再会の妹編

第38話

 俺は声がでなかった。


 数秒のち、しぼり出すようにいった。


「あの――、周りの人がよんでるのをきいて、それで――」


「そうですか――、それでご注文は?」


 俺は、適当に選んだ注文をいった。


 注文をきくとマヤさんはふりかえり、俺から遠ざかっていった。


 その後ろすがたを、俺はどうすることもできなかった。


 俺たちは食事のあと、店をのぞめる、離れたところで作戦会議をする。


「なんでだよ文明――、じゃないマヤ!」


「おちつくナノ、ヤキソバだってこうなること分かってたはずだよね?」


「それはそうですけど……」


「とりあえず、パーティにさそうデス」


「ウェイトレスをいきなり冒険にさそうって、ちょーっと不自然じゃないですかね」


「それもそうじゃのう」


 どうしたもんか。


「わたしに考えがあるデス、とりあえず、お仕事が終わる時間まで待つですよ」


 店のそとでまってた、俺たちのもとにフェリリが帰ってくる。


 どうやら、終業じかんになったようだ。


 テッシちゃんは、かんじんの考えとやらを教えてはくれない。


 となりの、テッシちゃんの肩をゆすぶって起こす。


 テッシちゃんは、頭を大きくゆらす。


 テッシちゃんは予想より頭をふり、俺の歯にぶつかった。


 いてえ。


「はっ、すみませんです。いってくるです」


「なにをするのかのう」


「だいじょぶデス、ぜったい連れてきますから。ヤキソバさんはスタンバイしててください」


「わかった。まってるよ」


「どうするつもり、なんじゃろうか」


「わかりません」


 そしてかけていく。


店の裏口からテッシとマヤさんがでてきて、まっすぐこちらにむかってくる。


「すげー、テッシちゃんどうやったんだ?」


 妹が二メートルばかりの距離までくると、テッシちゃんはこっちにきて小声でいう。


「ね? きたですよ?」


「なんていったんですか?」


「あなたに興味ある男性がいて、冒険者のパーティいっしょに組んでほしいっていったデス」


「こ、こまるよ、そんなこというなんて……」


「パーティに入れちゃえば、こっちのもんデスよ。あとは煮るなり焼くなりです」


 妹は視線をななめ下にそらして、こっちをみない。


 どうしたもんか。


「あのー、マヤさん? 実は俺パーティメンバーをさがしていてですね――」


 俺は、妹の顔色をうかがいながらいう。


「それでマヤさんには、並々ならぬ才能をかんじるんですよ――」


 恋愛感情があって――、みたいな、ふんいきにはしたくない。マジで。


「それでマヤさんにも――」


「いーよ」


 えっ。


「ほんとうですか?」


「パーティに入ってもいいよ」


「ほんとうに、ほんとうですか?」


「うん」


 なんか、あっさり成功したな。


「やったのうヤキソバ殿」


「大成功ですね。かんぺきデス」


 二人はよろこぶ。


「で――、これからどうしようか」


「戦闘ですよ、当然デス。みんなでいっしょにたたかって、連帯感を強めるですよ」


「あのさー、わたしって『レベル一』なんだけど……」


「わかってますデスよ、そんなこと。さいしょはみんなルーキーですよ」


「じゃあ最初は、『ダサねずみ』からかのー」


 みんなは、目的地にむかって歩きはじめる。


 俺は前方を歩いてる、妹にむかって話しかける。


「マヤさん、ステータスをみてもいいですか? チェックしておきたいので」


「いーよ」


 フェリリに、こっそり耳うちする。


「フェリリ、いも――、じゃない。マヤさんのステータスみてくれ。セレクターの証拠をみつける」


「うたぐり深いよね、ヤキソバ」


「十中八九、妹にまちがいないとおもうが。一応な」


「マヤ LV一 HP二八〇 BP九〇 SP九〇 MP一〇一一〇

 うーん、とくに隠れたスキルはなさそうなのね、いまのところはだけど――」


「そっかー、ん? おい、ちょっとまて」

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