第22話 遠征疲れ
「今日はこの地域に宿営する。周囲の偵察を行ったものは警備のものと連携し、警戒を厳にせよ。他の者は各隊の区分に基づき天幕を展張。疑問等あれば長を通じて私まで来い。なお、飲酒は可とする。以上。」
「つっかれたぁ……。」
行軍と言う経験がないため徒歩で1日挑んでみたが、疲労困憊だった。
軽い荷物でもこれだけ疲れたというのに、水を背負っているものは素晴らしい。
慣れはあるだろうが、自分のできないことがどんなことか、下士官が行うことでの当たり前のラインなど知っておかなければならないだろう。
とりあえず、今日のところは休みたい。
ケイティが思っていても、実際は各隊から調整や明日の行動計画があるためすぐには休めないが。
隊員たちが寝静まった後、ケイティは外に出て星を見た。
四季でいういまは春にあたる。
旧世界では星の配置で様々なものが描かれ、見ることができたという。
そしてそれぞれに物語があったらしい。
不穏な気持ちが晴れない。
とても不吉な事が起こる、そんな気がするのだ。
「ここから大体10キロ地点だな。」
「うわ、サンドレンいきなり出てこないで。」
どす、と腹部に軽く拳を沈める。
意外にもと言えば失礼だが、身体があることにケイティは安心した。
「で、なんだって? 10キロ先に?」
「有志を集い、少数で行くことを勧める。魔法は必須だ、達者な者は少ないとは思うが連れだった方がいいだろう。俺だったら15人くらいで向かう。」
サンドレンは何処か遠くを見ている。
ケイティから目を反らすように。
「私はひとりで平原の真ん中にきて、独り言を言っただけだ。協力などしていないし、支援行為でもない。」
「サンドレン……。」
ここで笑顔のひとつがあれば、優しい男となるのだろう。
しかし彼は笑わない。
あえて後ろめたい事があると伝えているようで、ケイティに歩み寄らない。
「そうだ。俺がこの平原に来たとき貴重な魔法具を落としてしまったんだ。誰か拾ってくれないかな……。」
サンドレンは光ではなく、闇の中に消えていった。
彼が何を思うのか、ケイティにはまったくわからなかった。
平原に立つ彼女はひとりだった。
何もできないひとりの女だった。
ふと、足元に何かが落ちていることに気付く。
サンドレンが落とした物に違いない。
そしてこれが明日の相手……。
戦慄を隠せないケイティだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます