~破壊こそ美しい~ ②


 どんなに絆を信じていても

 小さなきっかけが爆発的に大きな乱闘へ発展し

 紡いできたはずの愛情はもろくも崩れ去ってしまう。


 この世に生まれるものがあれば

 同時に破滅していくものもある

 宇宙で絶え間なく続く出来事と同じで

 それは人間の世界にも絶え間なく続いている出来事である。

 それは誰も崩すことのできない、出来事である。



 エース・ケイ率いるクラウドにてある事件は起きた。


「おい、俺たちのレベル上限開放アイテム、ごっそり無くなっちまってるんだ、ただで済むとおもうなよ……テメェか!?」


 壁に思い切り叩きつける。

 それを避けるように、チームの人間がその場に空間を作ってたじろいた。


「ぐっ! お、俺じゃねぇよ!」

「おめぇよく上限解放してぇって言ってたじゃねぇか。俺より弱いくせして馬鹿じゃねぇ?」

「ケイ……! アイテムの場所とか俺知らねぇって…」


「しらばっくれんなよ……あ!? そしたらてめぇか?」

「お、おい、ちょ、待てよケイ!」


 ケイは片っ端から目の合う仲間に掴みかかる。

 初めは男性だけだったが、何も言わない仲間に苛立ちを増したケイは、ついに女性戦士にも掴みかかろうとした。


「てめぇか……?」

「ケイ、やだ、やめ……」


 涙目になる女性戦士。



「……愉快じゃのう……」


 ぽつりと呟かれた声へ、一斉に視線が向けられる。


「は? ユラ爺ふざけてんのか!? 俺達が折角集めたレアアイテムが全部……!!」

「いんや、ワシは全くふざけておらんよ、ケイ。愉快なだけじゃ」


「……どういうことだ、ユラ爺、何でそんなこと……!!」


「ケイ、頭に血がのぼりすぎじゃ。あとな……何故ワシには掴みかからんのだ」


 ケイの顔が次第に真っ青になっていく。


「ユラ爺……! お前、嘘だろ……!! 今までの苦労は一体……!! お前が一番助けてくれてたのに……!!」


「すまんの、退屈だったんじゃよ。お前達と過ごす時がの。

しかし、最後はいいものを見れてよかった」


「いいもの……!?」


 それぞれの顔が青ざめていく。絶望の色に、染まっていく。


「ユララム、何故君は……」


 事の様子を見ていた艦長、クライアが席を立って、老人の元へ歩み寄る。


「短い間だったが世話になったの。クライア。すまぬ、もう、退屈でたまらん」


「馬鹿言うなよ! 何で、俺達の仲間になったんだよ……ユラ爺!!!」


「馴れ合うために来てんじゃねぇのよ。破壊の姿こそ、美しい」


 老人は、大きく杖を付いて、転送機へと向かう。


「ユラ爺!? どこ行くんだよ!?」



「皆の衆たっしゃでの。ほっほっほ」



 ユラ爺と、仲間に慕われていたユララムは

 不気味に感じる鼻歌を残して、戦艦・クラウドを後にした。



 向かう先は、迷うこと無く、レイドボス・タランチュグラ戦だった――。

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