第7話 ~破壊こそ美しい~ ①
人々は夢を追いかけ、発展を続けることを心より望んだ。
人間は、発展を望む。
歴史は、発展を拒む。
発展と共に心の在り処が失われていくのも事実だ。
どの戦艦の指令室のモニタには、世界の崩壊が映し出されている。
その姿を見て、世界を助けなければという思いに駆り立てられる戦士たち。
そして……。
ここは戦艦、クラウド。
チーム・クラウドの人数は40人ほどであり
ギャラクシー・ウォーの中では、最多のメンバー数と言っていい。
艦長は基本戦いには出向かないが、性格や性別により、稀に戦闘を楽しむ艦長もいる。戦艦の中は、艦長以外のメンバーは、今はレイドボス出撃中でほぼ空である。が。
一人の男は、戦艦内の世界中が映るモニターを眺めていた。
艦内に鼻歌が響き渡る。低音の鼻歌は、少々不気味ささえ醸しだされている。
「ん……?」
世界の破滅の中で、男は一人の女性戦士を見つけた。
空高く、光を浴びて舞い上がった一人の戦士を。
その映像に吸い込まれるように。
歳と共に窪んでしまった瞳を見開く。
誰なんじゃ、コイツは……他の戦艦の娘か。
老人は椅子に手を触れ、その映像まで向かうためにイメージし、浮かせた。
女性戦士の映る映像にたどり着き、触れる。
その画面が映画館のスクリーンのように部屋中に拡大された。
もう一度触れると、もう一度空高く舞い上がる女性戦士の映像が繰り返された。
手元に、メニューを表示させる。
呼び寄せられるように。“アイテム”を選択し、躊躇なく“消去”を選択する。
「ふぅ……。いい眺めじゃ……。壊れていく姿こそ、美しい」
モニターを見て、間違いなくうっとりとした表情を浮かべた男……年齢はもう高齢者だ。
白髪のオールバックという髪型、背は低く、150cmあるかないか。身なりはキャラメル色をしたローブをまとい、等身大の杖を持った、魔導士の様だ。
そんな、老人がいた。
耳の片隅で転送ゲートが開いた音がした。
ゴッ、ゴッと、荒く足音を響かせてこちらまで近づいてくる。
チーム・クラウドエースのケイだった。
がたいが良く、180cmはあるだろうか、老人よりも遥かに背が高い。
ケイに迫られた老人の姿は、たとえ彼が笑顔であっても、傍から見ればとても迫力があるように見えるだろう。
「おーい、何してんだよユラ爺! もうボス戦始まってんだぜ、爺だけ休むなってっ」
「おっと……すまんの、もうこの年になると戦いも億劫になるもんでな」
「ったく、なんでジジイまでゲームやってんだよ。いい歳こいてよ。皆も艦長も待ってるぜー」
笑顔を残して、ケイはまた転送装置に吸い込まれていった。ユラ爺と呼ばれた老人は指令室にまた、一人となった。
「ふぅ……愉快じゃのぅ」
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