第12話 1ページ 得難い経験大事件
彼の名前は……まあ、仮にA君としよう。
彼の名前はA君という。常に明るい性格で、いつも調子が良く、はっちゃけていて、ネジが数本抜けているんじゃないかと疑いたくなるほどの素っ頓狂なことをし、挙句の果てには文化祭で全身タイツマンになって子供を泣かすという事件まで起こした彼。
授業はよく寝坊で遅れてきて、授業中も先生に当てられたら予想の斜め上(或いは斜め下)の回答をする彼。席に座ったA君をチラと見ると、大抵眠っているか机の下でスマホを弄っていた。
正直言ってしまうと、私はA君がとても苦手でした。下ネタ大好き、R-18大好き、バイク大好き、不真面目、いつも一言二言多い、目上の人に大変失礼、無差別に絡んでいくし絡んでくる、etc……。
しかし最近、なぜ私はA君のことが苦手なのか。その理由を知ることが出来ました。
A君は……正確には、A君の”根っこ”の部分が、私にとても似ていたからでした。所謂ところの、同族嫌悪というやつです。
私は、引っ込み思案というか、自分の意見や考え方を外に出さないタイプです。おまけに、自分の意見や考え方を周りの意見で”上書きする”という術まで得てしまいました。小学校から中学校にかけての禍々しい期間の間に形成されたこの性格ですが、もしかすると、この性格にならなかったのなら、私はA君のような人間になっていたのかもしれない。彼と接した長い時間の間に垣間見えた情報を整理していくと、そんな答えが見えました。
そんなA君ですが……。
――自分の意志で、この世を去りました。
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