第37話

「冷やかしみたいに、なっちまったな」


「たくさん硬貨使ったから大丈夫じゃろう、許してくれるんじゃないかのう」


 みんなは、アクセサリーを見ている。


「わたしはこれ買うデス」


「はい、包みますね」


 フードワの女性は、商品を包んでいる。


「この仕事長いんデスか?」


「いえ、最近ですね。この仕事はじめたのも、フードワになったのも」


「フードワになった?」


 どういうことだ?


「ええ、クラスチェンジでなったんです。フードワに」


「そんなことできるんですか?」


「はい、結構おおいとおもいますよ、そういう人。

 クラスチェンジして、レベルを上げることによって、魔源で体が変質していって、種族を変えられるんです」


 ん?


 ということは?


 俺はテッシちゃんを、手まねきして呼んだ。


「なんデスか?」


「テッシちゃんって前世と髪色が違うんだけど、クラスチェンジで変えたの?」


 店員さんに、聞かれないように話す。


「いえ美容院ですよ。魔源を変質させて変えたんですよ。髪色くらいで、クラスチェンジなんてしませんよ。

 というか、レベルあげられなかったから、講義うけてたんデスし」


 そっか。


 そうだよな。


 そりゃそうだ。


「どうしたナノ?」


「俺ってフェリリに妹と一香ちゃんをさがすよう頼んだろ? そのときって外見を優先させたじゃないか」


「そうなのね」


「それって名前は転生するときに、変える可能性はあるけど、外見はすぐには変わらないと思ったからなんだよ」


「そうだったの?」


「ああ、そうなんだ」


「肌が一センチ以上透けてる人を、リストアップしたの無駄になったナノ」


 え?


 なにそれ……。


 そんな人、そんなにいんの? マジ?


「なんの話デスか?」


「い、いやなんでもないよ……、テッシちゃん」


 これは、いろいろ恥ずかしい。


「とにかく名前の方を優先してさがせば、妹さがしもぐっと近づくとおもうんだよ」


「そういうことデスか、善はいそげですね」


「早く帰って、ヤキソバ殿の妹さがし開始じゃのう。店員さんこれくださいなのじゃ」


 俺たちは、洞窟を出ることにする。


 店の外にでると、町の人に呼び止められた。


「お帰りですか? 倒せるなら、こっちの働き蟻地獄の通路から出ると早いですよ、またよろしく」


 俺は通路を走る。


 途中で、幽霊船に出くわす。


「ヤキソバは、レベルアップでBP二〇〇〇以上になったから、普通にはいれるナノ」


「マジかよ」


 俺は、幽霊船の障壁の中に入り、そっこうでたおした。


 通路をすすむと、俺がたおした働き蟻地獄の、結晶化された角をみつけた。


 ということは洞窟前かここは。


 俺たちは、そこから外に出ると町に帰った。


 宿にもどり、フェリリが巻物でしらべると、結構な数の人間がヒットした。


 俺たちは、近場から手あたり次第に、しらべることにした。


「正確に判断できそうなのは、ヤキソバさんだけデスからね」


 みんなで手わけしてさがすのではなく、俺が一人ひとり確認することになった。


 簡単にはみつからないだろう、そう思ってたが。


 そのときは、意外とはやくきた。


「妹だ」


 五件目のことだった。


 それは、一軒の喫茶店だった。


 そこに、一人のウェイトレスがいた。


 年齢もおそらく、妹と変わらない。


 どことなく、面影があった。


 金髪ウェーブのセミロングになっていて、その一部を青いリボンで縛っているが。


 わかる。


 こいつは妹だ。間違いない。


「ヤキソバさん……、どうします……?」


「そりゃ声かけるよ……」


 やっとか、長かった気がする。


 四ヵ月だけど、ずいぶん長かった気がする。


 声かけなきゃ、なんてかけようか。


 そうだ、妹が家にきたときは、すくなくとも今ほどは仲がよくなかった。


 そのうちに妹が、「お兄ちゃん」というようになってからは、距離がちぢまったんだ。


 でも俺は恥ずかしくて、妹なんて一度も言えなかった。


 ごくたまに呼ぶときには、名前で呼んでたんだ。


 俺はゆっくりと、妹に近づいていった。


 そして、声をかけた。


「――マヤ?」


 ウェイトレスはふりむくと言った。


「あの……、どうしてわたしの名前を知ってるんですか……?」

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