~『消去』デリート~ ③
「ルミナっち、ありがとう!」
ルナシス艦内の転送装置にたどり着いたマイキーは、急いでクリエイト室へと向かった。
「マイキー! ……ふぅ、もう、後でちゃんと説明してもらわないとね……」
ルミナは、また艦内の画面へと視線を戻した。
そして、戦艦の通信機が鳴り響き、ルミナは少し身体がびくっとした後、冷静に対応を始めた。
「はい、こちらルナシス艦、ルミナ」
クリエイト室へ向かう途中、マークからの音声が届いた。
『マイキー。ここからは足音を立てずに来い。奴はクリスタルを狙っている。強敵だ、気をつけろ』
「え……! うん、わ、わかった」
強敵だと相棒のマークに言われ、マイキーはゴクリとつばを飲んだ。
・・・
「痛ぇな……!」
クリエイト室内。男は鋭く視線を周囲へ向ける。どこから撃たれたのか。激しく闘志を燃やしている。
「こんなもん、効くかぁああ!!」
男はもう一度、暗がりの中でクリスタルに手を伸ばした。
またもレーザービームが男の手元に。
しかし、男の手にレーザービームが当たることはなく、その向こう側の壁へとすり抜けていった。静寂が訪れ、安堵した男の気配が漂う。
「はっ。馬鹿じゃねぇの、こんなもんのために……」
クリスタルを手に出来たことが悦ばしく、暗闇の中で口元を釣り上げて笑う。
クリスタルに触れ、コマンドを出す。
その指先は、消去を選択していた――。
クリエイト室のすぐ手前で荒ぶる心臓の音を落ち着かせるため、胸に手を当て、ゆっくり深呼吸をした。
鳴り止まない心臓の音。
マークやクリスタルが心配である気持ちが勝り、怖い気持ちをなんとか押し殺しつつ室内へと足を踏み込ませた。
マイキーを確実に認識し、自動的に明かりが点った室内。
「!!」
男は驚いて部屋の入り口を振り返った。
マイキーは、その場にいる人物と、消えていくアイテムに目を見開いた。
クリスタル、消去、完了――。
「お、おい……嘘……だろ……!? ユララム、さん!?」
「何故ここに、お前がいる……!」
「ちょ、と、それは俺の台詞……」
室内に、けたたましく警報が鳴り響き出した。マイキーを認識したマークは身体が動き出し、警報を鳴らして球体をしたマークの身体から様々な歯車や基盤が現れたかと思うと、小さな二足歩行ロボットへと変形し、整ったロボットのマークは攻撃態勢に入った。
「お前か……!? お前がコイツを呼んだのか……!?」
ユララムは険しい顔をし、マークを睨んだ。
マイキーは、信じられない気持ちが未だに収まらず、混乱した気持ちでマークとユララムを眺めた。言葉が出ない。
ユララムは怒りのあまり、無言になった。無感情とも言えるかもしれない、目が合えば、ゾッとするくらいの、命を感じない瞳となっていた。
ユララムは杖を動かし、魔法陣を発動させる。
「!?」
『マイキー! しっかりしろ!』
ユララムが発動させたサンダー・ボルトと、マークが飛び出したのはほぼ同時だった。
どちらも、マイキーの元へ。そして、激しい光とピリピリとした空気の感覚に襲われた。
「うぁああああ!!」
マイキーは目元を覆い、その場に伏せてしまった。
少しの間。静寂が戻ると、マイキーはそっと手を顔から話した。
「クソ、邪魔しやがってコイツ」
ユララムが顔とは似合わない話し方をし、足元に転がるものを蹴った。
それは確かに、焦げて、電子回路があちこちから飛び出たマークだった。
「えっ……! ええっ……!」
マイキーは訳が分からず、マークの元へと駆ける。
だらりと下がった、宇宙の色を輝かせた塗装の肢体。
「マーク……おい、マーク……!?」
マークが何かを言おうと音声を発したが、次第に消えていった。
ここでの、初めての相棒。どうしてこんな事になってしまったのか。
「何で、何でだよぉおおおおお!! 何がどうなってんだよぉおおお!!!」
マイキーは壊れてしまったマークを抱きしめ、叫ぶのだった。
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