第12話 2ページ

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【注意】2ページ目は結構生々しいこと書いてます。気分を害する可能性がありますので、読み飛ばしちゃってください。


       それでもという方は、どうぞご覧になってください。

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 彼はビニール袋を被ってねていました。私はその姿を2番目に発見しました。そして生存を確認するため、私は彼の左手首に触れました。

 湿った、冷たい手でした。

 私も末端冷え症で手はいつも冷たいじゃないか、うんきっと彼もそうなんだろう。そうだ、そうに違いない。よぎった予感を振り払うように、そう自分に言い聞かせながら、私は横たわる彼の首に掛かっている物を剥ぎ取りました。


 そして彼の顔を見た。正確には、彼の唇を。血の通った赤でも、血の溜まった青でもなく、血の気のない肌色をしていました。首まわりには、袋を止めていた輪ゴムの痕がくっきりとついていました。私は第1発見者の方に救急通報をお願いした後、AEDを持ってきて彼に使いました。


 ここで皆さんにAEDについての基本情報をお伝えします。AEDの使い方は学校や教習所、消防が主催する講習だったりで教えてもらう通り、音声で教えてくれます。この辺はよく知っていますよね? 右胸と左脇にパッドを貼って、AEDが患者をスキャンします。そして、電気ショックが必要と判断したら、音声で注意喚起をしたのち、『オレンジ色のボタンを押してください』という指示をだす。

 その後、人工呼吸と心臓マッサージを繰り返し、たびたび電気ショックを与えるというのが大まかな流れです(感染症などの問題から、人工呼吸は省いてもいい、とも言われていたりもします)。

 

 ……ところで、AEDって、なんの略称か知っていますか?

 正解は、自動体外式除細動器 細動を除く体外て使う機械という意味です。細動というのは、心臓がけいれんした状態のことで、この状態だと心臓は血液を身体中に送ることが出来ないのです。

 この細動を取り除くのがAEDの役目であって、


 私は今回の一件で、その事実を知りました。

『ショックは必要ありません。心臓マッサージと人工呼吸を行ってください』

 AEDから流れる音声は、私に現実を突きつけるようでした。




 そうして、救急隊が彼を運んでいったあと、警察の方がやってきました。事件性の有無を調べるためです。推理ものとかでよくあるあの状況です。私は第2発見者として取り調べを受けたりしました。こんな性格なのもあってスムーズに答えることは出来ず、第3発見者の方にところどころ代弁してもらいながら、取り調べに協力しました。


 A君のいなくなった部屋の前で状況説明をしているとき、私はチラと部屋の中を見ました。散らかった部屋のなかには、私が剥ぎ取った袋と、ガムテープの巻かれた袋の2つを発見しました。警察の方が言うには、1度目にガムテープを使って試したが上手く首が閉まらず、別の袋と輪ゴムを使い、結果至ったのだろうとのことでした。そして捜索が続けられ、机に散乱した紙束の中から顔を出した、レポート用紙を発見しました。

 案の定、遺書でした。防げなかったことを悔やむべきか、殺人でなかったことを喜ぶべきなのかよくわからない、ごちゃごちゃした思いが、私を支配しました。





 

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