~『消去』デリート~ ②


 暗闇の中、クリスタルを“嬉しい”気持ちで見つめている、物体、マーク。

 人間では無いが、そういった感情も主人であるマイキーの記憶のデータによって作られたチップが埋め込まれ、“感情”を作られている様だ。


 部屋が開く音がする。

 ん? 足音が違う……。マイキーじゃない。


 ルミナ、違う。ライト、違う。リーナ、違う。アイカ、違う。

 オマエハダレダ。


 警戒モードに変更し、男を注意深く

 クリスタルに手をのばす男。


 サワルナ!!


 マークは搭載されていたレーザービームを男の手に向けて発射させた。


「ぐぁああ!!」


 男は撃たれた手をクリスタルから下げ、喚いた。

 一部始終を見逃さないように、マークは主人であるマイキーへと信号を送った。


・・・


「よし、いいぞ、いいぞアイカちゃん!!」


 尾を切り離した事によって、大きくまたダメージを与えたことが、ゴーグル越しに分かったマイキーがガッツポーズをする。

 その後、ライトもすかさず衝撃波を込めた拳を繰り出すため、あの異常事態であったタランチュグラ戦とは違い、面白い程ダメージが減っていく姿が快感だった。


 ダメージ量が減る中、いきなりゴーグルの画面にマークのアイコンが割り込んできた。


「えっ!?」


 普段は起こりうるはずのない機能。

 マークが危険信号を発している時にだけ、アイコンが現れるようにしている。


「何、で……?」

『マイキー!!!』


 リーナの叫び声に、マイキーは焦点をマークのアイコンからシードラゴンに切り替えた時だった。

 シードラゴンの胴体が、まさに目の前に迫っていた。

 光線。

 またも衝撃波が辺りを包む。


 マイキーは思わず目を瞑ってしまったが、恐る恐る目を開けると、心配そうにしていたアイカが目の前に居た。


「まじかよ……俺、女の子に助けられちゃったのかよー……」


 苦笑いしつつ、動揺を隠せないでいた。


「マイキー、どうしたの!?」

「わっ、アイカちゃん、そんな大きな声で言われたら……」

「違うの、マイキー変だもの、大丈夫?」


 マイキーの相棒であるマークのことは、まだ誰にも話していない。


「……っ!! ごめん! 俺の相棒が……大変なんだ!」

「え……?」


 マイキーはアイカの肩に一度すがりつくと、リーナとライトを見た。


「リーナ、ライト、ごめん! すぐ戻ってくるから!」


『えっ、おいどうしたんだよマイキー!』

「ごめんライト、後でちゃんと説明するから……!」


 マイキーは避難しつつルミナへと通信を送った。


『はい、こちらルミナ、どうしたのマイキー』

「ルミナっちごめん! 俺を一度艦内に戻して!」

『え!? まだ戦ってるのにどうして』

「お願い、ルミナっち、大変なんだ!」

『……分かったわ』


 海岸に光り輝くゲートが出現し、マイキーは飛び込んだ。


「ったく……何で言ってくんないのよ、バカマイキー……」


 リーナはゲートと共に消えていくマイキーをため息混じりに見ていた。

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