【11-08】ぷるるるぷるるる
起きた。
「ふわぁー」
最近の僕はあくびばかりしている気がする。すべて時差ボケが悪いのだ。
昨日はあの後、根掘り葉掘り聞かれて結局解放されたのは二時前だった。僕としても話すことは少なかった。だって、選手としての参加じゃないから。話の内容もほとんどが飛行機とホテルの話だった。あとは少しの大会中の裏側の話で解放された。実際にどう指揮されているのかって話はみんな気になっていたようで状況の話をした。拓郎が僕がリンカーを持っていると口を滑らせたせいでまた捕まったけど。
リンカーについてはVRデバイスのスペックが向上したとしか伝えなかった。ARの機能があるって言っても彼らには僕のリンカーは使えない。ARグラスを回して見せても良かったけどそんな自慢する必要もない。いずれリンカーが発売されたらみんなが体感できることだ。
リンカーの生産状況は全く分からないけど生徒証みたいにVR高校でも配布されんじゃないかと僕は密かに思っている。ついでにコネクターとかいう今のヘッドマウントデバイスの後継機も導入してほしいな。いずれにせよ。リンカーを僕が持っていることで問題が起こるのは嫌だ。
昨夜の僕がたしかに置いたはずのリンカーを机の上から手に取る。充電はできている。それと昨日連絡した叔父さんと矢澤コーチの両方から返信が来ている。二人とも電話が欲しいって書いてある。まだ午前中だから取り敢えず電話してみよう。
イヤホンを耳に付ける。
「黒川、叔父さんに電話」
『ぷるるるぷるるる』
それまだやるのか。
『もしもし。和泉です』
「瑠太です」
『瑠太君か。相談があるんだったな。少し待っていてくれ』
「忙しいならまた後で掛けなおすよ?」
『いや、もう終わった。それでなにを相談したのかな?』
僕は昨日の話をした。
『すると、瑠太君に対してスポンサー契約をしたいと申し出があってそれを保留しているということか。うん。いい判断だったと思うよ』
「うん。それで
『よし。任せてくれ。私がすべて滞りなく済ませよう。それにしても、瑠太君がスポンサー契約か。強化選手に選ばれたってニュースは見たけど、そうか』
「まだ詳しい日程は決まってないから日程が決まったら電話するよ」
『いや、私から連絡する。剛田美樹さんの会社ということは『ミキオリジナル』でいいのかな?』
『ミキオリジナル』は美樹さんの会社の名前だ。設立自体は十年以上前に開いた小さなファッションブランドらしい。その時の名前を今でも使っていると聞いたことがある。
「たぶん。確認してみる」
『分かった。確認が取れたら連絡をくれ。こういう話は弁護士として挨拶しておかないとこっちまで話が入ってこなくなるからね』
叔父さんとはそこから少し世間話をして電話を切った。叔父さんの名前は和泉晴之。叔父さんは母方の親戚で、二人いる叔父さんの内の一人だ。弁護士をしている。叔父さんは弁護士として小さな事務所を持っている。母の実家はひいおばあちゃんがすごい人だったらしくそこからは三世代なんらかの形で司法に携わっている。ちなみに、もう一人いる叔父さんは刑事だ。
僕は矢澤コーチに電話する前にカズさんに電話することにした。叔父さんが連絡をするのも早い方がいいと思ったからだ。
「黒川、カズさんに電話」
『ぷるるるぷるるる』
『もしもし。瑠太君? 何かあった?』
「おはようございます。昨日のスポンサーの件で少し聞きたいことがあって。今いいですか?」
『おお。もちろんいいよ。なんでも聞いて?』
「実は親戚に弁護士をしている人が居て、その人に相談したら契約に立ち会ってくれることになりまして、相手の企業の名前が知りたいとのことだったんですけど、美樹さんの会社ってことは『ミキオリジナル』でいいんですか?」
『うん。そうだね。それにしても弁護士の親戚がいるなんて瑠太君の家はすごいね』
「いえ。じゃあ、ミキオリジナルで伝えておきます。僕から聞きたいことはこれだけです」
『そっか。あ、今日もAWで集まろうと思うんだけどいつぐらいが開いてるかな?』
「夏休みなんで大抵の時間は空いてます」
『そっか。じゃあ、二十一時にしようか。場所は昨日と同じ冒険者ギルドで』
「分かりました」
『じゃ、またね』
カズさんとの電話が切れた。今日も集まるのか。昨日の感じだと冒険者ギルドが人ですごいことになりそうだから少し早めに行ったほうがいいかもしれないな。洗濯しないといけないけど夕食を早めに食べるつもりで今日は過ごそう。
叔父さんにミキオリジナルで大丈夫だったとメールを送ってから矢澤コーチに連絡する。
「黒川、矢澤コーチに電話」
『ぷるるるぷるるる』
『もしもし』
「矢澤コーチですか?」
『はい。瑠太君、また問題?』
「いえ。実は昨日カズさんからスポンサーの話があって。そちらに話行ってますか?」
『いや、来てなくて』
「僕の状況っていまいちわからなくて話を通しておこうと思って連絡しました」
『そっか。基本的にスポンサー契約に関しては僕らは関与しないから気にしなくていいよ。瑠太君の場合は学校の方が関与することはあるかな』
「所属が学校になってるってのは聞きました」
『うん。VR高校の生徒はすべて学校に所属していることになるね。もしスポンサー契約が決まったらまた教えて。こちらでもスポンサーがいる前提で考えることがあるから』
「分かりました。失礼します」
僕はリンカーを机に置く。今日すべき連絡はすべて終わった。僕は後ろに倒れて寝転がる。強化選手にVRオリンピックのスタッフ、そして、スポンサー契約。ここ半年で僕の経歴はすごいことになってるよね。一つ物語が書けそうな勢いだ。
僕はしばらくぼーっとした後、洗濯物を袋に入れて部屋を出た。そういえば朝食まだだった。今日の朝食はなにかな。
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遅い朝食はパンを適当に。トーストはせず置かれていたジャムで食べた。
朝食後は洗濯をしながらすることもないからちょっと勉強。リンカーに入ってた単語帳をペラペラと。最近なにかと忙しく過ごしていたからぼーっと作業をするのも久しぶりな気がする。
昼食後は自室に戻って、リンカーでギルドシステムについて調べた。結果、たいした情報はなかった。そりゃそうだ。アプデ後にギルドが設立できた報告がないからだ。仕方なしと情報を見流していくと『AW速報情報提供場』に王都の冒険者ギルドにカズさんたち三人が現れたと書かれていた。さりげなく僕のことも書かれているけど、黒づくめとしか書かれていないからセーフだよね。マリアさんに感謝だね。
彼ら三人が集まることに何かしらのイベントを予感している人がいるみたいだ。それにしても、彼ら三人が集まるだけでこんな噂が立つとか、名前の力が強すぎるよ。
ネットで役に立ちそうな情報の収集に区切りがついたのがおやつ時。ずっとAWをするのも疲れるけどそろそろいいかな。七時ぐらいに一回ログアウトするつもりでいこう。いや、もう少し早い方がいいか。僕は部屋を出てVRルームに向かった。
VRルームに着いた僕は自身のヘッドマウントデバイスに座って黒川に予定を伝える。
「黒川。今からログインするけど、早めに夕食を食べたいから六時ぐらいに知らせて」
『かしこまりました』
そういえば、昨日カズさんがAW内からパーソナルAIらしき者にメールを送るように命令していたな。それが実際に出来るのであれば三倍の加速がされているAW内でも能動的に現実にいるフレンドと待ち合わせが出来る。
「黒川。AW内からメールを送ることってできる?」
『はい。AW内でのメールの操作は可能です』
「そっか。じゃあ、行ってくる」
これは楽だな。どんどん使っていこう。
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