路地裏の巫女編

第23話

 俺たちは、武器堂内の地図で指定されている。


 テッシちゃんの、クラスの装備がある武器店に来ていた。


 テッシちゃんは、自分の装備の選択で、もう何時間も悩んでいる。


 武器店の壁には、いろいろな棒が立てかけてある。


 燃えるように赤い棒。


 重そうな銀色の棒。


 紐の巻きついている棒。


 ながい棒。


 とうめいで液体の入ってる棒。


 どうみても、バットみたいな棒。


 テッシちゃんは、その中の一本を手にとると、俺にきいてくる。


「この棒どうデスか?」


「いいとおもうよ、角のところとか迫力あるしね」


 どれも棒じゃねーか!


 しかも変な棒ばっかだしよ。


 しかし、テッシちゃん予算とかどのくらいあるんだ?


「これにしますデス!」


 テッシちゃんは、店主のいるカウンターに行くと、小走りで戻ってきた。


 決めるまでは長いけど、決まると早いんだな。


「買ってきましたデス」


「強そうだね、結構するの?」


「ヤキソバ! そういうこと聞かないなの!」


「フェリリさん、いいんデスよ。三十万クリスタルです」


「さっ、三十万!?」


「ヤキソバ! 値段を大きめの声でいわないナノ!」


「す、すいません……」


 俺たち三人は、俺の分の装備を買うために、レアクラスの装備の買える区画に歩いていく。


 もうすっかり夜も近くなっていた。


 しかし、俺は装備の値段が、頭から離れなかった。


 マジで? 三十万?


 この世界は前の俺のいた世界と、そんなに物価の感覚が変わらないのに。


 三十万なんて大金を、ポンと出しちゃうのか?


 俺ともらったお金は同じはずだよな?


 テッシちゃん、収入とか結構あるのか?


 っていうか、ヒマすぎるみたいに、言ってなかったか?


 なんか怪しげな仕事をしてるとか、じゃないだろうな。


 えーっと、俺は最初の所持金が三百万クリスタル。


 宿屋代が、月に二万クリスタル。


 生活費が一日に十回飯くって、一食千クリスタルとする。


 一日一万、一ヶ月分の五日で五万の食費。


 魔話器の使用料、火を使うための魔源の使用料。


 それに食費、他にももろもろ入れて、月間十万。


 十万に家賃の二万を加えて、四ヶ月で約五十万クリスタル。


 雑貨は入れないとしても、結構使ったな。


 フェリリに五十万クリスタル預けたから、二百五十万から五十万ひいて。


 二百万クリスタルか。


 持ち家でも、あまり変わらないんだよな。


 今の宿屋が安いし。


 外食をなんとかしないと駄目かな。


 それと、やはり何とかして収入を得ないとな。


 冒険者って、どうやって収入を得ているんだ?


「何考えてるナノ?」


 フェリリが俺の目の前に来ていた。


 俺はすっとんきょうな声をあげて、のけぞった。


「ふっふっふ、わたしがヤキソバさんより強くなったから、内心あせってるデス」


 テッシちゃんは元から強いでしょ。


 この子ってLVが追いついた時も喜んでいたし、俺に対抗意識があるのかな。


「そんなに強いの買ったの?」


「知りたいデスか? 教えるともっと強いの買われるから秘密デス、秘匿情報デス」


 テッシちゃん、ショッピングで大分テンション上がってるな。


 買い物中毒とかにならなきゃいいけど。


 わりといるらしいからな、そういう人。


「こっちのが近いかな」


 俺は路地裏を進んでいく。


「どんどん人が減っていくナノよ」


「俺はこういう、路地裏にある抜け道を探すのが、好きなんだよ」


 まあ万が一、迷子になってもフェリリがいれば大丈夫だろう。


 俺はどんどん進んでいく。


 人がいなくなって――。


「やめるんじゃ、誰か助けておくれー」


 えっ。


 声のする方をみると少女だ。


 小柄な巫女服の少女が、男三人に手足を捕まれ運ばれている。


 人身売買かなにかの犯罪じゃねーの?


 やべえ。


「フェリリ、お前って衝撃吸収魔法が、かかってるよな?」


「大丈夫ナノ」


「フェリリの高度には制限がないから、空からあの男たちを追跡してくれ、モンスターのひく車に乗り込んだとしても、お前なら追跡できるはずだ。


 この町からは簡単には出られないだろうし。

 アジトがわかったら、冒険者協会に連絡しよう。

 あそこには何か事件がおこったら、かけつける人がいるはずだ」


「分かったナノ」


 フェリリの返事と同時に、声が聞こえてきた。


「こら! 少女をはなすデス!」


 えっ。


 テッシちゃんは、男たちに向かって棒を向け、話しかけている。


「大の男が女の子にむかって、なにをするつもりデスか」


 もしかして、このテッシちゃんのテンションって、ショッピングのせいじゃなくて、例の目が覚めてる時間帯のせいなのか……?


「まだ相手のステータスすら見てないのに、テッシちゃんは勇気あるナノね」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る