第26話 染めるは赤 染まるも赤 その4
目を覚ましたのは露営をした天幕の中だった。
自分の寝床にいた。
なにもなかったかのように。
「っつ……!」
痛みは現実を引き戻してきた。
唇の噛んだ傷、腹部から胸部にかけての骨折。
竜から受けた攻撃の爪痕がしっかりと刻まれていた。
「失礼します、副長に言われ果物を持って参りました。」
「ありがとう。小腹が空いていたんだ……いてて。」
林檎が地面に落ちた。
医療隊と思われる女性隊員は目と口を大きく開き、カゴから次々と果物を落としていく。
「お、おいおい……?」
「隊長がお目覚めになられたわー!!」
いまの時間はわからないが、ケイティはこんな大きな声を出しては迷惑になると窘めようとした。
その声を聞くなり外からは人の声が殺到し、瞬く間に祭りを思わせる声量まで発展してしまった。
ケイティは呆れながら、痛む身体を抑えて叫ぶ。
「時間を考えて行動しろ! あと先ほどの医療隊員は私のところまで来い。肩を貸せ!」
再び上がる歓声にケイティはお説教をしてやるつもりだった。
時間といい、後からの増援といい。
人の命令をなんだと思っているのか。
だが、誰1人死んでいないことを考えれば些細な命令違反などどうでもいいのだ。
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