ノコリ10センチの距離

アイ

Episode①

寒かった冬も終わり春の終わりも見えてきた4月の下旬。


今日も相変わらず君への気持ちは変わらないまま、伝えられないまま1日がやってきた。


「行ってきまーすっ」

井上 理央、高校2年生。

部活はバスケ部に入ってますっっ。

男子バスケ部はやっぱり強くて私もまだまだ負けていられないって思わされます。


「おぉー理央ちゃんおはー!」


「あかりちゃんっ!おはよ!」


早坂 あかりちゃん。男子とでも気軽に話せる、いわば皆から好かれやすい女の子。

部活は私と一緒!


「ああ〜、待ってえええ…!」


「陽太は相変わらず遅いね〜」


「理央だけには言われたくねえー」



小牧 陽太。実はあかりちゃんの彼氏でもしたりする。


「ちょっと陽ちゃん、ネクタイ歪みすぎー」


「うぉっ、マジだ。急いで来たかんな〜。あかり直して。」


「…っ、仕方ないなあ〜。」


「見てられませんので先、行っときます!」


朝からラブラブでいいものを見てしまった。

…私もあんな風にラブラブ出来る日が来るのかなー。


「…央…、理央…!」


「…、あ、尚央」


「お前ぜんぜん気づいて無かったじゃん!3回も呼んだのにさー」


「ごめんごめん。ちょっと考え事してて。」


「なに?まさか好きな人の事でも考えてた?」


「…な!ち、ちが…」


「理央に好きな人とかいるわけねーもんなあ!笑」


「…尚央の寝癖ヤロウ!!」


「あ、おいちょ待てよー!」



尚央の馬鹿。私にだって好きな人ぐらいいるもん。気づけ、アホ。


実は私の好きな人って言うのは、さっきの男の子。望月 尚央。高校1年生の時から仲が良くて最高の友達だと思ってた、最近までは。

でも、それが段々友達だと思えなくなってきて。いわゆる絶賛片想い中ってわけ。

仲が良すぎて友達という壁を超えられないでいる。



「聞いてよお、あかりちゃーん。」


「ん?なになに?」


「尚央がね、「理央に好きな人とかいるわけねーもんなあ」って言われたー。」


「は?もっちーが?」


「…うん。」


「もっちーのクソ野郎め!殴ってやる!」


「あ、あかりちゃん!そんなのいいからっ」


「でもー。」


「いいのいいの。」


「もっちーめ。後で覚えときなー!」


「私、その時泣きそうになったよ。」


「そりゃあなるよー!よく我慢したね!偉い偉い!」


「…それにね私言いそうになっちゃったの。」


「え?」


「尚央の事が好きなんだよバーカって。」


「理央ちゃん…。」


「この気持ちを素直に言ったとしたらこの関係が崩れるかもしれないって思ったから。今も変わらず友達のまんまでいるの。」


「……」


「…なーんちゃってね!あ!私、数学のノート出しに行かないと行けないんだった!ちょっと行ってくる!」


「あ、理央ちゃん…!」



分かってる。友達のままでいないといけないって。でも私もう我慢の限界なんだよ?早く気づいてよ。


「あ、」


「…尚央…。」

うわっ、今一番会いたくなかったのに!


「…その、さっきは悪かったな。」


「あ、ううん。別にもう気にしてないよ。」


「そ、そっか。」


「…。」


「…。」


やばい。気まずすぎる。何か話題出さなきゃ…。


「そ、その、尚央って好きな人とかいるの?」


わ、私の馬鹿ああああ!!なに聞いてるのよ!


「あ、いや別に、えっと…」


「いるよ。」


「え?」


「好きなやついるよ。」



つづく


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