第10話 13の月


「赤よりも汗に塗れたわ。」

アルフ=アクベンスの2つ切り裂き魔(レッドペイント)と呼ばれている理由がわかったが、ケイティは女性である。

腕の装飾品が防いだお陰で切創も浅く、回復魔法で治癒した。

命を落とす戦ではないが、死が近いだけ綺麗な服装をしたいものである。

初戦を勝ち抜いたケイティはシャツを着替え、トーナメント表を見るために会場へと向かった。


「まるで隕石のような圧力です。カティア選手の勝利です!」

ちょうど試合が終わり、ポーゴの双星モノルフ=ポーゴが地に伏していた。

壁を用いたらしく、焦げになった部分が幾つか見られた。

カティアも無傷ではないようだが、関係ないと言わんばかりに去っていく。

トーナメントの黒い勝ち線が伸び、2回戦のメンバーが揃う。

カティア=ナットリーと2回戦を戦うのは、ケイティ=ミューズ。

「パワーファイターとあたる運命なのかな……。」

彼女は小さいながら因縁があったため、レオルネントとあたるような気がしていた。

しかし彼は既に負けていた。

残った6名には入っていない。

カティア=ナットリー。

アイリスディーナ=サドム=レイゼンド。

イルフ=ポーゴ。

アネット=バルザーン。

タクタス=オーバント。

私。

「見事だった。」

突如隣に現れたのは、白い外套に身を包んだ男だった。

「だ、誰、です?」

ここは選手のみが来ることの許された観覧席だ。

まだ全員の姿を見ていないにしても、こんな異様な空気を放った人物はいただろうか。

黒いインナーを着ていて、上げた右手から覗く身体は闇のように黒い。

「13の月だ。」

ケイティの怪我していた腕を掴む。

はっ、とその手を振り払う。

「何するの!」

男は少し笑ったように見えた。

踵を返し、歩き去る。

掴まれた腕を伸ばそうとすると、違和を感じる。

麻痺しているようだった。

男は既にいなかった。

ドラが鳴る。

2回戦は、目の前だ。

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