのないまま戦闘は継続。」

「待て。」

皇帝は自らの玉座で足を組み替える。

「続けろ。」

「続けます。ケイティ=ミューズは短剣で応戦するも危機に陥りました。そこに残っていた兵全員が加わり総勢200名での一斉射撃により深手を負った竜は地面に落ち、そのまま拘束されました。」

以上です。玉座の間には沈黙が訪れた。

「平民出が力を握る構図がこれほど悪影響となろうとはな。失態だ。」

こつこつと指で玉座を叩く。

苛立ちの表れであることを何度も足を運んでいる彼は知っていた。

「新任闘技会でも1位。あのカティア=ナットリーから一矢報いたことは高く評価したいのだが。特別な武器ではなく、たかだか糸やロープで3戦すべてを勝ち抜いたとあれば。貴族は平民の力でも崩すことができる、そう証明した。見せつけた……!」

壊れんばかりに揺れる。

静寂の部屋に破壊音が響き渡る。

折れたのは玉座ではなく、皇帝の骨であった。

青く変色していく皮膚を心配することもなく、首部をうな垂れたまま動かない。

命以外では動かない服従の証なのである。

「これから私がどう行動するのか、指針のみ示しておく。臨機応変に対応せよ。お前の行動を可能な限り弁護するとしよう。」

「仰せのままに。」

皇帝陛下は苦々しい表情を一転、これから帝国に流れる未来の光明を見てか、満面の笑みで出ていく隊長を見送った。

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