第8話 処女×巨蟹 その2


観客が一斉に湧く。

捉えたように見えた鉤爪をケイティは予測し、後方に躱していた。

無論、格闘技術の基礎で習っている通り、後方へ躱すことは相手の追撃が待っているため有効な手段ではなく悪手とされる。

大振りの左の次は右が。

その次は左がくるだろう。

アルフも単純とはわかっているはずだが、あの素早い攻撃は相手の二の手を防ぐことを視野においている。

つまり、突っ込んでいれば勝てる。

ケイティは追い込まれないよう渦を描くよう後退するが、爪の振る範囲を調整することでアルフは相手の行く先を狭めていく。

「うらァ!」

ケイティが投げた暗器も軽々弾き、その左腕に浅い切創ができる。

「圧倒的です! あの素早い爪はさながら虎の如く! 背には鉄格子の扉……絶体絶命か、ケイティ選手!」

アルフの背中越しに見える観客は一方的な試合運びに興奮している。

「お嬢ちゃんよ、ギブアップするならいまのうちだぜ。もっとも、言う機会を与える気はねーんだが、な!」

猛攻が再開する。

銀色の爪が刃を向けて迫ってくる。

左右両側から死が迫る。

「刻んでやるぜ! 塗り潰してやるぜ!」

叫びと共に、鉤爪は交差した。

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