~シードラゴン戦・開始~ ②
ルミナによってチーム・ルナシスは砂浜へと導かれた。
爽やかな潮風、一粒一粒光り輝く砂浜。空には伸びやかに海鳥が飛んでいる。
こんなにも平和な風景にも、レイドボスは現れるというのか。
「穏やかじゃの」
ユララムは、潮風に吹かれつつ自然いっぱいの景色を堪能していた。
「ま、そう言ってられるのも今のうちなんでしょうけど」
「ねぇ、リーナ。今回の作戦はどうするの?」
「そうねー……」
リーナは通信機を取り出し、リーダーコマンドを立ち上げた。
チーム・ルナシスのレベルを冷静に眺める。
「相手はとにかく巨大だから。だけど、身体が長くて大きいだけ、どれだけ素早かったとしても、必ず死角はあるはずよ。まずはあたしとライト、アイカはマイキーと組んで。そして……」
リーナは輝く眼差しをユララムに向けた。
「ユララムさんの特技、凄すぎるわ……! 補助魔法が使えるメンバー、欲しかったんですよぉ……!」
「ふぉっふぉっふぉ、そう言ってもらえると嬉しいのう。それで、ワシは何をすればいいんじゃ」
「ユララムさんはシードラゴンが出てきたら……」
リーナが話している最中、波の音が、次第に大きくなってきているのが分かった。
メンバーは一気に波へと視線を集めた。
次第に渦を巻き、それがどんどん、巨大化していく。
「来るぜ!!」
ライトがメンバーへ声を上げる。リーナとライト、アイカとマイキーはそれぞれ、砂浜を駆ける。作戦通りに二手に別れ、更に距離を置いて構えた。
それは、渦が深くなり、空洞のようなものが出来た後に
その奥から、現れた。
ゴォオオオオ――――――!!!!
地響きと、高く荒立つ波と共に現れた
頭だけでも、人間の身長の倍以上には感じる。
「マジかよ……!」
「でっか……!!」
ライトが防御態勢をとりつつも、目を見開く。
リーナはたじろく一方、アイカやマイキーはそれぞれ大声を上げて距離をとる。
「ユララムさん!! ウォールドを!!」
防御アップ魔法のウォールドを、ユララムに叫ぶリーナ。
「うむ!」
ユララムは即座に持っていた杖で自分の周りを囲むように描く。
描いた瞬間、複雑な模様をした魔法陣が光と共に生まれた。
ユララムは、魔法陣からのエネルギーを感じた後、ルナシスメンバーの顔を思い浮かべた。
「ウォールド!!」
ユララムの目が見開いて大きく唱えると、魔法陣が更に光輝き、幾つものまばゆい光線が宙を飛び交う。その光は、それぞれのメンバーの元へ辿り着くと、全身を包み込んだ。
「サンキュ!!」
ライトは自身の防御力が上がったことを実感すると攻撃態勢に入る。
シードラゴンの全身が出てきて、海に巨大な波紋を生み出した。
ザバァァアアアン――――――!!
津波とも見える水しぶきに、メンバーはシードラゴンから距離を更にとった。
シードラゴンが水面から全身を表したかと思うと、勢い良く空高く跳ね上がり
砂浜へ自身を叩きつけるようにして着地した。
地鳴りが鼓膜を激しく叩く。
身体は振動と、揺り動かされる恐怖に思わずしゃがみ込む、チーム・ルナシス。
「くっ……これは……思った以上ね……!」
メンバーがそれぞれ距離を置いているため、肉声でのやりとりは困難とみたリーナは、通信機を取り出し、グループでの会話のやりとりをハンズフリーで出来るように素早く設定した。
「皆、聴こえる!?」
『お! リーナか、助かるぜ』
『こちらマイキー! ひゅーぅ、なんかいいねこういうの!』
ライトとマイキーが戦闘を目前としているにも関わらず嬉しそうに反応している。さっきまでの恐怖はいつの間にか、仲間の声で自身を取り戻していた。
『私も聞こえてるよ、リーナ』
『ワシも大丈夫じゃぞ』
シードラゴンは全身を蠢かせつつこちらの様子を伺っている。
『よし、全員大丈夫ね。地響き半端無かったわね……。ユララムさん、今のうちにスピーディアもお願い』
『うむ、承知した』
仲間の素早さを著しく上げることの出来るスピーディア。
ユララムの魔法陣が光り、メンバーの元へ届くと、攻撃準備が整った。
『皆、いい? 先手必勝! ライトを筆頭に、あたし達も続くわよ!』
『おう!』
『お、おっけ!』
『うん!』
ライトは全員の返事を耳にするかしないかで、拳にエネルギーを溜めこみ、シードラゴンの横腹あたりへと一気に鋭いパンチを送り込んだ。
「はぁあああああ――――!!!」
衝撃波が、辺りを包んだ。
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