第39話

「おい! MPのケタがおかしいじゃねーか!」


「あ、本当なの」


 フェリリはうなりながら、巻物をチェックしている。


 俺は、フェリリの右横からのぞきこむ。


「あったナノ ばくだいなる魔力 常時最大MPプラス一万 だってさ」


「ばくだいですかー」


 声のする左横をちらりとみると、ま近にテッシの顔。


 うわっ。


 俺は、横からのぞきこむテッシちゃんに、おどろいて少しのけぞる。


「す、すいませんデス……」


「いや――、おどろいてごめん……」


「そろそろ、ダサねずみの巣につくのう」


 ここも、わりと久しぶりな気がする。


 あいもかわらず巨大なねずみが、うろうろと歩いている。


「ここで、マヤさんのレベルをアップさせるかのう」


「べつにそれでいいけど……」


 なんか、マヤさんの機嫌がちょっとわるいな……。


「わたしが敵の攻撃をうけ止めますから、マヤさんは魔法で攻撃してください」


「うん……、わかった」


 俺は、フェリリに小声できく。


「フェリリ、マヤさんのクラスなんだったっけ?」


「インセキマドウシってなってたよ」


「サンクス。変なクラスだな」


 パーティを組まずに、テッシちゃんが攻撃をうけ。


 妹が攻撃でたおす。


 このやり方なら、百%の経験値が妹に入るはずだ。


「わたし、かんつー魔法をつかうけど、テッシさんは、いちおーちゃんとよけてよね」


「わかってますデスよ」


 妹は紙のたばを取りだし、それを読みはじめた。


「あれなんですか?」


「あれはスクロールじゃのう、おぼえてないマジックでもつかえる。便利なアイテムじゃ」


「それはいいですね」


「つかい捨てなんじゃけどな」


 テッシちゃんは、ダサねずみに背中をむけつつ敵をとおさない。


 テッシをはさみ、マヤさんはむこう側でスクロールをよんでいる。


「――、燃えさからんことを! テッシさんどいて!」


 テッシは声を聞くなり地をけり、妹からみて左にすばやくのいた。


 マヤさんは、つづりになっている紙のたばから、一枚をやぶりとり。


 右手で、にぎりつぶした。


 紙は青白く燃え。


 かききえた。


「パイロフレイム!」


 マヤさんの右手から放出された炎は、地面を巻きこみ。


 敵にむかってジグザグななめに立てた半円にそうよう、円柱のプロミネンスをおこしながら、おそいかかり。


 ダサねずみを、焼きつくす。


「ぐぎゃあああああああ」


「なんだか、かわいそうデス――、地面の草が」


「テッシちゃんって、ダサねずみにきびしいよね……」


「そうですか? そう見えます?」


「まあ――、ね。俺は一番すきだけどね、ダサねずみ」


「変わってますデスね。ヤキソバさんって」


「そ、そう……?」


「パイロフレイム 

 BP一三〇〇〇で攻撃 レンジ四 かんつう スクロール時の詠唱時間、三攻防くらい


 ダサねずみに 七七一六二ダメージ なの」


「えっ、なんだそれ……」


「なにってスクロールだけど――、いっかい二万クリくらいかな?」


「えらく高いじゃないですか、なんでダサねずみに?」


「べつにお金を払うのはわたしだし――使うのはわたしの勝手だし。これMP五〇〇くらいしか使わないやつだし――」


「いやいや、そういう訳にはいかないですよ。マヤさ――」


「だって、つまんないんだもん」


「えっ」


「こんな雑魚たおしたって面白くないんだもん。しかも初めてのおつかいみたいだし。さらしものみたいで、みっともないよ。はやくわたしを、最新の狩り場につれていってよ!」


 俺たちは、こそこそと作戦会議をする。


「しかたないのう、ここはレベルの高いところにつれて行ったほうが、よさそうじゃのう」


「はじめてのパーティで機嫌をそこねるのは、よくないデスしね」


「そうですね……」


 なぜだろう――。


 わがままな妹をみて、俺はすこしだけうれしかった。

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