第5話 ~ぶっきらぼうも優しさのうち~ ①


 瞬間移動を生まれて初めて体験した。


 眩しい光からすぐに自由になると、

 戦艦ルナシスの中に立っていた。


「どう? アイカ」


 リーナは自分の戦艦のように言ってるのがなんだか面白い。


 それにしても……。

 うわ、うわぁ……。


 凄い、映画で見ることしかできなかった戦艦の中のシーンが

 目の前にある……!


 カツン、カツンとヒールの音を立てて

 私の前に、艦長のルミナが大きなリボンを腰に揺らしながらやってきた。


「待ってたわ、アイカ。ようこそ、ルナシスへ」


「は、はじめまし……て……よ、よろしくおねがいします!」


 はじめましてじゃないけれど、言葉がそう出てしまった。


 “待っていた――”


 ルミナは全てを分かっていたかのように、優しく微笑んでくれた。


「初めての事だらけで疲れたでしょう、アイカ。

 まずは折角出会えた皆とも仲良くなってほしいし……。

 そうだ、この戦艦、カフェもあるの。そこでゆったり座って休憩するといいわ」


 カフェ、って、ルミナさんお洒落だなぁ……。


「はい、ありがとうございます、ルミナさん」


「あら。そんな、よそよそしい。私の事、お姉さんみたいに思っていいのよ? そうね……ルミナ姉さんって呼んでもらえても嬉しいわ」


 と、にっこり、やっぱりルミナは穏やかな雰囲気をもってるなと思う。


「はい……ルミナ……姉さん」


 照れくさくてルミナを直視できなかったけれど

 それでも、ルミナはありがとうと、微笑んでくれた。

 姉さん、か。早く慣れなきゃ。


 そして、私はしばしの間、戦艦の中の洒落たカフェで一息と、

 皆からこの世界の説明を少し、受けることになった。


「アイカ、この世界はゲームで起きることが実際に起きる……っていうのはもう分かるわよね?」


 うん、と頷く私に


「アイカちゃん! あのでっかい気持ち悪いミミズみたいなヤツ倒すトコ、見ててくれてたんだよねっ」


「……所有者のないアイテムを触れると、それは触れた人の物にできるの」


「ライトがさー、すっごいジャンプするの、あれってヒミツがあってさぁー」


 あの、マイキー気づいて……リーナの表情、怖いよ……!


「……それで、触れたものは全部デジタル化されて」


「そのヒミツってのがさ…ふっふー♪ 戦うのに一番必要なのが……」


「マァイィキィイー!!!」


 私は全く話の合わない二人を見て、笑っていいか分からなくて。

 中途半端に口を開けて固まってしまった。


 リーナはマイキーに話をとことん邪魔されて、すっごく“キーッ!!”ってなってる。


 凄いなぁ、仲いい……。

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