~初心者マークでレイドボス戦~ ③



 これ地面落ちたら死ぬ!!!

 って思った瞬間だった。




「ほらよっ」


 全身、トンッという小さな小さな衝撃で済んだ。


 あれ?

 まだ少し、高いところにはいるけれど

 ゆっくり景色が動いてる。


「最初から飛ばし過ぎんなよ」


「らっ……ライトー……!」


 って、あれ、ライトの顔すっごく近い。

 どうして!? え!? わ、私今どんな状況!?

 抱っこ? ううん、そんなんじゃない。

 これは……女子が憧れるお姫様抱っこじゃありませんか……!!


 どうしよう……!


 離して、なんて高くて怖くて言えない――――――!!!

 でも恥ずかしい―――――!!!


「最初からあんな高く跳びやがって……ま、やったな」


「え! あ、うんっ」


 こんな時でも冷静なんだなぁ、ライト……。

 当たり前だけど助けてくれたんだし…あたふたするのも……失礼、なのかな。

 

 少し落ち着いてくると、ライトの戦闘服の宝石のような飾りが

 光輝いていたのに気がついた。


「ライトの戦闘服の……飾り? 凄い……すっごく光ってる」


「ああ、これな。力を発揮するときに皆こうなるみたいだ」


「ほえー……」


「アイカもさっき、こうなってたんだぜ?」


「そうなんだ、全然、分からなかった」


「そうだ。アイカ、“跳ぶ時“も“着地”も全部イメージするんだ」


「イメージ? イメージでいいの?」


「そうだ。俺は今、ゆっくり飛んで行くイメージができてる。

 まぁ、この世界はイメージだな、基本」


 なるほど、全部イメージでコントロールしていくんだ……。

 あれ、そういえばマイキーがイメージとか言いかけてたような……。


「そうなんだね、ありがとうライト。イメージかぁ頑張ってみる」


「おう。ま、これで魔物あいつらが怖いって気持ちも少しは薄れたんじゃねぇか?」


 少し、ライトが笑った気がした。


 夕陽で、本当によかったと思う。


 それからあっと言う間に地について、

 

「初勝利、おめでとうアイカ!!」


「やったじゃんアイカー!

 ってやっぱりライト抜け駆けかよぉおお!!」


「抜け駆け言うな。だからお前にもいつでもしてやるって言ってんだろ黙れ」


「いっらぁぁぁぁん!!! 俺は強いんだよぉお!!」


 何か……可愛いなぁ、皆。



「あっはははっ」


 あんまりにもおかしくて、気がついたら、笑ってた。


「アイカ!」


「おっ」


「わ、わ、アイカちゃん……!!」



「笑ったぁ――――!!!」


「やっと笑ったな」


「う、わぁっ」


 途端に皆と円陣を組まされてるみたいになった。


「これってさぁ、仲良くなってきたって事だよねーっ!」


「そうかもな、リーナ」


「俺もすっごく嬉しい!」


リーナ、ライト、マイキー……すっごく嬉しそう。


「アイカは、笑ってた方がいいな」


「それお前もじゃん、ライト」


「うっせ」


 なんだか、とんでもない事を言われてしまったような感覚になった。


『アイカー! やったわねー! 姉さんは嬉しいわ!』


 ルミナが通信機から呼びかけてきてくれた。


「はい! なんとか、1匹……倒せました」


『上出来よー!』


 通信機の向こう側から、拍手の音と、ダンッ、ダンッって聴こえるから

多分ジャンプしてるのかな。それぐらい、喜んでもらえてるんだ。


『よし、それなら皆で本番、【タランチュグラ】に今すぐ向かうのよ!』


「おっけ、ルミナ」

「俺たちなら一瞬だぜー」

「あんまはしゃぐなよマイキー。行ってくる、ルミナ」

「頑張りますっ、ルミナ姉さん」


『皆の力、楽しみにしてるから』


 と、ご機嫌なルミナ姉の通信は終わった。


 通信が終わってから、嬉しい余韻に浸っていると。

 

「おっ、なんか……それっぽいのお出ましじゃねぇか?」


 ドン……。


 ドドン……!

 ドンドドン……!!


 地響きは、だんだん私達の所へと近づいてきていた。

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