第40話

「で、狩場はどこにいくんじゃ? ヤキソバ殿?」


「お、俺ですか?」


「ヤキソバ殿が、リーダーなんだから当然じゃろう? 違うんじゃろうか? わしはずっと、そうおもっとったぞ?」


「俺は別に、リーダーじゃないですよ」


「わたしを、パーティに誘ったのは誰でしたデス?」


「俺ですね」


「わしを、パーティに誘ったのは?」


「俺ですね」


「……、わたしをピーティーに誘ったのは?」


「俺ですね、あれー?」


「あれー、じゃないデスよ。ヤキソバさんがギルマスですよ! ギルドマスターですよ! ギルマス! 初のおしごと、やってくださいデス!」


「初ってことは、やっぱり今までは、俺じゃなかったんじゃね?」


「たとえ、今まではそうじゃないとしてもデスねー、今からはギルマスですよ?」


「まいったなー……」


「ねえ、なんでもいいから早くしてよー。早くきめてよー」


 おいおい、なんなんだよみんなして。


 俺は冒険者狩場ガイドブックに、目をとおした。


 こんなことで、いちいちフェリリの生命力を、使ってられないからな。


「みなさん、希望の狩場とかあります?」


「あったら、言っておるわい」


「いや、たとえば戦いたくないタイプのモンスターとか」


「BP高いやつにしてよー」


「いままでで、一番BPが高い敵ってスケルトンでしたよね。ふだん暇そうにしてますみたいなモンスター。ちょっと親近感のある」


「BP三〇〇〇じゃったかのう」


「じゃあ、BP四〇〇〇以上の狩場だね。いってみよー」


「えっ、ちょっとまずいんじゃ……」


「わたしの魔法みたでしょ? 大丈夫だよ」


「だってお金が……。マヤさんだって、頑張って貯めたバイトのお金でしょうに」


「ヤキソバ殿、ヤキソバ殿」


 カゲヤマさんが、耳うちしてくる。


「ここは、妹さんの希望を優先するんじゃ。苦戦するようなら、妹さんも大人しくなるじゃろ」


「妹は、そんな殊勝な人間じゃないですよ。」


「そうなんデスか?」


「ねえ、またわたしだけ、のけ者なのー? なに話してるのー?」


「わかりましたマヤさん。四〇〇〇以上にしましょう」


「大丈夫かのう」


「だいじょぶデスよ。お金なら、ある程度は魔源クリスタルでバックされますデス。ぜんぜんよゆーですよ。マヤさんが魔法つかっても」


「魔源クリスタル? なにそれ?」


「こういうもので、敵の経験値を吸収するんじゃ。吸収しきると光って、高額で売れるんじゃよ」


 カゲヤマさんは胸元から、クリスタルを取り出して妹にみせる。


「ふーん。これいくら?」


「これは光ると五万クリじゃのう」


「じゃあ、スクロールをガンガンつかっても大丈夫だね」


「五万ですよ? 元とれますかね。一人で複数つけても、たまるのがおそくなって意味ないんですよ。この魔源クリスタルは」


「みんなのクリスタルを、わたしにくれればいいよ」


「えっ」


「みんなの光った魔源クリスタルで、わたしのスクロール代をはらって。余ったお金を等分すれば解決だよ!」


「そんな! みんなだっておかねが必要なんですよ!」


「まあまあ、ヤキソバさん。初参加なんですし、とりあえずそれにしますデスよ」


「そうじゃのう。ここはマヤ殿の意見を優先するのがよかろう」


「そうですか……、みんながそう言うなら……、わかりました」


 みんないいのかよ……、ほんとうにこれで。

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