第16話 最終戦前


目覚めたのは夕頃だった。

試合が終わってから記憶がないケイティは時計を見て焦った。

まだ次の試合がある。

ベッドの脇を見るとそこには知らない女の人がいて、医療班の人だと思うことで驚きを抑えた。

「看病してくれてありがとうございます。試合はどうなりました?」

女性は無言だった。

よく見ると100歩譲っても医療班の人ではない。

鎧を着ている時点で違う。

「アイリスディーナ=サドム=レイゼンド。」

短く女性はそう言った。

不機嫌そうに脚を組んでいて……その姿に見覚えがあった。

アイリスディーナは次の対戦相手で、この女性は既にあったことがある。

そう、化粧台に置いてある仮面。

「…………………………か、カティア=ナットリー?!」

「そうだ。」

隠し立てすることもなく、言った。

「女の人だったんだ……えっと、復讐ですか?」

焦りからとんでもない質問をしてしまった。

「そうだ。」

そう言うと斧をベッドの下から抜き取り、腹の辺りに構える。

もう駄目だと目を閉じる。

「うそだ。」

振り上げたところでそう告げると、カティアはベッドに座り変える。

「お前の戦いは正直だ。負けて悔いはない。そしてお前は秘密を守るだろう。だから顔を見せた。」

気付かなかったが、腕には千里眼防止の装飾品がついている。

よほど信頼されているのだろうか。

カティアがおもむろに仮面を付けた。

ケイティも新たな来客の気配を感じ取った。


「よくぞ生きていた。」

魔方陣が描かれ、光の中から13の月が現れた。

「死ぬような戦いじゃない。むしろあなたのせいで死にかけた!」

彼の姿が左腕の麻痺を思い出させた。

そしてカティア戦で盾にしたため重傷を負ったこと。

しかし、どんなに見ても腕は無傷だった。

なるほど、カティアは13の月を見る。

「サンドレン、お前……。」

「他言は無用だよ。僕の秘密を話すなら対価として君の秘密を話す。」

牽制を口にすると、再び魔方陣が現れた。

「ちょっと待って、まだ聞きたいことがある。いったい誰なのあなたは? 私は名前も、何も知らない。」

まっすぐな瞳でサンドレンを見た。

「サンドレン、いま聞いた通りの名前だ。そして、みんなの嫌われ者さ。」

光になり、サンドレンは消えた。

それを見送り、カティアも部屋を出る。

「試合はシード、勝ち抜いている。次は決勝……1時間以内には始まるだろう。」

ドアが閉まった。

部屋は元どおり、静かになった。

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