第36話

「ドワーフさん、いますですかねー」


「どうだろうね」


「地図に載ってないくらい長い間ふさがれてたんだから、死んじゃってても不思議じゃないと思うナノ」


「だいじょぶですよ、きっと元気にしてるですドワ」


「テッシちゃんまざる気まんまんだね……、ドワーフに」


 がけには急こうばいの階段があり、俺たちはおりていく。


「こういうところって、手すりがないから不安じゃのう……。わしはよく転ぶしのう」


「俺はカゲヤマさんより、ふらふらのテッシちゃんのが不安です」


「わたしは、ふらふら慣れしてるから、平気ですよー」


「テッシちゃん落ちそうになったら、わたしがタックルで戻すナノ」


「ドワーフは生きてると思うよ。あんなに大きな火がついてますからね」


 近づくと、十数メートルは高さがありそうな、太くて大きな煙突の上部には、巨大な炎が燃えさかっていた。


 住宅とおぼしき建物にちかづくと、中から人がでてきた。


 身長百三十センチほどの、褐色の女性だった。


「何かごようでしょうか?」


「ドワーフの町があるって、カンバンがあったので遊びにきたなの」


「そうなんですか、でもここはフードワの町ですよ」


「えっ、それってどういう……」


「ここはフードワっていう、ドワーフの親戚の種族がつくった町なんです」


「でも、ドワーフの町ってあったんじゃがのう……」


 カゲヤマさんは、ほほに指をあてて首をかしげる。


「それは、便乗しようとして作ったカンバンですね。むこうのが人気あるので」


「そういうのは、よくないとおもうナノ!」


「まあまあ、フェリリさん落ちついて」


「ちゃんと株分けされてますから、れっきとした親戚みたいなもんですよ」


「そうなんですか」


「本家にはおとりますが、装備などもつくってますよ。みていきますか?」


「ええのう……。ちょっとみていかんか?」


「いいですね」


 俺たちは、装備をみることにした。


 みんなは歩きだす。


「あの火はなんですか?」


「装備をつくるときに火を使うので、みんな共同でつかってるんです。それであそこの火を各所に配ってるんです。そういう機構がありまして」


「そんなことできるんですか、すごいですー」


「あのー……。装備つくっても売れるんですかね……。入り口ふさがってるのに」


「ああ、別の入り口があるんですよ。働きあり地獄っていうモンスターがいて、そのモンスターが掘った穴で移動して外部と交流してるんです。おばけが出るほうの洞窟の方は、今はつかってないですね。あなた方はそっちから来たんでしょう?」


 ふーんそうなのか。


 そんなこんないってるうちに、俺たちは武器ショップについた。


「よくかんがえると、わたしたちって装備かったばかりでしたね」


 並べられた装備をみくらべながら、テッシはかがむ。


「そうだよね、でもこういうのって、みてるだけでも楽しいですよ」


「これとかええのう……」


「刀はふってみないと、わからないナノ」


「これの試しぶりを、お願いなのじゃ」


「はいはーい」


「それにしても、ドワっていわないですね。残念ですです」


「そりゃそうでしょ」


 ぶんっぶんっ。


「ええのう、ええのう」


「俺も、ご一緒しても、よろしいですか?」


 がらっ。


 ぶんっ、ぶんっ。


「あぶなっ! なんでこっち側を向いて、ふってるんですか! 鏡みてふって下さいよ」


「入り口をみないと、落ち着かないのじゃ」


 ちゃりん。


「ほら、百クリ入れたから的がでますよ」


 ここの試しぶりは、硬貨で的がでる仕組みになっている。


 うぃーんうぃーん。


「うおおおお、なにか出てきたのじゃ」


「竹にござを、巻きつけたやつですね」


 ぶんっ、すかっ。ぶんっ、すかっ。


「あたらんのじゃ……」


「残念ながら、カゲヤマさんのこうげきは、俺のデクにはあたらない……」


「なんじゃ、レバーで操作できるんか」


 がちゃ、がちゃ、がちゃ、がちゃ、がちゃ、がちゃ。


「こやつ……、横に速いぞっ……」


「どうしたんですか? カゲヤマさん、俺の百クリが無駄になりますよ?」


「べつにかまわんのう……」


 ちゃりん、ちゃりん、ちゃりん。

 がしゃこん、がしゃこん。


「うおおおおおお、増えたのじゃ!」


「知らなかったようですね。俺のデクは増えるということを」


「はっ」


 ぼこっ。


「テッシ殿!」


「助太刀にまいったです!」


「ふん、俺のデクに勝てるとおもってるのか」


「むしろ、ヤキソバの勝利条件が気になるナノ」


 ちゃりん、ちゃりん、ちゃりん。


「まだ増えるのかのう……」


「カゲヤマさん、あぶないですです!」


 ずばっ。


「お待たせしました」


「ヤキソバ殿! じゃあこのデクはいったい誰があやつって――」


「わたしなの」


「フェリリ殿!」


「俺も参加しますよ、これからはね」


 ちゃりん、ちゃりん、ちゃりん、ちゃりん、ちゃりん、ちゃりん、ちゃりん、ちゃりん、ちゃりん、ちゃりん、ちゃりん、ちゃりん、ちゃりん、ちゃりん、ちゃりん、ちゃりん、ちゃりん、ちゃりん、ちゃりん、ちゃりん、ちゃりん、ちゃりん、ちゃりん、ちゃりん、ちゃりん、ちゃりん、ちゃりん、ちゃりん、ちゃりん、ちゃりん、ちゃりん、ちゃりん、ちゃりん、ちゃりん、ちゃりん、ちゃりん、ちゃりん、ちゃりん、ちゃりん、ちゃりん、ちゃりん、ちゃりん、ちゃりん、ちゃりん、ちゃりん、ちゃりん、ちゃりん、ちゃりん


「フェリリさん何やってんすか! それ俺のお金ですよ!」


「だいじょうぶなの、お札を両替するなの」


 ぐぃぃぃぃぃん。


 お札が両替機に吸い込まれる


 俺はフェリリに走りより、つかまえる。


「やめてください! お札は両替すると、全部つかっちゃうもんなんですよ!」


「両替しなくても、わたしは全部つかうから関係ないナノ」


「いったん落ちつこう。とりあえず落ちつこう。それがいい」


 俺はフェリリをなだめ。


 三人で、的をすべてたおした。


「やっと、全部たおせましたデスね……」


「つかれたのう……」


「お客さま……、楽しんでるところ申し訳ないのですが、商品の方はお決まりになりましたでしょうか……」


「あっ、武器は持ってるのでいいっす。防具とかアクセサリーありますか?」


「そうですか……」

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