第16話 ~『消去』デリート~ ①

 時空の中を、音も立ずにゆったり歩ける男が居る。

 その男は、ではまだ、一人だけかもしれない。


 男がたどり着いた場所は、クリエイト室内。

 入り口に姿を一瞬だけ現すと、室内の扉が開いた。


 鼻歌を歌いながら、男は目的の物に

 闇にも負けず、光り輝くクリスタルに手を伸ばした。


 ルナシス艦内。ルミナはモニターの前で息を飲み、シードラゴン戦を開始したチーム・ルナシスメンバーを見守っていた。


・・・


 海岸に、衝撃波が走る。


 グォオオオオオ――――――!!


 シードラゴンの身体が大きく揺らぎ、隙が生まれた。

 マイキーは頭に装備していたゴーグルを素早く装着し、宙を蹴り、距離をとりつつダメージの具合を見る。


「よし! いいぞライト!」

『皆! 続いて!』


 大きく傾いていくシードラゴンの巨体に、メンバーが一斉に攻撃を始めた。

 リーナは隙が生まれた身体へ近づき、短剣で身体を切り裂く。

 身体に鋭い痛みが走ったのか倒れて行っていたシードラゴンの身体が急に反り返り出した。

 予測不可能に跳ねあがる鋭い剣先の様な尾が、メンバーを襲う。

 地に着地したとしても、他の胴体の部分が襲いかかってくるためすぐさま宙を蹴り、回避するメンバー達。


『リーナ危ない!!』


 リーナへと向かう尾が目に入った途端、マイキーが即座に攻撃呪文を唱える。


「サンダーボル……!!」


 マイキーの手の平から高圧の電流が音を立てて流れ出し、腕を突き出し、目標を定めた。


「はぁああああ!!」


 マイキーが突き出した腕のすぐ側で光線がすり抜けた。


 キィン――――――ッ!!


 響き渡る音と共に、ロングソードを握りしめたアイカが、シードラゴンの尾をリーナから遠くへと弾き飛ばしていた。


「リーナ、大丈夫!?」

「アイカ……! 凄すぎだってば、今の」

「え?」


 リーナはただただ驚いて、光線の如く訪れたアイカを見つめていた。

 アイカ自身も、何が起こっているのかが分からない様子。

 その素早さに驚いたのは、腕を下げたマイキーだけでなく、目を見開いたライトもだった。


 ユララムの元へ、鋭く輝くものが飛んできた。


「ん?」


 ユララムよりも少し離れた場所に、剣先のような物が砂浜に突き刺さった。


「シードラゴンの……尾、か?」


 それを近くで確認しようとしたが、それはもうアイテムへと変化してしまった。


「ふむ……。これはもう、圧勝じゃな」


 ユララムは鉱物と化したアイテムに触れ、更にデータ化して消えていく姿を見てそう呟いた。

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