旅立ち ⑤ ~第一部・完~


「ライトはチーム・クラウドに所属することになったわ。目的は、彼の左目の治療のためよ」


 腕組みをしたルミナの発言に、ルナシスメンバーはただただ言葉を失った。


「皆の気持ちも分かるわ。一緒に戦ってきたしね……。だけど、彼なりに、負担になりたくないっていう気持ちも、あったみたいだから……」


 語るルミナの言葉もまともに頭に入らないでいるアイカは、ただ立ち尽くしていた。


「ライトさんと、もっと話してみたかったな……」

「そうだよな、ユララムは爺さんの時の姿でしか、ライトとまともに関わってなかたもんなっ」


 マイキーは落ち込むユララムの肩に手をのせる。


 そんな、ライト……。


「アイカ……?」


 リーナは、歩き出したアイカの腕に触れるが、気にも留めない様子ですり抜け、進んでいく。


「アイカちゃん……」

「アイカさん……あの、えっと、どうして元気ないんですか?」


 マイキーがリーナとマイキーを見る。


「まじ!?」

「わっかんないの!? 若いわねー……」


「す、すみません……」


 同時に激しくつっこまれ、たじたじになるユララムだった。



・・・


 気がつけば、アイカは自室前に立った途端、うずくまってしまった。いくつもの涙が溢れては、頬を伝い、足元へぽたりと落ちていく。


 ライト――。

 どうして、黙って出ていってしまったの。


 いつも、ライトに助けられていたのに。


「アイカ!」


 ライトが困ってるなら、力になりたかったのに――。


「アイカってば!」

「……っ、リーナ?」


 リーナに肩を捕まれ、はっと我に帰る。


「絶対、だいじょうぶじゃないよねって思ってさ……ごめん、きちゃって」

「ううん……リーナ……」


 リーナにもたれかかるようにして力が抜けていく。


「どうしよう、私、私……」

「アイカ……。大丈夫だから……」

「何もしてあげられなかった……!!」

「うん、あたしもだよ。ううん、違うな。あたし達も、だよ。アイカ――」


 リーナが抱きしめてくれる力が強くなる……。


 時が戻ればいいのに――。

 シードラゴン戦の時あのときに、全て――!


 私は初めてこの世界に来て、声をあげて泣いてしまった――。



 そして、リーナに抱きしめられていたはずの感覚が、ふと無くなった。


 アイカは突然無くなった感覚に目を開ける。


 そこは、久々に見る、ギャラクシー・ウォーの窓口であった。


 ゼロは、何事もなかったかのようにアイカを見つめ、対応する。


「第1章、無事に終了ということで、お疲れ様です」

「なに、それ……そんな、簡単に……」

「いかがでしたか? お疲れの様なら、退会を選んでいただいても……」


「退……会……」


 アイカは、ルナシス・メンバーの顔が思いうかぶ。


 ここに来て、恐怖の体験ばかりだったけれど。

 初めての仲間と出会った――。


 心から笑って、心から泣いた。

 本当に、久しぶりに――。


 皆はどうするのかな。

 ライトは――。もしかすると、帰ってしまっているかもしれない。

 だけど、帰ってしまえば、二度と会えないという気もしてならなかった。


 ルナシス・メンバーとも、二度と会えないなんて。


 ルミナ、リーナ、マイキー、ユララム……


 ライト――。


 私は皆と会えなくなることを選ぶの――?


「途中退会の場合は、ここの記憶がなくなりますが、それでもよければ……」


 それは、嫌――!


「続け! ……ます」


 勢いに任せて言ってしまったかもしれない。

 続けることを、いつか後悔するかもしれない。


 皆と、まだ一緒に居たい。

 それに、ライトはギャラクシー・ウォーに居続けることを、選んでいるかもしれない――。


 その希望を、頼りに――。


・・・



 時は、少しさかのぼる。



 ギャラクシー・ウォーの窓口は、何次元にもわたって存在する。


「では、よい旅を――」


 ゼロは、にこやかにこの世界にたどり着いたキャラクターを随時案内し、そして転送する。 


 勿論、ろくに装備をさせないまま、レイドボス戦へと放り込むのが彼の楽しみ方だ。


「ここは、どこなんですか――!?」


 一人の男は、ギャラクシー・ウォーに転送された――。



 全ての時の歯車は狂い出していた。

 いや、既に壊れていた歯車がやっと

 一つになろうと動きだしたのかもしれない――。

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