旅立ち ④ ~第一部・完~
ルミナの部屋は艦長室とは違い、どこかルミナの女性らしさというか、もっと可愛らしい女の子らしさというか。ぬいぐるみが幾つか室内にアクセントとして置かれていることでそう感じられた。
「まさか、この流れがまた繰り返されるなんて思わなかったわ」
「まぁ……今回の場合はもっと重要かもしれねぇけどな」
ルミナはアンティークのデザインをした机に、思い切り両腕で頬杖をついていた。ケイは腕組みをし、自らの思い出を巡らせた後、ルミナへ柔らかい表情を向ける。
「そう、ね。確かに今回は異例すぎるわ。どうして彼の目、治らなかったのかしらね……」
「そりゃぁ……アイツと、
ルミナは大きくため息をついた。
「これからのチームの戦力にどれだけ影響が出るか……考えるだけで私、失恋したような気持ちになるわ」
「……俺は間違ってもルミナを振ってないからな!? そして俺も振られてないよな!」
「もーう!! 何の話よ、まったくもう……」
ルミナは顔を手で覆うと大きく息を吐き出した。
「あたし達の関係は、愛の気持ちよりもそれ以上だって信じてる。……ケイ、頼んだわよ」
「その言葉、マジ元気でた。おう、任せとけっ」
ケイとルミナは唇を重ねた後、はにかんだ笑顔で互いに見つめあった。
・・・
――君の瞳の傷へは呪を掛けられているようだ――
ライトは、左目の眼帯に触れる。ライトの自室は、眠る前ということもあり、部屋の明かりは付けていない。ベッドに備え付けられている、小さなランプの明かりだけが灯る。
このままでは、心配されるどころか、本当に守られっぱなしになる……。
ライトが通信機を取り出し、コマンドを開く。戦いの記録、そして、『章』の欄を開いた。
『第一章 まもなく終了』
この世界にまだ居続けるか、降りるかの選択が、すぐそこまで来ている――。
現実世界に戻っても、俺は――。
部屋に、ブザーの音が鳴り、同時に声がする。
『ライトすまねぇ、ケイだ。話があっから、開けてくれ』
ライトは意外な人物の訪問に驚いて立ち上がり、扉を開けた。
「あれからルミナと話したんだが……まぁ、よろしくな、ライト」
「え? どういう事、なんだ?」
「俺達クラウドに来いってこった。ま、おたくの艦長命令だと思ってくれ」
「そう……か。わかった……こちらこそ、世話になります」
「お前の目、ちゃちゃっと治しに行こうぜ。出発は……そうだな、一眠りした後でいいぜ。挨拶とか、しときたいだろ?」
挨拶、と聞いて一番にアイカが思い浮かぶ。今の自分の状態を見続けさせるのは正直億劫だった。それに、アイカへの自分の気持ちに気がついてしまった以上、別れを告げることは億劫を通り越して、辛かった。
「いや、いい。大丈夫だ。
「そうか。わかった。じゃ、また後で来るぜ」
ライトの決意に、ケイの中での思い出がふと蘇り、苦笑した。
・・・
手強い魔物たちに囲まれて、右往左往する私。
強い疾風に襲われた後、私の周りにはもう、魔物は居なくて。
すごい、どうして、一体誰だろう……!
目を凝らして見るけど――
はっとなり、アイカは起き上がる。視界には、ルナシス艦内の自室だった。ここに来て、初めて夢を見た。夢の内容よりも、どこか胸騒ぎがしていた。どうしてか、自分の中の何かが掛けてしまったような、不思議な感覚に囚われていた。
なんだろう――
胸に手を当てていると、アイカの自室のブザーが鳴り、扉を開ける。
「アイカッ!!」
血相を変えたリーナが息を切らして、アイカの両肩を力強くつかむと、告げられる。
「ライト、ライトがっ!! ここを出て、クラウドに、所属することになったって……!!」
その言葉に、アイカは目を見開いた。うまく、言葉と、理解が処理できないでいる。
クラウド?
え?
ライトが、クラウドに?
どういう、こと?
「とにかく、ルミナからもメンバーに話があるから、だって……。ねぇ、行こう!」
リーナは、思考がうまくまとまらないでいるアイカの腕を引いて走り出した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます