惑星プルトー
第21話 ~エネルギー~
ギャラクシー・ウォー:第2フェーズ区域。
その宇宙の空間には一つ、シャボン玉のような虹色の膜のもので覆われた惑星があった。その中には一本の樹が育っているのが見える。樹の根は空間にのびのびと脚を伸ばしている。
惑星の名はプルトー。
樹とはいえ、惑星一つ分の大きさはあるのではないかという、壮大で、黄金色にあたたかく光り輝いている、そんな樹である。
樹の根本に、根で出来た小さな街もある。
電気は当たり前のようにあり、生活していく上で何不自由ない。
この惑星の住人は巨大なエネルギー体と共に暮らしている。
少女は樹木から湧き出る、温かく輝く水を採取用の水入れに汲んだ。その水は、後に精製され、アイテムとなる。
「今日も幸せそうで、何よりです」
『ミラが居てくれるからね』
ミラと呼ばれた少女の年は12歳ほどだろうか。金色の髪を高い位置でゆるく一つに結わえている。ミラは宇宙の輝きの一つとなっている樹に手で触れ、見上げて微笑んだ。
「……あら? どうか、しましたか?」
樹に触れてすぐ後の事だ。ミラの心へ樹からのざわめきが伝わってきた。
『来る』
「また、ですか……」
プルトーの惑星にも勿論警備システムはある。一見、穏やかで平和そうに見えるが、扱っているものはエネルギーである。
ほとんどのアイテム精製時に欠かせないものであることから、ありとあらゆるものから狙われる危険は最も多い場所かもしれないとも言われている。
「……大丈夫です。きっと、皆様が守ってくれますから……」
ミラは優しく樹に触れ、自分も落ち着くための深呼吸をする。
警備システムの360度、遥か遠い距離までも見渡す事のできるその監視カメラは、惑星プルトーに向かってやってくる物体を発見した。
距離は遠い場所ではあるものの、警備システムがはっきりと捉えられる程の禍々しいエネルギーを捉えていた。
プルトーへ向かう禍々しいエネルギーの進行速度は、異常なまでの速度を見せていた。
警備システムは、プルトーを守るため、銀河の戦艦達に向けて信号を発信した。
“ギャラクシー・ウォー 全艦に告ぐ。惑星プルトーに異常なまでの速度で向かう悪性エネルギー有り。直ちに救護を頼みたい”
『逃げて』
「え?」
巨大な樹は、ミラという少女を光に包んだ。
『ここに居たら、危険だから――』
「え!? なん、で――」
それからの、ミラの意識は惑星プルトーから消え去った。
宇宙は広大で、神秘である。
希望が生まれる傍らで、絶望してしまう出来事が生まれ、起きる。
しかし、絶望している傍らで、必ずどこかで希望が生まれ、起きる。
それは必然的に行われる流れなのだ――。
・・・
ルミナは艦長席の前に広がる画面達を食い入る様に見ていた。
ライトのあの目の傷は呪だと。
今は、ルナシス艦の研究員達がお手上げだったとしても、ここではあり得ないことが起きた以上、きっとその解決策だってここにはあるはず。
そう信じて、ルミナは時間があればシードラゴンの呪について調べていた。
「呪いって、お塩? お酒? 地球だとそんな話があるのになぁ……」
そんな知識があっても、ここでは通用しないかと、ため息をついた時。
ルナシス艦の通信機がけたたましく響き、発信源を知ったルミナは瞳を大きく開けた。
・・・
ギャラクシー・ウォー窓口のゼロは、アイカへの続行プログラミングが完了したと共にそっと口を開く。
「アイカさん。継続手続き完了しました。それでは……」
再び、良い旅を――――
その言葉と共にアイカの目の前の視界が白く眩しく、そして真っ白になる。
気がついた時はチーム・ルナシス艦内の自室だった。
また、この場所に戻ってきた。
艦長席のあるフロアへ足を運んだ時、見慣れた、どこか懐かしく感じる仲間の姿が。
「よかった! アイカが戻って来た!」
「おおお! 待ってたよアイカちゃぁん!!」
「よかったです、アイカさん!」
「皆も、辞めなかったんだね……よかった……!」
アイカはメンバーそれぞれの顔を見る。続行手続きにはそんなに時間は掛かっていないはずなのに、どこか懐かしく感じてしまう。
「あったりまえじゃない! ね、マイキー! ユララム!」
リーナはマイキーとユララムの間に入ったかと思うと、腕でがっちり二人の首をホールドする。
「いだだだ、痛いってリーナ! ま、待ってたよアイカちゃん!」
「うぐぐ……離してくださいリーナさん……! 首、首は辞めて……!」
リーナが両手を広げてアイカへと抱きつき、マイキーとユララムも安堵した様子でアイカを迎い入れる。
「よかった、アイカ。私結構心配しちゃったのよ?」
艦長席から降りてきたルミナの瞳も潤んでいた。
「……ルミナ姉さんまで……」
「ふふっ、もう、結構な付き合いだと思うんだけど? そろそろ、ルミナって呼んであげてよ、アイカ。待ってたわ」
アイカに抱きついていたリーナが、ルミナが何をしたいかを察して離れた。
「うん……」
「おかえりなさい、アイカ」
「ただいま、ルミナ」
ルミナは優しくアイカを抱きしめた。
「ライトを、助けに行こうよ。アイカ」
「……えっ?」
ルミナの言葉に驚き、混乱する。
「ライトは、目が治ればきっとまた安心して
ルミナは柔らかくアイカに微笑む。
「大丈夫だから、アイカ!」
「うん……!」
ライトが、まだここに居るかの確信はついてないが
希望には、なる。
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